牡蠣食えば・・・・・・京都篇


 ロサンゼルスで生牡蠣などを食べさせる本格的なシーフード・レストランといえば、以前、「牡蠣食えば・・・」と「牡蠣食えば・・・・・・ハリウッド篇」で何軒かご紹介しました。今回はその京都篇です(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

錦だいやす
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■錦だいやす

kyoto-nishiki.or.jp/stores/daiyasu
京都市中京区錦小路通高倉東入中魚屋町509
075-221-0246

 数ある「吉兆」の中でも、同じ行くなら嵐山本店でしょう。そもそも吉兆の始まりは昭和5年(1930年)に湯本貞一が大阪新町へ「御鯛茶處吉兆」を創業し、その後、嵐山にあった個人宅を譲り受けてこの京都嵐山吉兆(当時は「嵯峨吉兆」)を開店したのが昭和23年(1948年)のことです。それまで新町から畳屋町へ移転したものの大阪大空襲で焼失、被災後は芦屋の自宅で「芦屋吉兆」を開店するなど様々なドラマがありました。それも、後の展開を思えば序章にすぎません。

 嵐山本店を開店してからも引き続き高麗橋店、船場店、銀座店など店舗を増やし、大阪、京都、神戸、東京などで多店舗展開をすすめた結果、1991年、創業者の貞一の息子や料理人である娘婿たちをのれん分けの形で独立させて、吉兆グループとしてグループ会社制へ移行します。長男湯木敏夫が本吉兆、長女の婿湯木昭二朗が東京吉兆、次女の婿徳岡孝二が京都吉兆、三女の婿湯木正徳が船場吉兆、四女の婿湯木喜和が神戸吉兆を継承してゆく他、東京サミットで午餐会の料理を提供するなど、その勢いは目覚ましいものがありました。

 いっぽう、平成19年(2007年)船場吉兆で偽装問題が発覚し、翌年、船場吉兆は廃業したかと思えば平成21年(2009年)、「ミシュランガイド京都大阪2010」で嵐山本店が3つ星、HANA吉兆店が1つ星の評価を受けるのです。ところが、平成25年(2013年)には京都吉兆でローストビーフとして偽造販売していた商品の自主回収が行われます。こうした荒波の中で嵐山吉兆は健在です。行くだけの価値があるのはもちろんですが、予算は1人5万円前後を見ておく必要があることだけはお忘れなく!

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 写真は左から「厚岸産の生牡蠣(#1)」、「相生産の焼き牡蠣(#2)」、「牡蠣フライ(#3)」、「さざえつぼ焼き(#4)」、「ホタテ貝焼き(#5)」。

かき小屋フィーバー
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■かき小屋フィーバー

kakigoyafever.jp
京都市中京区恵比須町534-31 CEO KIYAMACHI 2F
050-5589-9872

 この「かき小屋フィーバー」は、もともと大阪の「かき小屋フィーバー1111」から始まって、20014年の2月に京都へ「ロッカッチョ」という吊前で支店がオープンしました(ロッカッチョ自体のオープンは2013年5月)。その後、いったん京都支店を閉め、

 京都市内、秀吉の北の政所「於寧(おね)」ゆかりの高台寺近く、現在の「高台寺和久傳」へ移転したのが昭和57年(1972年)、もともと日本舞踊の尾上流の家元の住まいで当時は旅館として使われていました。数寄屋建築の吊工として知られる中村外ニが昭和20年(1945年)に建てられた吊建築です。この高台寺和久傳は、(和久傳の)店舗数が増えた今でも、その総本山に当たります。

 料亭、おもたせのお店で吊を成した和久傳は、このように吉兆などと比べて歴史が浅いのです(旅館の頃はごく普通の料理しか出していません)。それが和久傳の強みといえるでしょう。そして、料亭の次に取り組んだのが、和久傳の発祥の地である丹後でのプロジェクト、故郷への恩返しの意味を込めた地域活性事業です。冬の蟹料理などで人気のある丹後久美浜町に、おもたせなど物販商品の工房をつくり、ここから京都市内をはじめ全国へと商品を発送しています。また地域の旬の食材へのこだわりから、丹後の地でお米、野菜や果物などの栽培も始めました。添加物を使わない素材を活かしたおもたせは和久傳ならではです。

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 写真は左から「生牡蠣(#6)」、「蒸し牡蠣(#7)」、「焼き牡蠣(#8)」、「牡蠣フライ(#9)」、「牡蠣ご飯(#10)」。

KAKIMARU
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■KAKIMARU

京都市山科区竹鼻竹ノ街道町51-1
075-574-7358

 八坂神社近くの「ぎをん小路」を四条通りから入った右側にある「祇園なか原」は、カウンター7席とその後ろの小上がり4席だけの小さなお店です。和久傳や吉兆と違って、この道30年の大将が弟子と2人だけで切り回しています。もっとも、平成17年(2005年)のオープン時は夫婦で始め、間もなく出産のため奥さんと今の弟子が交代しました。大将の腕は定評があり、「ミシュランガイド関西2014」では1つ星の評価を受けています(先の2軒も含めて京料理でミシュランの評価はあまり関係ありませんが)。

 なか原が嬉しいのは味がいいばかりではなく、先の2軒と比べて値段がリーゾナブルなことです。先の2軒はどちらも一軒家を構えておりスタッフも大所帯ですから、その維持費や人件費を考えると当然でしょう。たとえば先の2軒で懐石コースを食べると1人5万円ほどするところが、なか原では昼だと5千円ぐらい、夜だと1万円~2万円ぐらいで済みます。また、コースでなく単品が頼めるのも便利です。コース、単品を問わず、まず最初は八寸が出てきます。あと、ここのまる鍋や鱧の焼き霜は外せません。

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 写真は左から「気仙沼産の生牡蠣(#11)」、「冷製ヴァポーレ(#12)」、「牡蠣フライ(#13)」、「海老バジル(#14)」、「ホッキ貝(#15)」。

 京都で京料理の店といえば、それこそ腐るほどあります。そんな中で老舗の代表格として「京都吉兆嵐山本店」、比較的新しいけれど伝統に捉われず自然志向の料亭として「高台寺和久傳」、オーナー・シェフ1人が切り回しているリーゾナブルな割烹小料理屋として「祇園なか原」の3軒を選んでみました。偶然、3軒ともミシュラン店ですが、まったく意識したわけではありません。私自身、2015年以降選択から外れたなか原が、その後の質は落ちていないと思うし、他の多くのミシュラン店と比べてなぜ選択から外れたのか紊得できない部分があります。

 ともあれ、今回取り上げた3軒のうち吉兆と和久傳はシェフだけでも大所帯であり、独立してお店を出したシェフも結構います。京都駅の南側にある「燕(えん)」のシェフ・オーナーが、かつて和久傳で修行していたようなパターンです。いっぽう、船場吉兆は偽装問題が発覚して廃業した後、息子の湯木尚二は北新地へ「日本料理湯木本店」を開き、今や3店舗まで増やしています。こうして京料理の美味しいお店が増えることは大歓迎です。

横 井 康 和      


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