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(1997年8月16日)          





ビーバーちゃんは人気者

“ビーバーちゃん”といえば、'60年代のヒットTV番組として世界中で親しまれています。その主人公ビーバーとお兄さんのウォーリーの純粋無垢な青春やアットホームの理想像ともいえそうなクリーバー家は、いわば古き良きアメリカの象徴であり、未だに再放送などで人気が絶えません。往年の“スパイ大作戦”を映画化した“ミッション・インポッシブル”のヒットは記憶に新しく、現在製作中の“アイ・スパイ”といったレトロ・アクション作や、いまいちヒットしなかったコメディー“ブレディー・バンチ”など、往年の人気TV番組の映画化がハリウッドの流行(トレンド)です。中でも、大物スターを避け、演技力中心のキャスティングなどが注目された“ビーバーちゃん”は、来週(8月23日)の封切りを控え、期待が集まっています。「アメリカの模範パパ」ウォード・クリーバー役は“テルマ&ルイーズ”での利己主義亭主や“クイズ・ショー”でのクールな司会者が好評だったクリス・マクドナルド(写真下)、また「優しいママ」ジューン役は“クリフハンガー”のジェニーン・ターナー(写真上)が起用され、時代を超えて間もなく蘇(よみがえ)るあの白黒TV時代の懐かしい感触・・・・・・とはいえ、'90年代のモダン・ライフへ合わせてインターネットやケーブルTVなども登場します。また、現代の親子問題やTVで話題の社会問題などが物語のポイントになっているそうです。'60年代とは大きく違う“家族の絆”がテーマなだけ、それをどう描きだすか? あるいは家族の価値観がより重要視されるアメリカ中西部や南部はもとより、家族離れの激しい都市部でどこまで観客のハートをつかめるか? ここらがヒットの鍵といえるでしょう。





事実は脚本より奇なり!


“エグゼクティブ・デシジョン”
の撮影の合間にカメラへポー
ズをとるカート・ラッセル(左)
とゲーリー・デポア(右)
現在ハリウッドでは、ちょっとした映画の筋書よりもよほどミステリアスな事件が話題を集めています。その摩訶不思議な事件の主人公は有名な脚本家ゲーリー・デボア、名前を知らない人もアーノルド・シュワルツェネッガー主演“ゴリラ”やジャン・クロード・バンダム主演“タイムコップ"、"サドゥン・デス”をはじめ、ビリー・クリスタル主演“シカゴ・コネクション/夢みて走れ”から今年の“レリック”まで、アクション、スリラーで幅広く脚本を書いている人といえば、なんとなくイメージが浮かぶでしょう。事件の発端は6月27日、デボアがニューメキシコ州サンタフェにある親友の女優マーシャ・メイソン("グッドバイ・ガール")宅を出たところへ溯(さかのぼ)ります。物書きなら誰でも体験する「ライターズ・ブロック(行き詰まりの状態)」に陥り、気分転換のためしばらくサンタフェで滞在した後のことです。いつもどおりジーンズとカウボーイ・ブーツの軽装で愛車フォード・エクスプローラへマーシャーの娘を乗せた彼は、アルバカーキー空港で彼女を降ろすと帰途に就きました。カリフォルニア州サンタバーバラの自宅へ向かう約1,400キロの道中、ラスベガスとロサンゼルスの中間にあるバーストウという街から自宅の妻へ電話を入れ、翌日タイソン戦のTV中継が始まるまでには帰れることを告げます。ところが、彼の足取りはこの電話とそこでガソリンを入れた時のクレジットカードが最後の痕跡となり、プッツリ音信は途絶えたまま、消息を断ってしまうのです。いつも護身用の45口径コルト・リボルバーを車のグローブ・ボックスへ隠し、その昔、歌聖ナット・キング・コールの未亡人マリアと結婚したり、自作“殺しの季節”に主演したカート・ラッセル("エグゼクティブ・デシジョン")の元ガールフレンドと付き合って結構浮き名を流すハリウッド人である一方、トミー・リー・ジョーンズ("メン・イン・ブラック")のベストマン(結婚式の仲人役)を務めたり、人望の厚い側面も窺(うかが)えます。彼の失踪が不思議なもう1つの理由は、最近亡くなったロバート・ミッチャム主演作で往年のヒットをリメイクした“ビッグ・スティール”が、彼の監督第一作となる予定だったことです。マーシャの家でもこの脚本(ほん)を書き続け、意気揚々とサンタフェを発つデボアは、自ら蒸発する動機がありません。それでは、いったい彼の身に何が起こったのでしょうか? サスペンスを得意とする脚本家の失踪事件なだけ憶測は憶測を呼び、大好きなテキーラ片手に辺鄙(へんぴ)なモーテルへ籠もって脚本を仕上げているだとか、サンタフェ近郊の町ローズウェルで行われるUFO目撃50周年記念と何らかの係わりがあるだとか、当初はハリウッドで様々な噂が飛び交いました。映画(フィクション)よりも謎めいたサスペンスとなりつつあるこの事件、これまで数多く迷宮入り事件の解決へ貢献してきたTV番組“アメリカの重要指名手配犯”では特別番組が組まれ、妻や友人は10万ドルの賞金をかけたにも拘(かかわ)らず、愛車ともども消え去ったまま、いっさい手掛かりは見つかっていません。最近、業を煮やした警察が殺人事件の解決で実績のある超能力者へ意見を求めたところ、「彼は記憶を喪失しており、自分が誰か判らず、片田舎の町でホームレス暮らしをしている」そうな・・・・・・「事実は脚本より奇なり」を地で行くこの事件の真相がどうあれ、とにかく彼の無事を祈りたいものですね!





