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(2019年9月)          


知ってはいけない
隠された日本支配の構造

by Koji Yabe


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 以前、このコラムでご紹介した矢部宏治著「日本はなぜ、『戦争ができる国』になったのか(2016年)」や「日本はなぜ、『基地』と『原発』を止められないのか(2014年)」の延長として、彼が2017年に出した講談社現代新書「知ってはいけない 隠された日本支配の構造」はベストセラーとなりました。今月末に、それを伊佐義勇が完全漫画化した単行本の出版も決まっています。

 そんなタイミングもあって、今月は元の新書を取り上げてみました。冒頭で触れた2著を読まれた方ならご存知のとおり、国民はもちろん、首相や官僚でさえよくわかっていない「ウラの掟」が存在し、社会全体の構造を歪めていることをわかりやすくまとめたのが本著なのです。

 やっかいなのは、そうした「ウラの掟」のほとんどが、アメリカ政府そのものと日本とのあいだではなく、米軍と日本のエリート官僚とのあいだで直接結ばれた占領期以来の軍事上の密約を起源としています。官僚と在日米軍が組織する日米合同委員会ですべては決定され、沖縄の基地問題、北方領土返還の問題など、すべてがそこへ集約されるのです。矢部は最高裁、検察、外務省の「裏マニュアル」を参照しながら、日米合同委員会の実態に迫り、日本の権力構造を徹底解明してゆきます。

 たとえば、北方領土が絶対返還されないのは、なぜ日米の密約のせいなのでしょうか? それは、仮に安倍首相が返還された北方領土へ米軍基地は作らないと約束しようが関係なく、アメリカは密約で自由に作れるのです。したがって、北方領土へ米軍基地ができるのを警戒するロシアは、密約がある限り返還するわけはありません。

 そうした問題が、本著では9つの章から解き明かされてゆきます。一人でも多くの読者が興味を持つよう、矢部は漫画家ぼうごなつこへ各章のまとめを扉ページの裏に四コマ漫画として掲載すべく作画を依頼し、それらの四コマ漫画が以下の9パターンです(各拡大画像はそれぞれの縮小画像をクリックすると別のウィンドウへ表示されます)。9画像をざっとご覧いただくと、本著の大まかな内容が手っ取り早くおわかりいただけることでしょう。

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 いかがですか? なぜ、本著がベストセラーになったかもおわかりいただけたと思います。これら各章のまとめを四コマ漫画で掲載する矢部のアイデアは、それぞれがいわば各章の予告編として機能するため、彼の意図どおり、より幅広い読者層をつかめたのでは? また、伊佐義勇が完全漫画化した単行本まで企画されたのも、きっかけは四コマ漫画のアイデアのような気がします。ただ、私個人としては漫画化版へまったく興味を惹かれないのですが・・・・・・


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