11年目の浮気!?
最近、11年間の“おしどり夫婦”生活に終止符(ピリオド)を打って世間を驚かせたのが、ブルース・ウィリスとデミ・ムーアのパワー・カップルです。離婚の直接の原因はブルースの浮気らしく、昨年、いま上映中のSF大作“アルマゲドン”を撮影中、娘役で共演するリブ・タイラーを自宅へ招き“こと”の途中をデミが押さえて修羅場になったとか! 大道具を担当する友人から聞いた情報なので、信憑性はあります。ただ、浮気が引き金になったことは間違いないと思いますが、それ以外、2人は株式上場以来危機を噂される映画テーマ・レストラン・チェーン“プラネット・ハリウッド”を経営する実業家や、3人の娘の親という別の顔も持つだけ、いろいろな面で夫婦生活の鬱憤が一気に爆発し、破局を迎えたというのが実状なのでしょう。そのブルースは、間もなく撮影準備(プリ・プロダクション)中のロマンチック・コメディー“ストーリー・オブ・アス”で現実まがいの役を演じます。完全主義者の妻(ミッシェル・ファイファー)と性格の違いに悩み、ローティーンの息子と娘の養育でも頭を痛める気楽(イージ−・ゴーイング)な夫の葛藤をコミカルに描く、いわば秀作“恋人たちの予感”の15年後といった感じの作品です。“恋人たち・・・”や“スタンド・バイ・ミー”の名監督ロブ・ライナーのもと、11月30日のクランクインを控え、「人生とは芸術の模倣である」という昔からの諺を地で行くブルースの胸中やいかに?
噂の男
ウィルスの別れた女房デミー・ムーアといえば、彼女と同じ誕生日で一回り若い年男(11月11日の虎年生まれ)がレオナルド・ディキャブリオです。若干23歳ながら「伝記もの」は10冊以上出版されると、ますますの人気で人生を謳歌する噂の男、ハリウッド中から注目されていた次の出演作が決定し、一息ついています。史上最高額の2,100万ドルという破格のギャラを提示した本命馬“アメリカン・サイコ”を負かしてレオ・ダービーを射止めたのは、“トレイン・スポッティング”や“普通じゃない”のイギリス人若手異色監督ダニー・ボイルが手がける“ビーチ”です。昨年のベストセラー小説をベースにした物語は、ダフィー・ダックと名乗る旅行者が残した“エデンの園”への地図を頼り、タイにあるといわれる「地上の楽園」を目指して放浪の旅を続ける青年の冒険を描いたドラメディー(ドラマとコメディーを合わせた造語)。“タイタニック”の成功以来、スパイク・リー監督作“サマー・オブ・サム”他10作以上へ主演の噂が飛び交い、あげくの果ては彼がパスした“オール・ザ・プリティー・ホース”の“おこぼれ”競争まで起こるフィーバーぶりで、こちらはマット・デイモンが獲得しました。ともあれ、“トレイン・・・”や初期の“シャロウ・グレイブ”で驚異的な映像を見せてくれたボイル監督とのコンビに期待が膨らみます。
脚本もサイバー時代?
脚本家としては全くの素人であるマット・デイモンとベン・アフレック2人の俳優が書き上げた秀作“グッド・ウィル・ハンティング”のオスカー受賞は、いろいろな意味でハリウッドへ新風を吹き込みました。中でも新進脚本家たちに大いなる刺激を与えたはずです。また、その影響はケーブルTV大手のTNTネットワークが企画し、7月17日からオンライン中の“ラフカット・スクリーンプレイ・チャレンジ”へ窺(うかが)えます。マットとベンのような新人発掘を試みるこのウェブサイトでは、「ラフカット」の名のごとく未完成の脚本を発表し、それを応募者が完成させるという趣向です。未完成の脚本とはプロが書いた10頁の導入部「第1章」で、インターネットを通じ、毎週新たな章を公募してゆきます。これらの応募作の中から選び毎週10頁づつ新たな章を加えながら、90頁の“荒原稿(ラフカット)”まで膨らむと、最後は再びプロが「第10章」の纏めを書き上げ、100頁の脚本を完成させる大変ユニークな企画です。第1弾となった7月17日発表の導入部は、売れっ子脚本家デビッド・ゴイヤー("THE CROW/ザ・クロウ"、"ダーク・シティー")が担当しました。内容は姿を自由に変えられる主人公が、さまざまなハイテク小道具を駆使して繰り広げる“ブレイド・ランナー”と“ダーク・シティー”をかけ合わせたようなSFスリラー、主人公の「自殺願望」は先を書き進める上での餌に配慮された設定でしょう(写真)。毎週選ばれるベスト・チャプター賞の賞金が100ドル、完成後は最初と終わりを除く8章のトップ賞がノート型パソコンです。応募する場合、オリジナルの内容であることはもちろん、独自のキャスティング案を添えても構いません。新しい試みなだけ、主催者のTNTや第1弾を担当するプロの脚本家ゴイヤーも、どのような脚本が仕上がるのか皆目見当はつかず、「玉手箱」というあたり興味津々ですね! はたしてインターネットを活かした新しい執筆形態が生まれ、定着するかどうか、当「ハリウッド最前線」で「晴遊雨読」のページを開設した意図もそこにあるだけ、今後の成り行きはぜひ見守ってゆきたいと思います。なお、応募企画が映画化されれば、ベスト・チャプター賞を射止めた8人は脚本家として字幕へ登場し、プロへの道が開けるビッグ・チャンスです。英語のハンディはあるかもしれませんが、興味のある方は「ラフ・カット」のウェブサイトをチェックした上、挑戦されては?
