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(2019年11月)          


The Institute
ザ・インスティテュートー

by Stephen King


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 スティーヴン・キングの新作「ザ・インスティテュート」は、ティム・ジェイミーソンという男がタンパからニューヨーク行のデルタ航空便を待っているところで幕を開けます。急遽、満席のデルタ航空便へ連邦捜査官が乗り込むことになって係員は席を譲る者を募集し、その交換条件として運賃の払い戻しや、ホテルと翌朝の便を無料で提供、プラス2千ドルのキャッシュでジェイミーソンが名乗りを上げます。

 こうしてタンパの安ホテルに泊まったジェイミーソンは、翌朝、銀行で2千ドルの小切手を現金化するや、そのままヒッチハイクでジョージアへ向かうのです。そこで2週間の仕事にありつき、デルタ航空のニューヨーク便を諦めます。続いてジョージアからサウス・カロライナへの次の旅が始まり・・・・・・と軽快なテンポで展開する物語の背景にある、アメリカの労働者階級の生活を描かせると、キングの右に出る者は、そういないでしょう。

 キングはまた、子供の無実について書くのが得意です。加えて彼は、主題が純粋な悪であるとき本領を発揮します。本著はそれら2つの要素が凝縮されており、ジェイミーソンの放浪から展開した物語は、深夜に警官が一軒一軒見回りをするような小さな町へ辿り着き、そこでいよいよMIT(マサチューセッツ工科大学)を目指す12歳の少年ルークの登場です。

 ルークは家族を殺され、夜中にメイン州の研究所へ連れ去られます。彼が自分の部屋とよく似た場所で目を覚ますと、他の子供たちもいて、廊下にいる痩せた女の子は煙草を吸っているようです。彼女はルークへ、彼らは子供たちに「物事を行い」、光が点滅する注射を打つけれど、それは前半なのだと告げます。そして彼が後半を望まないとも・・・・・・研究所とは、けっきょく子供たちが入ったら出てこない「ローチ・モーテル(アメリカ版ごきぶりホイホイ)」のようなところでした。

 ここでは、彼らが「より高い利益のため」であると自ら言う、恐ろしく凶悪な歴史を通じた人間性の研究を行っています。詳しい内容はじっさいに読んでいただくとして、本著が数ある「キング・ノベル」の中でもベストの1冊であることは確かです。500ページ以上の物語を通じて張り詰めた緊迫感が、最後まで読者を引きずって離しません。

 一部の読者へは、忠告の言葉や政治に触れた部分が押しつけがましく感じられるとしても、そういった部分を含めて本著はよく書かれたフィクションだと思います。これまで60冊以上の著書があり、それらはすべて世界的なベストセラーとなっているばかりでなく、多くの「キング・ノベル」が映画化され、中でも「ダークタワー・シリーズ」の映画化版はホラー映画として史上最高の収益を記録しました。本著の映画化が今から楽しみです。


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(2019年11月)

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