スーパー・シェフ
アメリカではフード・チャンネルなどの影響もあり、スーパーシェフがもてはやされ始めて久しくなります。そのスーパーシェフで有名なのは、なんといってもウルフギャング・パックですが、味のほうは「Ma Maison」や「Spago」で終わっており、缶詰のスープなどへ手を広げたあたりからどうしようもありません。その点、本当の意味でスーパーシェフといえば、やはりトーマス・ケラーでしょう。
彼がナパ・ヴァレーの辺鄙な場所で「The French Laundry」をオープンしたのは1994年のことで、以来、その名が全米に知れ渡り、もっとも予約を取るのが難しいレストランとなりました。2ケ月前から予約を受け付けているものの、すんなり取れれば幸運といえます。その後、よりカジュアルな「Bouchen」をオープンした後、The French Laundryのニューヨーク版ともいえる「Per Se」を出すあたりから、自らすべての店を手がけることは不可能となりましたが、それまで育ててきた信頼のできるシェフへ任せた上で、しっかりと維持しているところはさすがです(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。
■The French Laundry
The French Laundry
www.frenchlaundry.com
6640 Washington St, Yountville
707-944-2380フランスを旅しながら田舎の3ツ星レストランに魅せられたケラーが、アメリカへ戻って最初にオープンしたレストランが、このThe French Laundryです。現在も基本パターンはケラーの創作したメニューが中心となっており、シェフはデヴィッド・ブリーデンが任されています。
'90年代はアメリカ人の食生活が一大変化を遂げた過渡期であったと言われており、The French Laundryのオープンはその時期というのが何やら暗示的です。もちろん、それ以前からMa Maisonのような本格的なフレンチ・レストランはありましたが、それらは一部の地域社会の需要へ応えた存在でした。したがって、全米から予約が殺到することはありませんでした。
とにかくフランス料理がお好きな日本人で西海岸を訪れる機会のある方は、ぜひ2ケ月前から予約を取って旅程の中へThe French Laundryを含まれるようお薦めします。サンフランシスコからレンタカーを借りれば、ナパ・ヴァレーはすぐです。そして、前後してワイナリーを見学されるのも一考でしょう。
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#5写真は左から「オイスターとパール・タピオカ(#1)」、「大西洋産のタラとビートとリーク(#2)」、「ダンジネス・クラブのポリッジとブラック・トリュフ(#3)」、「黒豚(#4)」、「リブアイ・ステーキ(#5)」。これらはコース料理のほんの一部です。
■Per Se
Per Se
www.perseny.com
10 Columbus Cir., New York
212-823-9335The French Laundryをニューヨークへ出すという話があった時、ケラーはかなり悩んだようです。もう1つのフラッグシップともいえる新しい店の場合、The French Laundryのあるヤントビルにオープンした2軒目のBouchonと事情が違います。Bouchonは同じ地域で一クラス下のレストランということもあり、The French Laundryへ影響しませんでしたが、大陸の反対側のニューヨークに全米で最高クラスのレストランを出すとなれば、自分1人の手には負えません。結局、出すと決めたものの、名前も「The French Laundry East」でなくPer Seと新しく付けたのです。
この店もThe French Laundry同様、基本的なメニューはケラーが創作し、任されているシェフはエリ・カイメーです。そしてケラー自身、すべての店を看るため西海岸と東海岸を行ったり来たりしています。
余談ではありますが、セントラル・パークと面したタイム・ワーナー・センターへこのPer Seをオープンする際、ビバリーヒルズの「Sushi-Ko」(今の「Urasawa」)を気に入っていたケラーは、オーナー・シェフのMasa Takayamaをニューヨークへ引っ越すよう口説いて、同じタイム・ワーナー・センターの中に全米で一番高額といわれるレストラン「Masa」がオープンしました。
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#10写真は左から「アン肝とキャビア(#6)」、「トリッパ・ピカタ(#7)」、「バター・ポーチド・ノバ・スコティア・ロブスター(#8)」、「ローステッド・クエル(#9)」、「ペコリノ・ペパト(#10)」。やはり、コース料理から一部を拾ってみました。
■Bouchon
Bouchon
bouchonbistro.com
6534 Washington St., Yountville
707-944-8037ケラーがThe French Laundryに続いてオープンしたのがBouchonで、The French Laundryよりカジュアルな食事を楽しめます。また、カジュアルであるがゆえ、The French LaundryをニューヨークではPer Seという新しいコンセプトで出したのと違って、Bouchonの場合、ラスベガスやビバリーヒルズへも同名で拡張してきました。
ただ、Bouchonがカジュアルというのは、あくまでもThe French Laundryと比較した上の話であって、ここでも本格的なフランス料理を出しています。The French Laundryまでいかないにしても、じっさいミシュランが1ツ星の格付けをしているのです。また、姉妹店の「Bouchon Bakery」で焼いたパンは、この店ばかりでなくThe French Laundryのコース料理の中でも出てきます。
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#15写真は左から「フレンチ・オニオン・スープ(#11)」、「生牡蠣(#12)」、「蟹とロブスター・サラダ(#13)」、「ローステッド・チキン(#14)」、「カラス貝のワイン蒸し(#15)」。ここでは先の2軒と違って単品で注文できます。
以上3軒の他、ケラーのレストランはThe French LaundryやBouchonと同じヤントビルにもう1軒「Ad Hoc」もありますが、そちらは彼のレストラン・グループ全体のホームページをご覧ください。
横 井 康 和