映画とコミック
DCコミックを映画化した「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」に続き、マーベル・コミックを映画化した「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」がヒット中だ。アメリカン・コミックの双璧、DCコミックとマーベル・コミック、どちらにとってもドル箱である一連のシリーズは、今後も新作が目白押し・・・・・・では、いつ頃から映画化されたかといえば、これがあんがい古いのである。
「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」
まずマーベル・コミックは1944年まで遡(さかのぼ)り、「キャプテン・アメリカ」のシリーズ15話が初めて映画化された。ただし、当時はまだマーベル・コミックでなく、タイムリー・コミックの名前を使っている。それからしばらくの空白があり、続いてはユニバーサル・スタジオがルーカスフィルムと共同で製作した「ハワード・ザ・ダック(1986年)」だ。一歩出遅れたDCコミックは、1951年に初めて「スーパーマン・アンド・ザ・モール・マン」を映画化している。'50年代の人気TVシリーズ「スーパーマン」のパイロット・フィルムを劇場公開したものであった。そして、マーベル・コミックが鳴りを潜める1986年までの間、2作目の「スタンプ・デイ・フォー・スーパーマン(1954年)」、'60年代の人気TVシリーズ「バットマン」を映画化した「バットマン:ザ・ムービー(1966年)」、「スーパーマン(1978年)」、「スーパーマンU(1980年)」、「スワンプシング(1982年)」、「スーパーマンV(1983年)」、「スーパーガール(1984年)」、「スーパーマンW(1987年)」と立て続けに映画化している。ただし、それぞれの製作スタジオは違う。
「ハワード・ザ・ダック」でコミックの映画化へ復帰したマーベル・コミックが次に製作したのは「パニッシャー(1989年)」と「キャプテン・アメリカ(1990年)」だが、これらはビデオ販売のみのアメリカを除いての世界興業であった。また、続く「ファンタスティック・フォー(1994年)」も公開されずじまいで終わっている。
「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」
彼らの映画がようやくヒットしたのは「ブレイド(1998年)」や「X-MEN(2000年)」あたりからだ。そして2002年、「ブレイドU」と「スパーダーマン」がヒットし、後者はオスカーへノミネートされる。2003年も「デアデビル」が不調とはいえ「X-MEN2」が好調で、「ハルク」もそれなりに成功した。
「スーサイド・スクワッド」
マーベル・コミックのいっぽうではDCコミックが「スワンプシング」の続編「怪人スワンプシング」と「バットマン」を1989年に公開し、後者はワーナーブラザーズの初参入となり、それが成功した結果、「バットマン・リターンズ(1992年)」、「バットマン・フォーエバー(1995年)」、「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997年)」、「スティール(1997年)」をはじめとする後続のDCコミックスはすべてワーナーブラザーズが絡んでゆく。今世紀に入って両コミックの映画化は、いよいよ競争が激しくなり、マーベル・コミックは「パニッシャー(2004年)」をリメイクしたり、「スパイダーマン2(2004年)」、「ブレイド3(2004年)」、「エレクトラ(2005年)」、未公開に終わった「ファンタスティック・フォー」のリメイク版(2005年)、「X-MEN ファイナル ディシジョン(2006年)」、「ゴーストライダー(2007年)」、「スパイダーマン3(2007年)」、「ファンタスティック・フォー:銀河の危機(2007年)」と続々と新作を発表する。
DCコミックも負けじと「キャットウーマン(2004年)」、「コンスタンティン(2005年)」、「バットマン・ビギンズ(2005年)」、「V フォー・ヴェンデッタ(2006年)」、「スーパーマン・リターンズ(2006年)」とそのディレクター・カット版などを発表し、中でもバットマンとスーパーマンのリブート版の健闘が目立つ。
「X-MEN:アポカリプス」
そして2008年、それまでは映画の製作スタジオへライセンスという形を採っていたマーベル・コミックが、自らのスタジオで製作に参入した。「アイアンマン」はその第1作目で、主演のロバート・ダウニー・Jrも今ほどのスター・パワーがなく、どちらかといえば成功は懐疑的な状況でマーベル・コミックが賭けに出たのだ。同じ年、マーベル・コミックは立て続けに「インクレディブル・ハルク」と「パニッシャー:ウォー・ゾーン」を公開する。
「ワンダーウーマン」
