映画とリメイク


 いわゆる「リメイク版」といっても、かつてのヒット映画を作り直すパターンと、その続編のパターンと2通りがある。どちらにせよ、ハリウッドでは昔から企画の定番だ。そのリメイク版も、最近どういうわけか'80年代の焼き直しや続編が多い。たとえば日本で公開されたばかりのサム・ワーシントン主演作「タイタンの戦い」は1981年度の同名作のリメイク版だし、1982年度の話題作「トロン」の続編「トロン:レガシー」が今年(2010年)の12月17日に全米公開される。

 勇者ペルセウスと王女アンドロメダの物語である前者は、4月末日現在リメイク版が公開されている2作のうちの1作で、じっさい見てみると、オリジナル版より面白くない。主演は「アバター(2010年)」で脚光を浴びたワーシントン、やはり「アバター」で注目された新世代の3D化と、話題ばかりが先行した感がある。オールスター・キャストと特撮で注目されたオリジナル版とて、いま見ると古さは否めないが、さすが「シンドバッド・シリーズ」の製作者チャールズ・H・シニアと特撮レイ・ハリーハウゼンのコンビだけのことはあり、妙なインパクトを持つ。

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「タイタンの戦い」
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「トロン」とその続編

 いっぽう、「トロン」の新作がどのような仕上がりとなるかは見てのお楽しみだが、こちらは続編なのでオリジナルと同じくジェフ・ブリッジーズが主人公のプログラマー、ケヴィン・フリン役を演じる。続編ではフリンの息子サム(ギャレット・ヘドランド)が失踪した父親を捜し求め、かつて父親のプログラムしたコンピュータ・ゲームの世界へ入ってゆく。そこでサムは過去25年間暮らしていた父親を見つけるのだが・・・・・・この続編は言うまでもなくオリジナルを遥かに上回るCG(コンピュータ・グラフック)が期待できるばかりでなく、2Dと3D、そしてIMAXの3Dで全米公開される予定だ。

 オリジナル「トロン」から2年後の1984年、この年の映画はなんとリメイク版4本が年内に公開される。まずは第3次世界大戦下のアメリカが舞台となったパトリック・スウェイジ、リー・トンプソン、チャーリー・シーン主演作「若き勇者たち」で、ジョッシュ・ハッチャーソン、ジョッシュ・ペック、エイドリアンヌ・パリッキ、クリス・ヘムスワース主演のリメイク版は敵国がオリジナルのソ連から中国へ変更され、11月24日全米公開の予定。続いてはケヴィン・ベーコン主演作「フットルース」で、6月18日の公開を予定しながらキャスティングなどの問題で、それが実現するかどうか怪しい。

 1984年度作のリメイク版4本の中で次(6月11日)に全米公開される「ベスト・キッド」のリメイク版は、かつてパット・モリタの演じた空手教師をジャッキー・チャンが演じる他、主役のベスト・キッド役へはウィル・スミスの息子ジェイデンが起用され、彼のデビュー作ということで注目されている。正確にはリメイク版というよりシリーズ4作目で、タラジ・P・ヘンソン演じる非婚の母親が若い息子を連れて中国へ移住し、カンフーの教師と出会うストーリーだ。聞くところでは、背景となる中国の風景がなかなか印象的だという。

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「ベスト・キッド」
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「エルム街の悪夢」

 4本のうち残る「エルム街の悪夢」のリメイク版は、先の「タイタンの戦い」に次いで先月末(4月30日)全米公開されたばかりだが、はっきり言って「タイタンの戦い」のリメイク版よりもっと面白くない。オリジナル版はジョニー・デップやヘザー・ランゲンカンプ、そしてフレディ・クルーガー役を演じるロバート・イングランドといったキャスティングも然ることながら、斬新なストーリーで大ヒットとなり、引き続き「エルム街の悪夢2/フレディの復讐(1985年)」、「エルム街の悪夢3/惨劇の館(1987年)」、「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃(1988年)」、「エルム街の悪夢5/ザ・ドリームチャイルド(1989年)」、「エルム街の悪夢/ザ・ファイナルナイトメア(1991年)」、「エルム街の悪夢/ザ・リアルナイトメア(1994年)」が製作された。

