マクダネルダグラス
F-18 ホーネット



F-18 ホーネットが米海軍の大量発注を獲得するまでには長い道のりがあった。原型は米空軍のLWF計画(F-16参照)へ応じて製作され、1974年6月に初飛行を遂げたノースロップYF-17である。YF-17は、まず米空軍の次期戦闘機選定で敗れ、次いでNATO四空軍の次期戦闘機選定でも再びF-16に敗れてしまう。

第三のチャンスが米海軍現用A-7 コルセア攻撃機の後継機選定であり、1975年5月米海軍が新戦闘攻撃機F/A-18の開発を発表するや、これに対応してノースロップ社はYF-17を原型とした艦上戦闘機を提案するのだ。この選定で強力なライバルとなったのが、またしてもジェネラルダイナミックスF-16の艦上機型ながら、米海軍はYF-17の発展型をF/A-18に選定、公表する。

YF-17の決定へ大きく作用したのが、その双発エンジン配置(F-16は単発)で、もっぱら洋上を飛ぶ艦上機にとって1基がエンジン・トラブルを起こしても、残る1基で母艦なり陸上基地までたどり着けるという能力は大きい。米海軍が現役のパイロットの妻君へ、ご主人の乗る機は単発と双発のどちらがいいかアンケートをとったところ、双発は圧倒的多数の指示を獲たそうだ。

ただ、F/A-18のメーカー選定寸前に、ノースロップYF-17が選定された場合の主契約者はマドダネルダグラス社へ移り、生みの親であるノースロップ社は生産分担40パーセントの下請け会社となった。もっとも、艦上機生産の経験がゼロに等しいノースロップ社へは、この決定が有利に働いたことは間違いない。

艦上機へは、激しい着艦のショックに耐える強固な降着装置、アレスティング・フック、対塩害処理、米海軍納入後のサービスなどが不可欠で、その辺りの経験はマドダネルダグラス社のほうがずっと豊富だった。

米空軍LWF計画でF-16と一騎打ちをしただけのことはあって、F-18ホーネットも独自の空力設計が目を引く。胴体から機首へ伸びるストレークはF-16と一味違った効果を持ち、ストレーク自身も大きい。ストレークが超音速域で衝撃揚力を発生させる点ではF-16と変わらないが、F-18の場合は胴体とストレークが接する部分へ隙間(スロット)を設けてある。

この隙間(スロット)は低速域で胴体にはりつく有害な境界層をはがし、主翼上面へ導き失速を防ぐ。おかげで迎え角60度まで失速に入らないという驚くべき報告があるのも、YF-17の開発段階で徹底的な風洞実験を重ねた成果であろう。2枚の垂直尾翼はF-14F-15同様、大迎角時の良好な運動性を確保するためで、さらに外側へ大きく傾け胴体の陰に入らず、しかもストレークからの後流が当たる仕組みだ。

機首のドップラービーム・レーダー、APG-65は、洋上の小目標が探知可能なルックダウン能力を持つ。また、HPD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)の他、計器盤上の3個のCRT(ブラウン管)がパイロットへ必要な情報を提供する。

兵装でも、さすが原型機が米空軍LWF計画でF-16と競っただけのことはあって、主翼端へサイドワインダー空対空ミサイルの発射レールを持ち、胴体下には半埋込み式でスパロー空対空ミサイルを搭載する。これらミサイル専用ステーション4ケ所(一部は赤外センサーポッドも搭載可能)以外の胴体下1ケ所、主翼下4ケ所のステーションへは最大6トンの爆弾が吊り下げられる他、機首風防直前に西側ベストセラーの20mm機関砲M61を固定装備するという重装備だ。

双発のエンジンはF404ターボファンで、アフターバーナーが装備されているのはいうまでもない。



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