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(2018年12月)          


Ship of Fools
How a Selfish Ruling Class is Bringing
America to the Brink of Revolution
シップ・オブ・フールズ

by Tucker Carlson


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 著者のタッカー・カールソンはアメリカで人気のTV番組「フォックス・ニュース」のスターであり、アメリカの支配階級が大衆をどう駄目にしたか、彼特有のユーモアと毒舌の効いた政治的解説で知られています。本著「シップ・オブ・フールズ(愚か者の船)」では、いかにして利己的な支配階級がアメリカを革命の危機へさらすのか、カールソンは国の大半が荒廃しているいっぽうで、力と富が想像を超えて成長した新しいアメリカのエリートについて真実を伝えています。一部は安倍政権の日本と通じるところもある問題です。

 アメリカを運営している人達の間で、そういった状況が今も続いています。彼らは自家用ジェット機で移動し、自分が所有する山でスキーをし、スタンドから遠く離れたスカイボックスでスポーツを観戦しているのです。彼らは一般大衆へ全面的な軽蔑心を抱いています。彼らは私企業がコングロマリットへ成長するのと同じようにアメリカという国を見ており、そうすると失敗して利益を上げられなくなった者は消えてゆくしかありません。

 本著でカールソンは、我々の乗っている船がオーバーロードだと激しく批評し、伝統的なリベラルは消えてしまったと書いています。心配そうな顔でパチュリ(香油)を匂わせながらクジラに気をもみ、自由な発言を擁護していた連中が、政権の煙幕の背後にある厳しい経済問題を隠しているグローバル主義者と取って代わりました。彼らはあなたへトランスジェンダーのバスルームについて一席ぶちながら、あなたの仕事を外注します。左翼と右翼が、もはやアメリカで意味のあるカテゴリーではなくなり、現状から恩恵を受ける人と、そうでない人との間に裂け目があるとカールソンは指摘します。

 彼は、我々のリーダーたちが馬鹿者であり、彼らは沈没船の船長であることに気づいていないと結論づけているのです。ドナルド・トランプが多くの点で魅力的でなく、彼はそれを隠さず、有権者もそれを知っていました。ヒラリー・クリントン候補と民主党だけでなく、ブッシュ家とその後援者、そして共和党指導部全体が、ヘッジファンド・マネジャーやメディア大手企業、ハリウッドのリーダーやシンクタンクと一緒になってオプションが悪化したと結論づけ、2016年秋の世界を創り出したすべての責任者・・・・・・トランプは下品で無知かもしれませんが、彼はアメリカの指導者たちが作り出した多くの災害へ責任はありません。

 トランプが耳を傾ける可能性もありました。時には彼が有権者は何を考えているか興味があると思えながら、じっさいは明らかにそうでなかったと今ならわかります。そういった背景をカールソンは問題ごとで核となる部分を切り詰め、簡潔な説明を加えてゆくのです。彼がTVで話すごとく、本著は会話のリズムで書かれています。彼はトランプの出現について何百万という言葉を2つの文節へ凝縮しています。「国は戦争や飢饉や病気から生き延びることができる」。しかし、「彼らは自分の民を軽蔑する指導者から生き残ることができない」と。


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