鮎の季節


 5月から6月にかけて父親の法事で帰国したところ、日本ではちょうど鮎の季節到来、そして鮎といえば、やはり京都か滋賀です。京都の場合、奥嵯峨野の鳥居本、愛宕山参りの道すがら、洛中へ入る旅人が長旅で汚れ痛んだ草鞋を替え、腹ごしらえをする所として鮎で有名な2軒の料理屋があります。「つたや」と「平野屋」、京都の人は「あんた、どっち行ったはります?」と訊ね合うのが常です。どちらも数百年の茅葺の田舎家であり、お代はつたやのほうがやや張るものの、両店とも味はぴか一といえます。

 また、滋賀へ行くなら、朽木の「比良山荘」で間違いなくいい小鮎が食べられるでしょう。近頃は琵琶湖遡上の小鮎が美味く、個人的にはせいぜい三〜四寸までのパクっと頭からかぶりつけるくらいの大きさが昔ながらの味わいで好きです。なお、梅雨の間はちょっとお休みして、梅雨が明けて濁り水も清くなり、川底へは日光が差し込み苔が生え、それを食った鮎はまた一段と美味です(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

鮎の宿 つたや
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■鮎の宿 つたや

www.ayunoyado-tsutaya.com
京都市右京区嵯峨鳥居本仙翁町17
075-861-0649

 つたやは嵯峨鳥居本の創業400年に渡る老舗料亭で、京都から嵯峨野線の「嵯峨嵐山」駅で降り、有名な観光地「嵐山」を背にして奥嵯峨の清滝へ向かう途中、化野念仏寺の少し先へ歩くこと約30分、朱色の大きな鳥居の手前がそうです。

 江戸時代初期の頃より、京都奥嵯峨の鳥居本の地で「伊勢に七度、熊野に三度、愛宕さんへは月参り」で世に知られている「愛宕山」の麓で愛宕山詣りの茶店としてその産声を上げ、当代で13代目を数えます。ここでのお料理の特徴として「季節の食材をその季節で頂く」、つまり毎日異なる食材を仕入れてくるので、決まったメニューがほとんどありません。春は筍、夏は鮎、秋は松茸、冬は湯豆腐と、その季節でとれる最高の食材を調理してのもてなしが売り物です。

 香魚といわれる鮎独特の香りは天然のモノでしか味わえません。ここでは由良川、保津川で採れた天然の鮎を木桶で活かし、それを料理していただきます。塩焼き、天ぷらの鮎をがぶりと腹側から頂くと、鮎が食べた苔の緑まで鮮やかです。鮎を食べるとその川の香りがします。

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 写真は左から「厨房(#1)」、「鮎のお造り(#2)」、「鮎の塩焼き(#3)」、「鮎の唐揚げ(#4)」、「鮎の雑炊(#5)」。

鮎茶屋 平野屋
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■鮎茶屋 平野屋

www13.ocn.ne.jp/~a0359
京都市右京区嵯峨鳥居本仙翁町16
075-861-0359

 つたやと同じ奥嵯峨にある平野屋は、やはり江戸時代初頃より茶店として、また鮎の問屋を営んできました。夏の鮎料理、秋の裏山でとれる松茸、冬のぼたん鍋、鹿、鯉こく鍋、そして春の山菜、筍、湯どうふなど、つたやと同じ季節毎のメニューのパターンながら、それぞれ持ち味が違います。

 愛宕山神社は古くより火の要慎の神として崇拝され、大勢の参詣者で賑わっており、400年前から一の鳥居の茶屋として寄り添うように歴史を重ねてきたのが、この平野屋です。参詣者が鳥居をくぐって愛宕山頂の神社へ向かう起点となるため、多くの参詣者にとって平野屋は愛宕名物「志んこ」とお茶で一息入れてから頂上をめざす格好の茶屋でした。また、鮎問屋を商い、あまごなどの川魚が参詣者の人気を博したといいいます。

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 写真は左から「入口(#6)」、「かまど(#7)」、「鮎料理各種(#8)」、「鮎雑炊(#9)」、「志んこ(#10)」。

山の辺料理 比良山荘
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■山の辺料理 比良山荘

www.hirasansou.com
大津市葛川坊村町94
077-599-2058

 京都と若狭を結ぶ街道の比叡山のふもとで営む山の辺料理、葛川坊村にあるこの料理屋は、もともと比良山へ上る登山者の山荘として開業した宿でした。京の隠れ宿ともいえるロケーションで、地元で採れる四季折々の旬菜が味わえます。

 比叡山延暦寺の回廊行の奥の院である重要文化財「地主神社」と「明王院」の門前にあるため、自然とこの地の歴史や文化へ触れやすい土地柄であり、密教趣深い雰囲気や比良山と清流、安曇川に囲まれた立地条件は、否が応でも気分を高めてくれます。また、山荘の目の前を流れる安曇川は、琵琶湖から遡上する天然鮎の宝庫です。

 岩苔や川藻を餌として育ち、6月の解禁と同時、我々の下へとやって来る鮎は、ちょうど土用の丑前後が本当の旬だと言われています。さあ、もうすぐですね!

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 写真は左から「向こう付け(#11)」、「鯉、鹿肉、鰻のお造り(#12)」、「琵琶湖の本もろこ(#13)」、「鮎ごはん(#14)」、「キノコのお椀(#15)」。

 これらのお店の他にも、たとえば私の愛用する「祇園なか原」といった活きた鮎を料理してくれるお店が、京都には数多くあります。また、京都や滋賀の名のある料亭なら、夏の間、鮎料理が出てくるのまずは間違いないでしょう。そこまで手を広げるときりがないので、今回は代表して以上の3軒だけを紹介させていただきました。

横 井 康 和      


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