iPad登場!
米アップル社は先月(1月)27日、カリフォルニア州サンフランシスコ市でタブレット型パソコン「iPad(写真右)」を発表しました。ディスプレイに9.7インチ、1024×768ドットのマルチタッチ対応スクリーンを採用し、重さが約1.5ポンド(約680g)、薄さはわずか0.5インチ(約1.3cm)の小型軽量PCです。バッテリー駆動時間がおよそ10時間と、外出先での一日の利用にもじゅうぶん耐えられます。
iPadを持つスティーブ・ジョブズ一見、大型版の「iPodタッチ」ともいえそうなこのiPadは、内蔵メモリの容量で価格が異なり、Wi-Fi版は16GBのフラッシュメモリー搭載タイプで499ドル(約45,000千円)、32GBで599ドル(約54,000円)、64GBで699ドル(約63,000円)と3種類ある他、AT&Tの提供によるオンライン・ストレージが利用できるWi-Fi+3G版も発売されます。こちらは4月発売の予定で、16GBで629ドル(約57,000円)、32GBで729ドル(約66,000円)、64GBで829ドル(約75,000円)と、かなり割高になるようです。で、このiPad、かつてiPodが発売されてみると内容そのものは結局ウォークマンと変わらなかったように、これといった新しい機能がフィーチャーされているわけではありません。
つまり、iPodがあれだけのヒット商品になった決め手は、簡単(シンプル)な操作も然ることながら、多くの曲を安くでダウンロード出来る販売システムでした。ハードだけの製品であるウォークマンと比べ、ソフトと一体となったのがiPodです。もし音質だけで選ぶとして、かつ音楽ソースは自分の持っているCDだけというのであれば、むしろウォークマンのほうが勝っている部分も多々あります。同じく、アップル社のノート・パソコン「MacBook Pro」のディスプレイ部分だけを取り出したようなiPadも、今後の成功はハードよりむしろソフトの部分が決め手となるでしょう。
電子書籍閲覧アプリケーション「iBooks」やiPhone用アプリケーションなど、iPadでは様々なアプリケーション(写真左)が利用できる中でも、 時代の流れの中でもっとも注目されるのはiBooksです。これがアップル社の思惑通り行けば、電子書籍の閲覧アプリケーションとして確固たる地位を占める可能性を秘めています。その他、サファリによるウェブ・サイトの閲覧やメール、写真の管理、動画の再生、HD版YouTubeの閲覧、iPod機能、Appストア、iTunesストア、3Dゲーム、カレンダー、地図、ノート、スポットライトによる検索などを大画面で行えます。
様々なアプリケーション ユーザーインターフェース(UI)はiPhoneの操作体系に近いものが採用されており、タッチパネル上へ大きなQWERTYキーボードの表示も可能です。アドレス帳は手帳を開いたようなデザインであるなど、大画面とタッチパネルを活かしたUIで、本体のOSが表示言語、キーボードともに日本語をサポートしているのは言うまでもありません。また、AppストアからダウンロードしたすべてのiPhone用アプリケーションを利用できると書きましたが、それらのiPhone用アプリケーションは拡大表示するモードが用意されています。iPad向けの「iWork」では、オフィス文書をタッチ操作で編集閲覧でき、「Pages(ワープロ)」、「Keynote(プレゼンテーション)」、「Numbers(表計算)」と3つのアプリケーションをAppストアからダウンロードすると、それぞれ9.99ドル(約9,000円)です。
USBを使ってパソコンと接続すれば、パソコン版のiTunesと同期が可能で、写真や動画、アドレス帳、カレンダーなどを同期できます。このほか、別売りのオプションとしては傾きを固定して設置できるキーボード付のスタンド「iPadキーボードドック(写真右上)」があり、同スタンドを利用すればiPadを充電しながら(バーチャルのQWERTYキーボードでなく)ハードウェアのキーボードも利用可能です。また、ブックカバーのように全体を覆うケース「iPadケース(写真右下)」もあり、同ケースではカバー部分を折り返すことで横向きのスタンドとしても利用できます。
キーボードドックを接続
スタンドにもなるiPadケースさて、ここで先のiBooksについて、もう少し詳しく触れてみましょう。現在、ペンギン、ハーパーコリンズ、サイモン&シャスター、マクミラン、ハシェット・ブック・グループの米国大手出版社5社が参加することが正式発表されている他、多数の出版社がiBooksへ対応する電子書籍を提供する予定で、新たに用意される「iBookストア」からそれらを購入しダウンロードする仕組みです。購入した電子書籍は書店の本棚のように表紙を並べて表示したり、画面全体へページを表示し電子書籍用端末のように閲覧できるほか、表示する際のフォントも選択可能になっています。
デモ画面の書籍の価格設定は11冊中6冊が12.99ドル(約1,200円弱)と、アマゾンの電子書籍「キンドル・ストア」の11.99ドル(約1,100円弱)よりやや割高の設定です。ただし、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリスト・ノンフィクション部門に掲載された「インペリアル・クルーズ」は、iBookストアが9.99ドル(約900円)に対し、アマゾン・キンドル・ストアは11.99ドル(約1,100円弱)と、iBookストアの方が安くなっています。また、iBookストアで一番高かったのは同リスト・フィクション部門の「アンダー・ザ・ドーム」で14.99ドル(約1,350円)、一番安かったのが「ラブリー・ボーン」の4.99ドル(約450円)でした。
あとは「フリー」という項目もあり、「シャーロック・ホームズ」、「ドラキュラ」、「不思議の国のアリス」、「ユリシーズ」、「宝島」などが無料でダウンロードできます。いずれにせよ、iBookストアはまだ公開されておらず、これらの価格もデモ画面に表示された参考価格にすぎないかもしれません。今後、競争が激しくなれば、価格も流動的に変わることでしょう。
最後に細かいところでカメラは非搭載です。最近のウェブ・ページで欠かせないフラッシュも使えません。スティーブ・ジョブズが自ら説明したところでは、フラッシュを使うとスピードが犠牲となりiPadの機能を大幅に損なうとのことです。そういうこともあってか、先月(1月)16日とiPadの発表された27日、米ショッピングサイト、レトリヴォの調査した結果では、同製品を購入する気のない人が5割もいます。16日の時点では、Appleタブレットを知っている人が約半数で、「購入したい」は3パーセント、「興味はあるが様子を見る」は19パーセント、「買う気がない」は26パーセントでした。それが、発表後はiPadを知っている人が8割超に増え、「購入したい」は9パーセント、「興味はあるがもっと情報を聞いてから」は21パーセント、「買う気がない」は52パーセントと大幅に増えています。
さあ、あなたは?