ダッチの不思議な世界!
ジョン・トラボルタが、映画プロデューサーに変身するクールな殺し屋チリー・パーマー役を軽妙に演じてヒットした“ゲット・ショーティー”はじめ、'70年代のノスタルジア漂う犯罪小説“ラム・パンチ”を映画化したクエンティン・タランティーノ監督作“ジャッキー・ブラウン"、そして好評のうち上映されている“アウト・オブ・サイト”と、最近のハリウッドは“ダッチ”ことエルモア・レナード・ブームです。冷酷なマフィアの殺し屋、計算高いハリウッド・プロデューサー、過去を持つスチュワーデス、控えめな保釈金専門の金貸し(ボンズマン)、ハンサムな銀行強盗、セクシーな保安官・・・・・・レナード小説を集約すれば、一見不釣り合いの登場人物たちが繰り広げる犯罪小説であり、不思議な魅力で読者を魅了します。一風変わった主人公の登場する作風(スタイル)はデビュー当時から一貫していますが、当初はそれらの犯罪小説やウェスタン小説以外、商売用の脚本も書いていました。チャールズ・ブロンソン主演“マジェスティック"(1974年)やクリント・イーストウッド主演“シノーラ"(1972年)がその一部で、「脚本は大勢の人を納得させなければならないが、小説は自分さえ喜ばせればいいから楽だ」と語るレナード自身、自分の小説が次々と映画化されるようになってからも他人の脚色を好み、中には“デス・ポイント/非情の罠"(1986年)や“キャット・チェイサー"(1988年)といった脚本化で失敗したものもあります。レナード小説特有の「負け犬の美学」をスクリーンへ描き出して成功した最初の作品が“ゲット・・・”であり、脚本を担当したスコット・フランク("リトルマン・テイト")は“アウト・・・”でもご指名がかかり、作家の期待へ見事に応えました。面白いのは、これだけもてはやされる“ダッチの不思議な世界”が、当初はハリウッドでタブー視される存在であったことです。大スター、ダニー・デ・ビ−ト("L・Aコンフィデンシャル")の製作会社ジャージー・フィルムがプロデュース("オウト・オブ・サイト"も同様)しなければ、“ゲット・・・”はOKが出なかったでしょう。そこへ拍車をかけるのは、鬼才タランティーノ監督が“パルプ・フィクション”後もレナード小説を原作に選び、状況は一転します。タランティーノ自らレナードの初期ウェスタン小説4作の映画化権を購入する一方、“ファーゴ”のコーエン兄弟が米西戦争当時のキューバを舞台にしたレナードの最新作“キューバ・リブラ”を脚色する他、当のレナードは“ゲット・ショーティ”でハリウッドを征服した高利貸しチリーが、今度はレコード業界へ殴り込みをかける続編“ビー・クール”を書き終えたばかりで、当然トラボルタをイメージしているわけです。ちなみに、“アウト・・・”でジョージ・クルーニー("ピースメーカー")が演じるクールな銀行強盗ジャック・フォーリーは、ジャック・ニコルソンかショーン・コネリーをイメージしながら書いたとか!
魔女の奥様たち
3年前“クルーレス”のヒットで一躍注目を浴びたアリシア・シルバーストーン主演作として企画されたのが、往年の人気TV番組“魔法使いジニー"(写真左)のリメイク版です。その後、いったん暗礁へ乗り上げたこの企画に、ここしばらく明るい兆しも見えてきました。とはいえ、トッド・ランゲン("ミュータント忍者タートル")が書いたオリジナルの脚本では弱すぎるため、新たにロビン・スウィコード("若草物語")を雇ったプロデューサーのシッド・ギャニスが、2人してヒューストン航空宇宙センターへ足を運んだりネタ探しに追われているもよう。ご存じのとおり、魔法のランプから現われたチャーミングでセクシーな魔法使いジニーがハンサムな宇宙飛行士と結婚し、“魔法(ウィンク)”を使って一騒動起こすコメディー。封切りは来年後半を目指し、グエニス・パルトロゥ("スライディング・ドアー")、テア・レオーニ("ディープ・インパクト")などがシルバーストーンに代わる主演候補へ上がっています。一方、これまた30〜40代の年齢層ならお馴染みの“奥様は魔女"(写真右)”も、同じくアリシア主演作として企画されながら、彼女の人気とともに沈滞沈気味です。魔法をかける時、ウィンクならぬ鼻をピクピクさせる主人公サマンサの茶目っ気が受け、爆発的人気を博したこのシリーズは今なお再放送が続いています。そのリメイク版は、監督を予定されていたテッド・ベセル("プリティー・リーグ”TVシリーズ)が一昨年(1996年)急死した後、脚本のカーター・ビーン("3人のエンジェル")は降りたため、もはや風前の灯火(ともしび)・・・・・・
(1998年8月16日)
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