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(2019年12月)          




キングも満足

アメリカを代表するベストセラー作家で、その著作が次々に映像化されているスティーヴン・キング、現在日本で公開中の「ドクター・スリープ」は、彼の同吊小説を映画化したホラー作です。ユアン・マクレガー(写真)演じる心に闇を抱える孤独な中年男ダニー(ダン)・トランス、特別な力「シャイニング」の持ち主である彼が、同じくシャイニングを持つ少女アブラ・ストーン(カイリー・カラン)と、忌まわしい児童連続失踪事件へ巻き込まれてゆきます。キング原作の映画は「IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり」や「ペット・セメタリー」なども相次いで公開される中、「ドクター・スリープ」が特に注目されてきたのは、原作がキングの初期代表作「シャイニング」の続編であるためです。映画版「シャイニング(1980年)」はご存知のとおりスタンリー・キューブリック初のホラー作であり、ダニーの父ジャック役で登場するジャック・ニコルソンの鬼気迫る演技と相まって高い評価を受けました。しかし、キューブリック自身、「男とその家族が狂っていくだけの物語」と語っていたとおり、原作をかなり省略していたことへキングは批判的で、1997年には原作どおりの(かつ、霊魂となったジャックが成長したダニーを祝福するエピローグを加えた)TV版を自らの脚本、製作総指揮で手掛けています。その点、この続編は原作に忠実であるいっぽう、映画版「シャイニング」で省かれた部分をどう補足して本作へつなげるかが課題でした。それに挑んだのが、小学生の頃からキングを愛読し、キューブリックに映画の魅力をたたき込まれた監督のマイク・フラナガンであり、仕上がりはキングも満足しているようです。



ジョーンズの新作

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016年)」のフェリシティ・ジョーンズ(写真右)が、「博士と彼女のセオリー(2014年)」以来、久し振りでエディ・レッドメイン(写真左)と共演する「イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり」の日本公開は、来年(2020年)1月17日に決定しました。1862年、ヴィクトリア朝時代のロンドンが舞台となり、気象実験のため、気球で前人未到の高度世界記録へ決死の覚悟で挑んだコンビの知られざる実話を描いた本作は、自由な気球乗りアメリア(ジョーンズ)と堅物の気象学者ジェームズ(レッドメイン)2人のドラマです。正反対の性格で対立ばかりしながら、飛行してゆく中で2人は次第に心を通わせ、困難へ挑んでゆきます。しかし、高度が上がるにつれ、予想しない出来事が2人を待ち受けており・・・・・・今から約150年前の信じがたい実話を、驚異の映像で映画化した本作は、トロント国際映画祭でいち早く上映され、各国のメディアから「『ゼロ・グラビティ』に続く劇場体感型映画!」、あるいは「ここまでフェリシティ(・ジョーンズ)が身体を張る女優とは! 間違いなく彼女の代表作の一本」などの賞賛の声が上がり、注目を集めています。また、実存するフランス人気球操縦士のエピソードに基づく上空4千メートルで蝶と出会う幻想的なシーンや、ジョーンズとレッドメインが実際に気球で飛んで撮影したという雄大なロンドンを見渡すカット、高度1万メートルの雲の上の世界でどこまでも広がる空を収めたカットなどは、息を飲む映像美です。監督のトム・ハーパーも、「ぜひ大きなスクリーンで手に汗握る興奮の体験をして欲しい」と語っています。



ノートンの1人4役

ハリウッドを代表する演技派俳優エドワード・ノートン(写真右)が監督、脚本、製作、主演の1人4役を務めた「マザーレス・ブルックリン」は、物語の舞台でもある1950年代のフィルム・ノワールを彷彿とさせる犯罪ドラマです。ノートンが演じる主人公の私立探偵ライオネル・エスログは持病(トゥレット症候群)の発作に悩まされ、そんな彼を孤児院から引き取り、私立探偵となってからの雇い主がボスのフランク・ミナ(ブルース・ウィリス)でした。やがて恩人であるミナはある事件に巻き込まれて殺されてしまい、エスログが捜査へ乗りだします。捜査の途中で、ググ・バサ=ロー(写真左)演じる事件の鍵を握るローラ・ローズや、権力者モーゼス・ランドルフ(アレック・ボールドウィン)、謎を知るポール・ランドルフ(ウィレム・デフォー)などと出会い、エスログは1950年代のニューヨークの危険な闇に引き込まれてゆくのです。予告編の冒頭から流れるのはトム・ヨークが本作のため書き下ろした「デイリー・バトルズ」、かつてのフィルム・ノワールを意識しながらも現代的な演出をよりいっそう彩っています。なお、原作小説の時代設定が1999年だったのを1950年代へ変えた理由をノートン(監督)は、「原作小説の登場人物たちが1950年代のハードボイルド小説を思わせるものとなっていた。原作をそのままの時代設定で映画化した場合、彼らは浮いてしまうだろう。それを避けたかったんだ。1950年代半ばのニューヨークで何が起きたのかという問題はいつも関心を持ってきた。その時代に存在した数え切れないほどの組織的腐敗とレイシズムが現代のニューヨークの在り方を決定づけたからね」ということです。



3女優共演

シャーリーズ・セロン(写真左)、ニコール・キッドマン(写真中央)、マーゴット・ロビー(写真右)の共演が話題の新作「スキャンダル」は、米国のTV局で3年前に起きたばかりの事件が題材とあって、実在する有吊人たちの再現ぶりにも多くの関心が寄せられています。ストーリーの基となっているのは、フォックス・ニュースの最高責任者だったロジャー・エイルズが、セクハラの告訴を受けて辞任へと追い込まれた事件です。訴えを起こしたのが同局の人気女性キャスターだったことから、一大スキャンダルへと発展しました。劇中では、実在のキャスター2人のうちメーガン・ケリー役をセロン、グレッチェン・カールソン役をキッドマン、架空の番組プロデューサー、カイラ・ポシュピシル役をロビーが演じ、告発に至るまでの経緯を描いています。エイルズ主導のもと、当時のフォックス・ニュースの女性キャスターには「金髪のロングヘア」、「明るい色のボディコン、半袖にミニスカート」、「ヌードカラーのストッキングとハイヒール」が推奨されていました。劇中のセロン、キッドマン、ロビーの明るい金髪は、事件の背景となる価値観の象徴でもあるのです。セロンは同作で金髪に飽きてしまったらしく、撮影終了後、ダークカラーのボブヘアへ替えています。最新の「Wマガジン」に掲載された本作の特集記事のなかで、彼女がツイッギーをイメージした'60年代風ファッションや、男装の麗人さながらのスタイルなどを披露するいっぽう、キッドマンとロビーは色味を抑えたメイクとマニッシュな装いで、クールな美貌を競い合っていました。本作が日本で公開されるのは来年(2020年)2月21日を予定しています。



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