現代版ドクトル・ジバゴ

新星フェニックス・ピクチャーズが企画中の戦争映画は今のところ無題ですが、どうやらケビン・コスナー主演の線で落ち着きそうな気配です。1936年から1948年の激動する上海を舞台に、ケビン扮するアメリカ軍海兵隊員と中国人女性との恋物語を描くこの作品は、当時のエキゾチックな国際都市上海で暮らすフランス人、ドイツ人、アメリカ人、そして彼らの思惑に振り回される中国人社会が背景となって展開するエピック・ドラマ。'30年代のベルリン同様、世界流通上の軍事的、商業的な1拠点として栄えた上海も、第二次世界大戦の勃発と同時、あらゆる面で戦争の犠牲者となっていきます。戦争の渦中で芽生えた恋を、悲惨な史実と織り交ぜながら描き、やはり戦下の愛を扱った名作“ドクトル・ジバゴ”と“カサブランカ”を掛け合わせたような映画に仕立てあげる意向のようです。1941年上海生まれという、フェニックス社長で元トライスターのボス、マイク・メダボイ氏は、当時ナチスの人種浄化政策から逃れて上海へ移り住んだ彼の家族を含む、ユダヤ人18,000人の想い出もストーリーに反映させたいと言っています。来年中頃のクランクインを目指し、いま第2稿があがるのを待つこの期待作、脚本の出来次第で大物監督の獲得へ乗り出すとか。かの“ラスト・エンペラー”でも詳細に描かれた当時の社交都市上海といえば、東西文化の見事な調和とその華麗な表情の陰で暗躍する戦争商人やアヘン窟など、映画の舞台としては申し分ありません。もっとも、マドンナ主演の愚作“上海サプライズ”の前例もあるだけ、ケビンの魅力を活かした感動作が完成することを祈ります。なお、ケビンといえば先日の7月17日、“インターネット史上初・・・・・・”というふれ込みの“ウェブ・キャスト”で注目されながら、結果はあまり芳(かんば)しくありませんでした。彼が監督主演する新作“ポストマン”のロケ地オレゴンから、荒廃した未来都市のセットで銃撃戦を撮る風景を20分間オンラインで見せたところ、小さすぎる画面とぼやけたイメージが悪評を招いたようです。僕の場合は職業柄もあるのか、その新しい試みが興味深く、けっこう興奮させてもらい、加えて気合いの入ったケビンの監督ぶりや、撮影というものは実際どれだけスローテンポで進行するものなのか、世界中の映画ファンが生で見られる素晴らしさを改めて認識しました。12月の封切りを予定するこのSF大作、ケビンもオンラインで言ったごとく、撮影風景よりはるかにエキサイティングな仕上がりを期待しようではありませんか! なお、ウェブ・キャストへ興味がある方は、VXtremeというソフトをダウンロードすればご覧いただけます!





聖林(ハリウッド)に死す・・・・・・

どことなく翳(かげ)りをおびたハンサムな横顔が印象的な故リバー・フェニックス("スタンド・バイ・ミー"、写真)、俳優ジョニー・デップ("ドニー・ブラスコ")の店としても知られるサンセット大通り(ストリップ)のトレンディーなナイトクラブ“バイパールーム”入口で、ドラッグ中毒のため亡くなったのは1993年のことでした。伝記作家のベテラン、ジョン・グラットが書いた“ロスト・イン・ハリウッド/リバー・フェニックスの激しく燃え尽きた生涯”を読めば、死後何年かを経て、往年のジェームス・ディーンのように、今なおカルト的なファンから支持される彼の生き様を窺(うかが)えます。ヒッピーの両親と過ごした奇妙な子供時代や、類(たぐ)い希な才能に恵まれながらドラッグへ犯されてゆく孤独な青年像をくっきり描きだした本著は、CATV局の大手、USAケーブルがTV映画化の準備を進めているところです。キャスティングは主演の最有力候補マッカリー・カルキン("ホーム・アローン")が「しばらく仕事をしたくない」という理由で辞退した結果、現在は振り出しに戻っています。また、選択基準も知名度の高さよりリバーのカリスマ性を持つ新人発掘へと方向転換した模様です。“ロスト・・・”執筆当初、リサーチをすればするほどリバーが哀れになったというグラット氏は、フェニックス家から情報を得ることで真実が清浄化されるのを恐れ、単身リバーの生き様を探求してゆきます。本の内容を反映した映画化は、けっこう生々しい若手スターの暴走ぶりが描写されるのかもしれません。ちなみに、若くして非業の死を遂げるリバーの後、グラッド氏の選ぶのは人気アイリッシュ・バンド、チーフテンの伝記物と、一転してアップ・リフティング(気分良くさせるよう)なテーマです。アイルランドの片田舎から世界のトップ・バンドにのし上がってゆく「若者の勝利」を描いた力作は、リバーの「冥(くら)い生涯」とオーバーラップしながらも、きっと現代の若者へ勇気を与えてくれるにちがいありません。





