売れっ子“年増”
先月上旬クランクインした“バディー”で、ゴリラが子供代わりという風変わりな動物愛護者を演じるレネ・ルッソは、42歳という年齢ながら、今ハリウッドでも有数の売れっ子です。“リーサル・ウェポン3”で空手が得意なメル・ギブソンの相棒女性刑事、“シークレット・サービス”でクリント・イーストウッドの後輩エージェント、SF“アウトブレイク”でダスティン・ホフマンと未知のウィルスに挑む女性科学者を演じ、最近のヒット作“ゲット・ショーティー”でジョン・トラボルタを悩ますB級ホラー映画女優役や“ティンカップ”でケビン・コスナーと三角関係に陥る役柄も光っています。ヴォーグ誌モデルの前歴を持ち脚線美と高い頬骨が魅力的のレネーは、ざっくばらんな性格と気取らない人柄が受け、セットでの評判は上々。先日、ショービズ・ピープル(芸能人)のたまり場であるレストラン「アイビー」で見かけた時も、普段着の彼女は隅っこのテーブルで魚のグリルを黙々と食べていました。“ティンカップ”の撮影現場では、彼女よりケビンのほうが長く鏡に見入っていたという噂の信憑性はさておき、脚本監督のロン・シェルトンといえば“さよならゲーム”でスーザン・サランドンを大スターにした実績の持ち主です。この映画でレネも一層飛躍するかもしれません。そして、久しぶりにメル・ギブソンと共演する次作は、前回の「最新情報」で触れた秋の話題作“身代金"。息子を誘拐される大富豪の妻を彼女がどう演じているのか楽しみですね!
名コンビ、それとも、迷コンビ?
先日、公開間近に迫る“ロング・キス・グッドナイト”の試写を見たところ、6、000万ドルを越すといわれる予算が信じられないひどさでした。やはり巨大な製作予算を注ぎ込んで見事に転けた海賊映画“カット・スロート・アイランド”の主演と監督、ジーナ・デービスとレニー・ハーリン夫婦がまたもやコンビを組んだこのアクション映画、過激な暴力シーンばかり目立ち、多くは期待できません。かつて政府が抱えていた残忍な暗殺者で記憶喪失症状の女性を演じるジーナは、“偶然の旅行者”でアカデミー賞にノミネートされ、“セルマ&ルイーズ”で確固たるスターの座を射止めた実力派の女優。そして、ノルウェー出身の旦那レニーは“ダイハード2”や“クリフハンガー”等のアクション映画で一世を風靡した監督・・・・・・そんな二人だけに、僕自身、連続した不作が非常に残念な思いです。初心へ帰り、彼らの才能を生かした傑作を作ってくれることを祈ります。ただ、ジーナの過去を調査する探偵役を演じるサミュエル・ジャクソン("パルプ・フィクション")の演技はなかなかなもので、その印象的な存在感が光っていました。
シガー天国
ビバリーヒルズにある葉巻愛好家のためプライベート・クラブ「グランド・ハバナ・ルーム」がオープンして1年足らず、その入会金2、000ドルと葉巻を適度な湿度で保管する「Humidors」の月間管理費300ドルという庶民からかけ離れた値段ゆえ、映画スター中心の社交場となっています。すでに450人のメンバーシップは売りつくし、今後、ニューヨーク、サンフランシスコ、ラスベガスなどへ進出する予定だそうです。メンバーには現在、アーノルド・シュワルツェネッガー、メル・ギブソン、ジャック・ニコルソン、アンディー・ガルシアと、映画界きっての葉巻愛好家をはじめ、ウッピー・ゴールドバーグやマドンナのような女性スモーカーもいます。ちなみに、雑誌「シガー・アフェクショナード(葉巻愛好家)」今月号の表紙では、なんとデミー・ムーアが太い葉巻をくわえていました。俗世間を煙に巻くがごとく、一本100ドルのキューバ産シガーをうまそうに口揺らせるスターたち!・・・・・・このクラブのオーナーは“逃亡者”や“バッドボーイズ”の名脇役ジョーイ・パントリアーノで、彼の人脈が成功している本当の理由かも?
クールなベテラン俳優
左からそれぞれ“タクシードライバー"、"レイジング・ブル"、"ケープ・フィア"、"カジノ”からの一場面
公開中の“ファン“で、野球のスーパースターを脅迫する狂気のファンを熱演している、僕の大好きな俳優ロバート・デ・ニーロは、この役作りのため精神異常犯罪のエキスパート、ギャビン・デ・ベッカー氏と数週間を過ごしたそうです。氏のロサンゼルス事務所で陣取ったデ・ニーロは、昔マイケル・J・フォックス("バック・トゥー・ザ・フューチャー")へ6,000通もの脅迫状を送った女性犯から、有名スターをつけ狙う何千人という犯人の警察ファイルすべてを読んだばかりでなく、ありとあらゆる尋問テープを隈無く見る熱心さ。加えて、ナイフのセールスマンという役柄なので、本物のナイフ行商人とも時を過ごし、とうとう複雑な犯罪心理のベーシックを把握した結果、ベッカー氏をして「実際にわが事務所で働けるくらいの能力者」と言わしめたほどです。役に成りきることで有名なデ・ニーロが“レイジング・ブル”でボクサーの一生を演じた時は、まず往年のシーンを撮るため肥満した肉体作り、その後全盛期のボクサーの体へトレーニングで戻しています。“グッド・フェローズ”や“カジノ”でマフィア役を演じた時なら、本物のギャングと行動を共にして彼らの話し方やボディーアクションを学び、あげくの果ては映画のためマフィア行きつけの店で絹のストッキング24足を買いつけたのが話題となりました。これらの映画での演技同様、“ケープ・フィア”での入れ墨をした鋼のような体つきの残忍な殺人犯役なども忘れがたいのですが、やはり突出しているのは“タクシードライバー”と“ゴッドファーザー2”のパフォーマンスです。映画史に残る名演技だといえるでしょう。なお、明後日公開される“スリーパーズ”が彼の次作となり、この映画を取り上げたTV番組のインタビュー中、デ・ニーロについて聞かれた主演のブラッド・ピットはニッコリ笑い、「いや〜、彼が演技をしているのを見ているだけで楽しいね。あきないよ!」・・・・・・ピットもまた、僕同様“ファン”の1人のようです。
イージー・マネー?
現在公開中のスリラー“エクストリーム・メジャーズ”で神経外科医を演じるジーン・ハックマンは、役ばかりでなくギャラも権威ある医者なみの稼ぎようです。通常のギャラが600万ドルのハックマン、買春(?)スキャンダルのお騒がせ男ヒュー・グラント主演のこの作品へ400万ドルで出演したとはいえ、撮影期間が3週間で登場するシーンはたった22分の超短縮スケジュールであるばかりか、登場シーンをいっさいカットしないという役者冥利に尽きる好条件なのです。計算してみると、出演時間1分につき18万ドルの稼ぎとなり、1週間あたりの出演料は133万ドルの荒稼ぎぶり。ヒューの婚約者で「エステーラーダ」の専属モデル、エリザベス・ハーリーがプロデュースしたこの作品、病院の怖い一面を描いたなかなか面白い映画に仕上がっています。ハリウッドきっての働き者といわれるベテラン俳優ハックマンですが、仕事のオフは日本人の奥様とニューメキシコ州サンタフェで過ごすボクシング大好き人間と、私生活でもしっかり人生をエンジョイしているもよう。なお、“エクストリーム・・・”と比べ出演時間や撮影期間がずっと長い彼の次作“処刑室”も数日前に公開され、その渋い演技が評判です。
(1996年10月16日)
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