イチ抜けた!
ギャラの額と同じくらいのエゴが衝突するハリウッドでは、大物俳優が企画から抜けてしまうハプニングも多く、プロデューサーの悩みの種となっています。最近の話題のケースを覗いてみましょう。
ジョン・トラボルタ
("ダブル")
未成年と性交渉を持った結果、ヨーロッパで国外逃避生活を続けるローマン・ポランスキー監督と脚本をめぐり大モメの末、数週間のリハーサルの後、ジョン・トラボルタは4才の息子ジェットの入院を理由にパリを去ってしまいました。'80年代にも、(母親と死別したショックから立ち直れないという理由があったものの)“アメリカン・ジゴロ”や“愛と青春の旅立ち”を蹴って後悔した彼ですが、破格のギャラ1,700万ドルはどうなることやら? 製作スタジオのコロンビア側では、早くもスティーブ・マーチンを代役に起用しました。
キアヌ・リーブス
("スピード2")
1、100万ドルのギャラを蹴り、来年の夏の目玉企画を降りたキアヌ。一時は、自分が参加しているバンド、“ドッグスター”のツアーが原因と噂されたりもしましたが、じつは同額のギャラを提示されたオリジナルからの共演者サンドラ・ブロックの出演場面が多くなってしまい、主役を分け合うことへの脅威や、最近撮り終えたアクション作品“チェイン・リアクション”で、かなり体を消耗してしまったのが本当の理由のようです。
メグ・ライアン
("イージー・ウーメン")
脚本での彼女の役柄が、どちらかというと地味な女性・・・・・・はつらつとした役作りを望んでいたメグが「ドラマ的要素のあるコメディー」志向だったのに対し、監督のドン・ルースは「コメディー・タッチのドラマ」を希望し、感性の違いが原因となって破談。
エマ・トンプソン
("モンタナの風に抱かれて")
ロバート・レッドフォード主演の企画がスケジュールの都合で滞ると、正式に契約していなかったエマは待ちくたびれて降板しました。早々とイギリスに帰国し、今年いっぱいは休み、来年から新企画へ参加する予定です。
ロバート・ロドリゲス
("怪傑ゾロ")
超低予算アクション“エル・マリアッチ”で注目を集め、“フォールームス"、"フロム・ダスク・ティル・ドーン"、"デスペラード”の独特な手法で、ホットな若手監督として人気のある彼。トライスター製作の大型アクション企画から、4、500万ドルの予算は莫大過ぎると降りてしまいました。さすが、タランティーノ軍団の一人で、スタジオの言うなりにはなりたくないのでしょう。
クルーズ見物
サンタモニカの海岸沿いにあるシェラトン・ミラマー・ホテルへ昼食に立ち寄ったら、どういうわけか200人以上の観光客らしき人だかり、覗(のぞ)いてみればトム・クルーズ主演“エージェント”の撮影の真っ最中でした。しばらく眺めるうち、トムが例の「1000ワット・スマイル」を満面にたたえてトレーラーから登場し、近づいてくる彼の気さくな態度で、もうギャラリーは大興奮の体です。オクラホマからバケーションで来たというオジサンは、ヨダレを垂らさんばかりのワイフを見ながら、皮肉タップリに「俺も2、000万ドルのギャラを貰っていたら笑いが止まらないさ!」などとこぼしてました。ちなみに、クルーズは2cmはあると思われる靴底へ、さらに約3cmヒールの靴をはいており、どこの国でも意外と小柄なのが売れっ子俳優ながら、当人たち(172センチメートルのクルーズや173センチメートルのメル・ギブソン)は、人知れず苦労しているのかも・・・・・・?
ノンストップ・シュワルツェネッガー
現在上映中の“イレイザー”が好調のアーノルド・シュワルツェネッガーは、年内いっぱい撮影の予定が詰まっているようです。いま撮っている“ジングル・オール・ザ・ウェイ”のプロデューサー、ウォーレン・ザイドは、たまたまシュワルツェネッガーやエディー・マーフィー、メル・ギブソンなど大物スターの代理エージェントICM(International Creative Management)を通じて知り合いという関係上、セットへ見学に行ったところ、なかなか面白くなりそうな雰囲気でした。今月中旬、この撮影が終わった後は、9月から新作“バットマンとロビン”で悪役ミスター・フリーズ(冷凍男)を演じ、続いて今年の夏にクランクインが予定されていた戦争ドラマ“ウィズ・ウィングス・アズ・イーグルズ”でシリアスな役柄へ挑戦します。また、今月の初めには水着メーカー“スピードー”のスポークスマンとして、全米から選ばれた20人のチビッコ選手を引き連れ、開催中のアトランタ・オリンピックへも顔を出したり、下旬になると撮影の合間をぬって“イレイザー”のキャンペーンで訪日と多忙です。“ジングル・・・”は名前のとおりクリスマスがテーマのコメディーですが、盗品売買を企てる悪徳サンタ20人を相手に顎髭を引っ張って10mくらい吹っ飛ばすアクション・シーンなど、今までのシュワルツェネッガー主演コメディーとはひと味違う作品に仕上がっています。
いつもながら、お先に失礼?