おなじみ新企画情報

現在ハリウッドで話題になっているクランクイン間近の企画を探ってみました。


“イン・ドリームズ”(9月1日ニューイングランド地方でクランクイン予定)

新生スタジオ、ドリームワークス製作、ニール・ジョーダン("クライング・ゲーム")監督のスリラーで、主演は最近ウォーレン・ビューティーとの間に3人目の子供をもうけて話題のアネット・ベニング("めぐり逢い")。彼女が演じるのは静閑なニューイングランド地方で暮らしながら、子供ばかり狙う連続殺人犯の悪夢に悩まされる女性です。自分の夢は犯人の殺意へつながっていると気づいた瞬間、恐怖が彼女を支配し、挙げ句の果ては自分の娘を誘拐されてしまいます。警察やマスコミの猜疑心と戦いながら、自分の潜在能力だけを頼って犯人を追いつめてゆく、手に汗握るサスペンス。確かな演技力で支えられたセクシーな魅力を発揮し、迫真のパフォーマンスを見せてくれるでしょう。

“デュエット”(9月15日ロサンゼルスでクランクイン予定)

カラオケの世界が舞台ということや、ブラッド・ピットとグウィネス・パルトローのパワー・カップル共演で話題を呼んだこの企画、ピットとパルトローの突然の婚約解消で暗礁に乗り上げた感もあり、6月16日の「最新情報」をご覧になったかたなら事情はおわかりだと思います。その後もいろいろあったようですが、結局ブラッド抜きでの製作という線で落着きました。監督を務めるグウィネスの父ブルースは、破局を迎えた娘を想う親心から、ブラッドと製作スタジオのコロンビアを外すよう仕向け、顔ぶれの違うパッケージで別のスタジオへ売り込んだわけです。元のロマンスはカラオケ・バーを舞台に喜怒哀楽がテーマのロード・ムービーへと趣向を変え、グウィネスの相手役には人気TV番組“フレージャー”のデビッド・ハイド・ピアース(写真右)を起用、そこへ重厚な演技で人気のビング・レームス("ローズウッド")を加えたミュージカル・ドラマになります。

“パトリオット”(9月22日モンタナ州でクランクイン予定)

「愛国者」というタイトルどおり、スティーブン・セガール演じる武道の達人でもある生物学者が、モンタナ州へ流出した細菌戦用のガスで妻と子供を亡くし、政府の隠蔽工作から地域やその住人を救う、合気道アクションと人間ドラマを絡(から)ませたアクション・ドラマです。

“エネミー・オブ・ザ・ステート”(10月ワシントンDCでクランクイン予定)

ディズニー傘下のタッチストーン製作、ジェリー・ブラッカイマー("コンエアー")がプロデュースで製作予算は8,000万ドルというスパイ・スリラー大作。つい先日、いま最もホットな俳優、ウィル・スミス("MIB"、写真)の主演が決定しました。政治の陰謀へアクションを織り交ぜたリアルな作品となりそうです。同じく、ブラックハイマーが企画する犯罪ドラマ“アパッチ”は、ロレンゾ・カルカテラ("スリーパーズ")の冥(くら)く生々しい原作に基づく脚本の執筆中、この作品でもウィルが主演候補に上がっています。

“ダイアモンド・イン・ザ・ラフ”(10月クランクイン予定)

カントリーの大御所ウィリー・ネルソンと親友のクリス・クリストファーソン("ローンスター")が主演する一風変わったウェスタン。ネルソン自ら「イースタン・ウェスタン」と呼ぶこの企画は、彼が友人で元ヘビー級ボクサー、テックス・コッブ("赤ちゃん泥棒")とスパーリング中に浮かんだアイデアだそうです。中国から始まりテキサスで終わるこのアクション・ウェスタンは、自らテッコンドウ(韓国空手)の有段者であるネルソンがその腕前を披露するシーンもあります。7歳と8歳の息子達や愛妻アニーと稽古に励み、64歳とは思えぬバイタリティーでコンサート・ツアーをこなし、11年間主催してきた“ファーム・エイド”(アメリカ農業のためのチャリティー・コンサート・イベント)へ力を注ぐネルソン、この映画でも彼の渋い魅力を十分に見せて欲しいですね。



(1997年8月16日)

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