USB 3.0登場!
一昔前はコンピュータと周辺機器を接続するのに様々なコネクタがあったのも、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)の登場でかなり整理されました。その後、USBは「ハイスピードUSB」と呼ばれるUSB 2.0へ進化し、現在に至っています。今度は、そのUSB 2.0が更に「スーパースピードUSB」ことUSB 3.0へと進化して現行規格USB 2.0の10倍のスピード、つまり現在の通信速度480Mビット/秒から5Gビット/秒以上となり、27Gビットのファイルをたったの70秒で転送が可能となるのです。上の写真はUSB 3.0の新型コネクタ(MaximumPC)で、一つのコネクタにデータ送信用の「レーン(lane)」が複数あるため、情報の送受信が両方同時に出来ます。左の写真ではUSBコネクタのAとBの各サイドが写っており、右の写真は新しいミニUSBで、小さなHDMIケーブルみたいですね。USB 3.0最大のメリットは、新しい電源管理オプションが揃った点ではないかと思われます。USBで繋げる周辺機器がスタンバイになると、パソコンを定期的にチェックする間も電力消費がゼロになるので、ノート・パソコンを使ってる人は電源切れの心配が減るわけです。さらに嬉しいのは、USB 2.0対応端末とも互換性があります。
あとスペックは、100mA(ローパワーデバイスは100mA、ハイパワーデバイスは500mAまで)から900ミリアンペアまで格段にアップし、端末の充電時間も短縮されました。必要な電子端末を何個までハブに差し込めるかという心配もなくなるようです。では、USB 3.0の規格を制定するUSB 3.0 Promoter Groupが明らかにしたケーブルとコネクタの形状を見てみましょう。
今までのUSB 2.0では、1組のUTP(非シールドより対線)を利用してデータを送受信していました。それがUSB 3.0では、ケーブル内へ2組のSTP(シールド付きより対線)を追加してあります。一方のSTPを送信専用に使い、もう一方を受信専用に使うと、送受信を分離して伝送を効率化しているわけです。
データのやりとりを効率化するため、伝送プロトコルへも変更が加えられます。USB 2.0ではパソコンなどのホストが常に主導権を持ち、接続された周辺機器へ一定間隔で通信要求を確認する「ポーリング」と呼ばれる方法を採用していました。USB 3.0ではポーリングを廃止し、パソコンと周辺機器が対等な関係になった結果、データを転送したい場合は周辺機器側からパソコン側へ要求を出して通信を開始することも出来るのです。ポーリングによる無駄な通信を減らすことで伝送速度を高めるほか、消費電力の削減も狙っています。
先に述べたとおり、USB 3.0では既存のUSBとの互換性を確保するため、ケーブルへUSB 3.0用の2組のSTPに加えてUSB 2.0のUTPも組み込んであり、挿し込み口もUSB 2.0へ搭載されていた4つの端子の奥に、USB 3.0で使う5つの端子が用意されているのです(図参照)。追加された端子のうち1つが接地線で、残りを送信用と受信用にそれぞれ2つずつ使います。このような形状を採用することで、たとえばUSB 3.0の挿し込み口へUSB 2.0のプラグを挿し込んでもUSB 2.0としての通信が、またUSB 3.0のプラグをUSB 2.0に挿し込んでもUSB 2.0として通信が可能です。
USB 3.0は現在、米インテル、米テキサス・インスツルメンツ、米ヒューレット・パッカード、米マイクロソフト、NEC、オランダのNXPセミコンダクターズの6社から成るUSB 3.0 Promoter Groupによって規格策定が進められています。なお、USB 3.0 Promoter Groupへ参加するうちの一社インテルによれば、USB 3.0では銅線だけでなく光ケーブルによる伝送へも対応する見通しだそうです。今後、各企業の意見を集約した後、間もなく正式な仕様が公開されます。対応製品の販売は早くても来年(2009年)になるでしょう。