 製作スタジオのワーナーブラザーズとしては、ここらで原点へ戻り、改めてヒットを飛ばしたかったのだろう。「トワイライト〜初恋〜(2008年)」や「ニュームーン/トワイライト・サーガ(2009年)」のカレン・ラッツ他、ルーニーマラ、ケイティー・キャシディ、そしてクルーガー役へアール・ハーレイを起用、リフレッシュを図ったが、現実はそう甘くなかったようだ。

 1984年から3年経った1987年にヒットしたのが「ウォール街」で、その続編は当初4月の予定だったのが5ケ月延びて9月24日に全米公開される。早くから流れている予告編は、1作目で刑務所へ入ったゴードン・ゲッコ(マイケル・ダグラス)が出所するところで始まり、可笑しいのは服役中、保管されていた私物を受け取るシーンだ。カルティエの腕時計と共に返される携帯電話、わずか四半世紀前、まだ携帯電話が珍しかった時代の遺物でやたら大きい。そして出所したゲッコと絡むのは、1作目のチャーリー・シーンと替わってシャイア・ラブーフ、また彼のガールフレンドでゲッコの娘をキャリー・マリガンが演じる。1作目同様オリヴァー・ストーンがメガホンと取り、かなりいい線まで行くだろう。

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「ウォール街」とその続編
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「特攻野郎Aチーム」

 ここで、'80年代のTV番組のリメイク版へも目を向けてみたい。当時ヒットした番組の中で「特攻野郎Aチーム(1983年〜)」はベトナム戦争の退役軍人4人が主人公の、なかなかユニークな企画だった。顔ぶれは、ジョージ・ペパード演じるチームのリーダー格で変装が得意な「ハンニバル」ことジョン・スミス大佐、ドワイト・シュルツ演じる飛ぶものなら何でも操縦する「マドック」、ダーク・ベネディクト演じるプレイボーイの「フェイス(イケメン)」ことテンプルトン・ペック、ミスターT演じる怪力男「B・A」、以上の4人である。

 6月11日の全米公開を予定されているリメイク版「特攻野郎Aチーム」では、これら4人のキャラクターをリアム・ニーサム、「第9地区(2009年)」で注目されたシャールト・コプリー、ブラッドリー・クーパー、クイントン・"ランペイジ"・ジャクソンがそれぞれ演じており、彼らはベトナム戦争でなくイラク戦争の退役軍人という設定だ。予告編を見る限り、オリジナルのキャラクターをしっかりと受け継ぎ、そこへジェシカ・ビールやパトリック・ウィルソン他が絡む。

 '80年代のヒットTV番組といえば、公開は来年(2011年)以降だがまだあと2本企画されている。1本は「スマーフ(1981年〜)」で、もう1本はジョニー・デップの実質的なデビュー作ともいえる「21・ジャンプ・ストリート(1987年〜)」のリメイク版だ。前者が来年8月3日、後者は8月5日の全米公開を予定していたのが2012年の冬へ延期された。「21・ジャンプ・ストリート」のリメイク版では「スーパーバッド(2007年)」のジョナ・ヒルが出演する他、ビル自身、脚本にも共著者として係わっている。

 しかし、ハリウッドでこれだけ'80年代のリメイク版が企画されているというのは、いったいどういう意味なのであろうか? よほど新しいネタがないのであろうか? じっさい、「タイタンの戦い」や「エルム街の悪夢」のリメイク版を見ると、ネタ切れとしか思えない。同じ資本を投下するなら、なぜ新しい企画へ・・・・・・という疑問は浮かぶ。願わくば、これから続々と公開されるリメイク版が、ただただ観客を楽しませてくれるよう!

横 井 康 和      


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