映画と事故


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ロバート・ダウニー・Jr
 アクション映画に撮影中の事故はつきものである。スタントマンの事故から俳優自身の事故までいろいろなケースがある中で、今回は主演俳優の事故をいくつかご紹介しよう。

 現在、「アイアンマン3」を撮影中のロバート・ダウニー・Jr(写真)が、自らスタント・シーンを演じている時、足首を痛めて、いったん撮影は中断された。つい先日のことである。事故が起こったのはノース・カロライナ州ウィルミントンのセットで、制作予算が2億ドル(約160億円)台というこの映画の場合、しばらくダニー・Jrが抜けている間は金をドブへ垂れ流しているようなものだが、製作会社のマーベル・プロダクションは前作「アベンジャーズ」が世界市場で15億ドル(約1,200億円)近く稼いだばかりだから余裕綽々だ。

 その「アイアンマン」といえば、2作目でも撮影中の事故が話題になっている。この時はダウニー・Jrが加害者で、被害者はスカーレット・ヨハンソンだった。ダウニー・Jrが出番を待ちながらうっかりと着用していたコスチュームのボタンを間違って押したため、(コスチュームの)ロボット・アームは後ろのほうへ動き、そこにいたヨハンソンを倒してしまったのだ。ほんの一瞬の出来事で、2人ともどうしようもなかったらしい。

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ジョージ・クルーニー
 幸い軽症で済んだダウニー・Jrやヨハンソンの事故と比べ、2005年の「シリアナ」を撮影中にジョージ・クルーニー(写真)が背骨を傷めた時は、かなり深刻だった。その後、何年か後遺症で苦しんだクルーニーが、一時は自殺すら考えたと、去年「ローリングストーン誌」のインタビューで語っている。最近受けた手術が成功し、今ではようやく背骨も完治したという。この「シリアナ」はクルーニーがアカデミー助演男優賞を取った映画というだけあって、いろいろと苦労話は尽きないようだ。

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アーノルド・シュワルツェネッガー
とシルベスター・スタローン
 「エクスペンダブルズ2」の撮影で事故が起こった時は、なんと1人でなく2人・・・・・・アーノルド・シュワルツェネッガー(写真左)とシルベスター・スタローン(写真右)が2人揃って肩を怪我している。2人は別々の事故で病院へ担がれたが、どちらも肩の手術を受け、結局、病室では2人仲良く並んで和気あいあいと過ごしたらしい。ただ、可哀そうなのがシュワルツェネッガーで、彼は「ザ・ラスト・スタンド」の撮影でも頭を怪我している。

 ちなみに「エクスペンダブルズ2」だが、和気あいあいといえば2作目でスタローンから監督を引き継いだサイモン・ウェスト曰(いわ)く、「エゴのぶつかり合いはほとんどなかったね。エゴがあったとしてもみんなそれぞれ大きいから、ぶつかり合って消滅したのかもしれない。共通の目的で集まったのだから結束は固かった。一つ大変だったのは、頻繁に昔話をして盛り上がっていたことさ。そんな時の彼らを撮影に集中させるのはひと苦労だったよ」ということだ。和気あいあいが行き過ぎると、それはそれで大変らしい。

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ハル・ベリー
 運動神経が発達していると事故を免れそうでありながら、現実はその逆だ。運動神経の鈍い俳優ほどスタントマンへ頼るから、むしろ事故が減る。たとえば、ハル・ベリー(写真)といえば、女優の前はオリンピック・クラスの水泳選手であった。それだけに、かつて「007/ダイ・アナザー・デイ(2002年)」で崖の上から飛び込むシーンも自分自身でスタントを演じている。そのベリーが今年の夏、次作「ハイヴ」のファイト・シーンを撮影中、頭を怪我した。広報担当者(レップ)の話では、軽傷ながら大事をとって病院へ担がれたそうだ。

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クリステン・スチュワート
 「ハイヴ」の前も、現在、全米でヒット中の「クラウド・アトラス」を撮っていた去年、ベリーは足を怪我している。ただし、事故が起こったのは撮影が休みの日で、写真でもわかるとおり、しばらくの間、彼女は杖をつきながら歩いていた。幸い、撮影へほとんど影響しなかったようである。

 いっぽう、去年クリステン・スチュワート(写真)がロンドンで「スノーホワイト」の撮影中に手を怪我した時は、一時制作が中断された。軽傷とはいえ、このところスチュワートも事故が続いており、今月(11月)中旬の全米公開を控える「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 2」の撮り直しがあった時は足を怪我している。アクション映画が続いている以上、少々の怪我は避けられないのだろう。

 そのスチュワートが「スノーホワイト」の撮影では、うっかりと共演のクリス・ヘムズワース(写真)を殴ってしまい、彼の目の周りにしばらく隈が出来ていたらしい。ヘムズワースの場合、あの体格を見れば少々の事故でめげたりするとは思えないが、それでもアクション・スター稼業は大変だ。

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クリス・ヘムズワース
 やはりヘムズワースが演じる「アイアンマン」と同じマーベル・コミックのスーパーヒーロー「マイティー・ソー」、去年その1作目の撮影中にも彼は目の周りに隈を作っている。共演のトム・ヒドルストンが鞭を打つシーンで、彼は前もってヘムズワースへ注意を促した。しかし、すっかり(鞭のシーンに)慣れていたヘムズワースが「大丈夫、大丈夫!」と言いながら、ちょうど鞭の飛んでくる位置へ立ったため、鞭はヘムズワースの目を直撃したのである。

 自らの油断が招いた事故だけに文句も言えず、すっかり腫れあがった目で撮影を続けたヘムズワースは、現在シリーズ2作目「ソー:ザ・ダーク・ワールド」の撮影中で、さらにスティーヴン・スピルバーグ監督の最新作「ロボポカリプス」へも出演交渉中だ。これらの撮影が無事終わることを祈りたい。

 以上、いくつかご紹介した撮影中の事故は、クルーニーを除いてさほど深刻でもないが、「トワイライトゾーン/超次元の体験(1983年)」のビッグ・モローなどは上空から撮影していたヘリコプターが墜落し、死亡した。あるいはブルース・リーの息子であるブランドン・リーの撮影中の事故死も忘れられない。そういう意味で、映画がリスキーなビジネスであることは確かだ。

横 井 康 和      


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