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NYPD RED 4
−NYPDレッド4− |
by James Paterson and Marshall Karp
ジェームズ・パターソンとマーシャル・カープの共著「NYPDレッド・シリーズ」も、早いもので本著が4作目となります。NYPD(ニューヨーク市警)内へVIPやセレブ専門の部署として設立された「レッド」は、地元およびニューヨークを訪れているVIPやセレブが事件と係わった場合のみ出動するエリート・チームです。実際のNYPDにそういう部署は存在しませんが、物語の設定としては申し分ありません。
もともとパターソンといえば「どんでん返しの王者」みたいな作家であり、加えて(共著を含む)どの著書も他の作家なら何冊分かのプロットが凝縮されています。また、ザック・ジョーダン刑事と彼の上司でありレッドを率いるカイリー・マクドナルドは、かつて愛人関係という設定も、本シリーズへロマンチックな要素と同時に微妙な緊張感を与えており、シリーズ4作目の本著でますます物語のテンポが速くなってきました。「プロローグ」は新作映画のワールド・プレミアで幕を開け、数百万ドル(数億円)の宝石をまとった主演のA級(リスト)女優エレナ・トラヴァースが到着寸前というところから何やらエキサイティングです。
と、いきなり銃声が轟(とどろ)き、レッド・カーペットの周辺はパニック状態となり、そこへ白いキャデラック・リムジンが雪崩れ込みます。リムジンの中ではトラヴァースの白いドレスの胸元が真っ赤に染まり、彼女の首に巻かれているはずの宝石は消えているのです。事件の性格上、さっそくジョーダンとマクドナルドが出動し、いざ本編へ入るや、物語は意外な方向に急展開してゆきます。
そして、トラヴァース殺人事件の捜査と平行して、もう1つ別の事件がレッドへ割り当てられ、その内容はニューヨーク市内の多くの病院で起こっている一連の強盗事件の捜査というものでした。あちこちの病院から犯人が盗んだのはハイエンドの医療器具ばかりで、手際も良く、非常に特徴のある事件です。したがって、まずレッドがやるべきことは犯人と動機を絞り込む・・・・・・すると、やはり意外な結果へ辿(たど)り着くのでした。
いっぽう、私生活面でも混乱が続き、ジョーダンはガールフレンドとの関係を進展させようと思いつつ、仕事に追われてなかなか彼女との時間が作れない上、仕事場ではいつもマクドナルドと顔を合わせています。そのマクドナルドもジョーダンと別れた後、結婚していますが、彼女の良人は麻薬(ドラッグ)問題を抱えており、ストレスが結婚生活を崩壊させる寸前なのです。つまり、状況としてジョーダンとマクドナルドの2人がよりを戻しても決しておかしくありません。事件だけではなく、そんな2人の関係が物語最後の土壇場である局面を迎えます。その局面とはどのようなものなのか?
このように事件捜査の面でも私生活の面でもどんでん返しだらけの「NYPDレッド4」、基本パターンは最近の他のパターソン・ノベルと似通っていますが、それでも読者をぐいぐいと引っ張り組む筆力は、さすが世界で一番売れているベストセラー作家です。パターソン・ファンならこのシリーズ4作目を、ぜひお見逃しなく!
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(2016年3月)
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