DCコミックが「バットマン」をリブートしたのも2008年、「ダークナイト」は予想以上のヒット作となった。その後、「ウォッチメン(2009年)」、「ルーザーズ(2010年)」、「ジョナ・ヘックス(2010年)」、「グリーン・ランタン(2011年)」と続くが興業的にはパッとせず、「ダークナイト ライジング(2012年)」と「スーパーマン」の再リブート版「マン・オブ・スティール(2013年)」でようやくヒットを飛ばす。「インクレディブル・ハルク」や「パニッシャー:ウォー・ゾーン」が今いちだったマーベル・コミックも、続く「ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009年)」、「アイアンマン2(2010年)」、「マイティ・ソー(2011年)」、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011年)」、「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー(2011年)」は大成功を収めるのだ。
翌2012年、「ゴーストライダー2」が不評だったものの「アベンジャーズ」とスパイダーマンのリブート版「アメイジング・スパイダーマン」はヒット・・・・・・ちなみに、この「アベンジャーズ」以降のマーベル・スタジオが製作した映画はディズニー・スタジオが配給しており、その後、合併吸収へ至る。また、残る「ゴーストライダー・シリーズ」と「スパイダーマン・シリーズ」はコロンビア(ソニー)が製作。
「ドクター・ストレンジ」
それからもマーベル・コミックは順調で、「アイアンマン3(2013年)」、「ウルヴァリン:SAMURAI(2013年)」、「マイティ・ソー/ダーク・ワールド(2013年)」、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー(2014年)」、「アメイジング・スパイダーマン2(2014年)」、「X-MEN:フューチャー&パスト(2014年)」、「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー(2014年)」、「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン(2015年)」、「アントマン(2015年)」、リブート版「ファンタスティック・フォー(2015年)」、「デッドプール(2016年)」、そして「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」へと続く。
マーベル・スタジオをディズニー・スタジオが合併吸収した現在、マーベル・コミック対DCコミックはディズニー(および20世紀フォックスとコロンビア軍団)対ワーナーブラザーズでもある。そして、両スタジオが向こう数年間で10作近い製作を発表済だ。
「フラッシュ」
マーベル・コミックは今年あと2本、「X-MEN:アポカリプス」と「ドクター・ストレンジ」の公開が決まっているいっぽう、DCコミックは「スーサイド・スクワッド」で対抗する。そして来年(2017年)、マーベル・コミックがウルヴァリン・シリーズの新作(タイトル未定)、「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー2」、「スパイダーマン:ホームカミング」の3作を公開するのに対し、DCコミックは「ワンダーウーマン」と「ジャスティス・リーグ・パート1」の2作を公開する。
2018年はマーベル・コミックが「ブラック・パンサー」と「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー・パート1」と「アントマン・アンド・ザ・ワスプ」でDCコミックが「フラッシュ」と「アクアマン」、2019年はマーベル・コミックが「キャプテン・マーベル」と「アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー・パート2」でDCコミックが「シャザム」と「ジャスティス・リーグ・パート2」、2020年はDCコミックが「サイボール」と「グリーン・ランタン」というラインアップだ。
「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー2」
以上のうち今年公開される「X-MEN:アポカリプス」、「ドクター・ストレンジ」、「スーサイド・スクワッド」の3本は撮影が終了しており、現在、編集(ポスト・プロダクション)段階である。また、続く「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー2」、「ワンダーウーマン」、「ジャスティス・リーグ・パート1」の3本が現在、撮影中だ。それ以外の作品も製作準備に入っている。
続々と公開される作品はコミック・ファンなら堪らないと思うが、どこまで成功するかは別問題だ。柳の下に、そう何匹もどじょうがいるとは限らない。マーベル・コミック、DCコミック両社の幸運を祈りたいと思う・・・・・・なお、最後にお断りしておくと、今回ご紹介した実写版以外、両社ともアニメ版の映画も製作しているが、それらは省いた。また、「スーパーマン」を演じた俳優に関しては、TVシリーズを含めて以前も取り上げたことがあるので、より詳しく知りたい方はそちらを参照していただきたい。
横 井 康 和