−'97年お盆映画−
まだ今年の夏休みが始まったばかりですが、来年のお盆映画はヒット作品の続編ラッシュで、今から大いに期待できそうです。
“バットマンとロビン”
世界中で10億ドルを稼ぎ出したシリーズ第4弾。新バットマン役のジョージ・クルーニーと前作に引き続きロビン役を演じるクリス・オダネルに加え、ワルの“ミスター・フリーズ”にアーノルド・シュワルツェネッガー、バットガールにアリシア・シルバーストーン("クルーレス")、そしてポイズン・アイビー役にユマ・サーマン("パルプ・フィクション")と、豪華キャストで前作から続投のジョエル・シューマーカー監督も腕が鳴っていることでしょう。
“ロストワールド”
遂に乗り物アトラクションにまでなったジュラッシック・パークの続編。マイケル・クライトンのベストセラー小説を前作の脚本を担当したデビッド・コエップが150万ドルで脚本化し、監督はもちろんスティーブン・スピルバーグ。ジュリアン・ムーアとジェフ・ゴールドブルーム(前作と同じ科学者役)が、人造恐竜を狩猟目的に使用しようとする企業マンと対決するストーリー。前作よりパワーアップしたCG効果と、スピルバーグ監督の手腕が待ち遠しい作品です。
“エイリアン/復活”
シリーズ第4弾。予算70万ドルの大型SF映画。おなじみの女性版ランボー、リプリー役のシゴニー・ウィーバーが、今度はサイボーグ役のウィノーナ・ライダーと協力してエイリアンと対決。大きく転けた第3作の汚名を挽回する意味でも興味ある作品です。
“スピード2”
公開中の“ツイスター”の成功で勢いに乗るヤン・デ・ボン監督と、第1作目で一躍スターになったサンドラ・ブロック(オリジナルで50万ドルだったギャラが、今回はなんと1、100万ドル!)が続投する一方で、主演のキアヌ・リーブスは降板。“フラットライナーズ”や“ジェロニモ”で主演したジェイソン・パトリックが代役に決定しましたが、“レッド・オクトーバーを追え”でジャック・ライアン役を降りたアレック・ボルドウィンの代役ハリソン・フォードが、次作“パトリオット・ゲーム”を大ヒットさせた例もあり、損をするのはキアヌというのがもっぱらの噂です。ちなみに、次作は豪華クルーズ船が舞台となっています。
“スターシップ・トルーパーズ”
ヒット映画シリーズ、"スタートレック"のコピー版SFアクション。“ショーガールズ”で散々な批評を浴びたポール・ベーホーベン監督("ロボコップ")が再起をはかるディズニーとトライスターの共同製作作品。地球を襲った宇宙からの虫の群と戦う部隊の物語です。
“フェイス・オフ”
"ブロークン・アロー"で大ヒットを飛ばしたジョン・トラボルタと香港の奇才ジョン・ウー監督がまたまたコンビを組んだアクション映画。アカデミー賞とりたてのニコラス・ケイジが顔を自由自在に変えることのできる犯罪者に扮して、彼を追う警官役のトラボルタと対決します。英語で「対決」を意味する“Face Off”へ、文字どおり「顔を取る」という意味を引っかけた題名の超大型映画。ギャラ2,000万ドルのトラボルタと600万ドルのケイジ、いがみ合いの“フェイス・オフ”にならなければいいのですが・・・・・・?
恐怖の“ID4”
前回「お先に失礼!」で取り上げた“インディペンデンス・デイ”は、独立記念日(インディペンデンス・デイ)と7月4日を引っかけた“ID4”というキャッチフレーズで大ヒット中です。そのプレミアがウェストウッドのブルイン劇場で行われた時のエピソード・・・・・・宇宙人が地球を侵略し、決断を迫られるアメリカ大統領を演じる主演のビル・プルマン("あなたが寝ている間に・・・")が8才、6才、3才になる自分の子供達へは見せたくない映画と言って連れて来なかったのに対し、海兵隊の戦闘機パイロット扮するウィル・スミス("バッド・ボーイズ")は3才の息子トレイ同伴で現われ、映画試写後にUCLAのキャンパスで催されたパーティーへも出席していました。プレミアでの観客の反応は、映画半ばと最終シーンの爆発的な拍手に象徴されるごとく、われわれ地球人の一致団結する姿に大感動といったところ!
(1996年8月1日)
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