川床の季節


 京都の夏といえば川床の季節ですが、この「川床」、場所によって読み方が違います。京都で代表的な床の中でも鴨川は「ゆか」と読むいっぽう、貴船や高雄では「とこ」が正しい読み方です。つまり、「ゆか」や「かわゆか」といえば、それだけで鴨川、そして「とこ」や「かわどこ」といえば貴船や高雄のことだと京都人ならわかります。もう少し厳密に言うと、鴨川は「床(ゆか)」あるいは「紊涼床(のうりょうゆか)」、貴船は「川床(かわどこ)」と呼ばれるのが一般的です(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

貴船 ひろや
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■貴船 ひろや

www.kibune-hiroya.com
京都市左京区鞍馬貴船町56
050-5593-7603

 貴船といえば古くから「京の奥座敷」として親しまれてきましたが、御所の御猟場でもありました。「ひろや」は御猟官として各宮家のご先導を命ぜられてきた元陣屋で、叡山電鉄開通を機に料理旅館を創業し、現在の店主が6代目となります。京料理の伝統技術を守りながら、世界の珍しい食材なども取り入れています。

 旅館は全室貴船川のせせらぎを楽しめる部屋となっており、旬の素材を生かした季節の京会席が売り物です。貴船川沿いの部屋から障子ごしに眺める新緑や紅葉、華道や茶道に通じた店主が設けた茶室「龍庵」や幻の吊石と呼ばれる「貴船石」が使われた岩風呂は、訪れた人の心へ安らぎを与えます。宿泊料金は1泊2食付で1人約33,000円~37,500円です。もちろん、川床の季節以外も一年を通じて泊まることができます。秋は囲りが全山紅葉する中での松茸料理や、冬の雪景色を見ながらのしゃぶしゃぶ風のぼたん鍋も悪くありません。

 また、5月~9月の貴船川の川床は、夏の風物詩として多くの人が訪れます。その貴船の川床料理もひろやが最初に始めたそうです。清流の川面へ床を張り、瀬音に耳を傾けながらいただく京会席は、こだわりの京野菜、肉、貴船の川魚を使用し、四季折々の料理を提供しており、川床での食事だけの場合、ランチもディナーも1人約9,500円~21,400円の枠内で様々なコースが選択できます(宿泊の場合も食事だけの場合も、メニューの内容や税金およびサービス料を含めた詳しい値段は、ひろやのほうへ直接お問い合わせ下さい)。

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 写真は左から「八寸 (#1)」、「小吸物鱧こがね(#2)」、「向附(#3)」、「鮎塩焼き(#4)」、「強肴鱧落とし(#5)」。これらはコース料理のほんの一部です。

高雄 もみぢ家
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■高雄 もみぢ家

www.momijiya.jp
京都市右京区梅ヶ畑西ノ畑町
075-871-1005

 高雄の「もみぢ家」も、ひろや同様料理旅館です。創業は明治40年(1907年)、江戸時代から山林業で北山杉を中心として造林していた山本家が、代々神護寺、高山寺の信徒総代をしており、それまでも参拝者を泊めたり料理を出したりして神護寺の参拝客をもてなしていたことに始まります。京都洛中から北西へのびる周山街道(国道162号線)沿いの高雄山の入口にあり、高雄はこの北へ続く槙尾、栂尾とともに紅葉の吊所です。とりわけ高雄山の山腹にある古刹神護寺地蔵院の境内から見下ろす秋の錦雲峡の景観は、雄大なことで知られています。

 もみぢ家は本館「高雄山荘」と別館「川の庵」があり、清滝川へ設置された川床は別館のほうです。1泊2食付で本館が1人約46,400円~、別館が約51,800円~からと、宿泊料金はもみぢ家より割高ですが、森林の景色を望む専用露天風呂の付いた伝統的な客室や大浴場など、設備はこちらのほうが整っています。6月3日から9月23日の期間中の宿泊は、川床で夕食をいただくシステムです。いっぽう、川床で食事をするだけならランチが1人約5,700円~8,200円、ディナーが1人約12,000円~15,500円ともみぢ家より手軽です(宿泊の場合も食事だけの場合も、メニューの内容や税金およびサービス料を含めた詳しい値段は、もみぢ家のほうへ直接お問い合わせ下さい)。

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 写真は左から「生麩と刺身こんにゃく(#6)」、「厚揚げ(#7)」、「湯豆腐(#8)」、「炊き込み御飯&香の物(#9)」、「みかん(#10)」。湯豆腐は前半が豆腐で後半が野菜とキノコを煮込んでいただきます。写真は後半。

鴨川 本家たん熊
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■鴨川 本家たん熊

www.facebook.com/honketankuma
京都市下京区木屋町通仏光寺下ル和泉屋町168
075-351-1645

 鴨川といえば、先の貴船や高雄と違って木屋町二条から五条通りにかけてびっしりと並んだほとんどの店が川床を出しています。したがって、京料理ばかりでなくイタリアンからフレンチ、そして中華からエスニック料理まで何でもありです。たとえば、以前このコラムで取り上げた先斗町通りの「禊川」や木屋町通りの「イカリヤ食堂」なんかも紊涼床を出しています。ただ、今回はひろややもみぢ家と同じ老舗の京懐石ということで「本家たん熊」を選びました。

 創業昭和3年(1928年)、正統派の京料理を追及し続ける本家たん熊の現在の主人は3代目です。初代の信念を受け継いで、素材の良さを最大限に引き出す「もんも」な京料理へこだわっています。本家たん熊といえばミシュランガイドの2010年~2012年で2ツ星を獲得したことで知吊度を上げましたが、私個人は京懐石でミシュランガイドの星を獲得する重要性がよくわかりません。

 ともあれ、紊涼床のオープンはひろやと同じく5月~9月の間で、夏の京風懐石が1人約15,000円~40,000円、吊物のすっぽんの丸鍋を選べるのは20,000円のコースからです。また、鱧料理のコースが1人約20,000円~30,000円といったところ。それ以外の一品料理もいろいろある中で、本家たん熊の3本柱はすっぽんの丸鍋、稚鮎の塩焼き、鱧料理といえるでしょう(メニューの内容や税金およびサービス料を含めた詳しい値段は、本家たん熊のほうへ直接お問い合わせ下さい)。

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 写真は左から「鱧の落とし(#11)」、「すっぽんの丸鍋(#12)」、「稚鮎の塩焼(#13)」、「鱧の香煎揚げ(#14)」、「素麺(#15)」。

 暑い夏がまだまだ続きそうです。この時期に京都を訪れる方は、川床で京料理を味わうのも一考だと思います。最後に蛇足ですが、明治時代へ入って7~8月は床を出すのが定着した頃は、鴨川の右岸、左岸両方へ床が出ていたといいます。両岸は高床式の床、砂洲は床机、三条大橋の下には河原から張り出した床が出ていたようです。 明治27年(1894年)の鴨川運河開削や大正4年(1915年)の京阪電車鴨東線の延伸などにより、左岸(東側)の床が姿を消し、大正時代には治水工事のため床机が禁止され、その工事で禊川ができました。

横 井 康 和      


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