すっ、すっ、寿司


 サンフランシスコのロック・バンド「チューブス」が「すっ、すっ、寿司・・・」と歌ってヒットしたのは1981年のことでした。その当時でさえロサンゼルスに寿司屋が軽く100軒以上あったぐらい、寿司は大都会を中心としてアメリカ人の食生活へすっかり浸透しています。ただ、今や当時の何倍も増えている寿司屋ながら、納得のゆく店は、それほど多くありません。そこで、「肉を食べるなら・・・」に続いて、今回ご紹介するのは納得のゆく寿司屋です。とりあえず、ロサンゼルの店2軒と京都の店1軒を選んでみました(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

Sushi Zo
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■Sushi Zo

9824 National Blvd., Los Angeles
310-842-3977

 この「Sushi Zo」は「おまかせ」のみで、わがままはいっさい聞いてくれません。したがって、私のようなすぐメニューにないものを頼みたがる人間の場合は、やや納得できない時があります。それでも寿司が好きなら、ぜひお薦めします。オープンは2006年で、大阪出身のオーナー・シェフKeizo Seki(右の写真の左側)が店名の由来です。

 いったん座ると、まず嫌いなものがあるかどうか聞かれます。とりあえず嫌いな物はないとして、くまもと牡蠣が1個無愛想に出てくるや、食べ終わるタイミングを見計らってマグロの赤身(写真)→生うにで合えたイカ(写真)→アワビとここまでは毎回同じです。それからいよいよ寿司が登場します。その日のネタ次第で内容は変わるとしても、典型的なパターンだと平目→帆立→アジ(写真)→鰹(かつお)→ハマチ→トロ→シマアジ→甘海老→金目鯛→メジマグロ→カンパチ→アン肝→オノ→サユリ(写真)→ビンナガ→鮭→青柳→生うにとイクラ→縁側(写真)→真鯛→穴子→トロ手巻き→クロダイ→タコと出てきます。

 そして、最後は蟹(かタラコ)の手巻きの後、卵で締めです。もちろん途中でお腹が一杯になればストップをかければいいし、足らなければ追加もできます。味噌汁はアメリカ人の客だと初っ端から出てきますが、日本人だと最後です(頼めば初っ端から出してくれます)。口直しの柚子ジュースは、もう少し欲しいところです。あと、ここの醤油、しっかりと出汁を取ってあるのですが、その出汁加減は絶妙です。もっとも、ほとんどの寿司に味がついているので、あまり使わないとはいえ!

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#1
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#2
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#3
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#4
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#5

 写真は左から「マグロの赤身(#1)」、「生うにで合えたイカ(#2)」、「アジ(#3)」、「サユリ(#4)」、「縁側(#5)」、どれも小振りで、寿司は温かいしゃりを使っています。

Urasawa(浦澤)
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■Urasawa(浦澤)

218 N. Rodeo Dr., Beverly Hills
310-247-8933

 ロサンゼルスからビバリーヒルズへ引っ越してニューヨークへ移る前の「Shushi-Ko」があったところに新しく(といっても随分経ちますが)出来た店で、基本的に座って1人300ドルだった「Shushi-Ko」と寿司懐石のパターンは変わりません。Masa Takayamaが「Sushi-ko」を閉めてニューヨークへ移り、タイム・ワーナー・センターに新しい店(「Masa」と「Bar Masa」)を出した後、彼の下で働いていたシェフの「ヒロ」ことHiroyuki Urasawa(写真)がここを引き継ぎ、名前も変わりました。

 店のサイズは小さく、カウンターの9席と4人掛けのテーブルのみで、1晩せいぜい1回転しかしません。したがって、値段のほうもそれなりの覚悟が必要です。2人で食べるとチップ込みで約1,000ドル(10万円コース)、シャンパンを持ち込まない場合は、さらに300ドルほど高くなります。そう、けっして安くはありませんが、やはり行くからには美味いシャンパンを飲みたくなる店です。

 毎回変わる寿司懐石の中身ですが、ある時はトロのタタキ(写真)で始まり、鱧(はも)の南蛮漬け(写真)→イクラを乗せた枝豆豆腐→ボストン産のトロ、九州産の鯛、富山産のカンパチの刺身→松茸の土瓶蒸し→アワビのから揚げ→石焼トロ→佐賀牛→伊勢海老、帆立、鱧(ハモ)、佐賀牛、フォアグラのシャブシャブと出た後、いよいよ寿司へ移ります。トロ→あぶりトロ→カンパチ→鯛→アジ→マグロ→椎茸(写真)→生うに→イカ→みる貝→シマアジ→アジのタタキ(写真)→アワビ→秋刀魚(写真)→ロブスター→ネギトロ→牛刺→穴子が出て、最後は卵です。そしてデザートが梨のジュレ→胡麻アイスクリーム→抹茶→ほうじ茶といった具合です。刺身の次は焼き魚(西京漬け)や天ぷらが出たりすることもあります。

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#6
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#10

 写真は左から「トロのタタキ(#6)」、「鱧(はも)の南蛮漬け(#7)」、「椎茸(#8)」、「アジのタタキ(#9)」、「秋刀魚(#10)」、これらの写真と巻物(ネギトロなど)以外の寿司は、ほとんどがごく普通の形状のにぎりです。

蘭(らん)
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■蘭(らん)

京都府京都市中京区鍋屋町212-6
075-221-0647

 40年前ほどからお漬物の寿司が有名な店で、先代の頃は寿司ネタの大きさが半端なく大きい上、料金も京都屈指の高額店であったのが、代替わりをしてからは寿司ネタの大きさがかなり食べやすいサイズとなり、価格もかなり(といっても相変わらずの高額ではありますが)お手頃になりました。

 塩と酢橘と山葵で食べる「明石産の天然鯛腹身」、脂ののった「カマ下の大トロ」、酢味噌で食べる「宮津産の特大生とり貝」といった刺身(写真)から漬物の寿司(写真)まで、やはりロサンゼルスと一味違います。冬は冬で「津居山蟹」が美味しく、その他「数の子と青味大根」や「はしりの若竹のお椀」といった一品物も、この店ならではの満足感を味わえます。また、京都の寿司屋なので、もちろん鯖寿司(写真)があるとはいえ、ここの場合、なかなかユニークです。

 とにかく、大将へその日のネタのご機嫌伺いをした上で、何を食べるか決めることをお薦めします。寿司のサイズも私のような小振りがお好きな客は、最初からそう言うと小さく握ってもらえるのが有難いところです     早い話、食いしん坊の私は、なるべくいろいろ食べたいだけなのですが     美味しくて、なおかつわがままを聞いてもらえる店は、そうざらにありません。

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#14
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 写真は左から「お通し(#11)」、「鯛、大トロ、とり貝の刺身(#12)」、「鱧(はも)と松茸とじゅん菜のお吸い物(#13)」、「鯖寿司(#14)」、「京漬物の寿司(#15)」、なんといっても最後のお漬物の寿司がここの名物です。

 今回は、ロサンゼルスと京都の寿司屋を3軒紹介してきました。あと、ウェストL・Aの「Jinpachi」をはじめとして何軒かご紹介したい寿司屋が残っているのは、またの機会に譲りたいと思います。それと、料理の内容は少し季節外れなものもありますが、それぞれ食べた時期の違う料理を取り上げた結果ですので、ご了承ください。

横 井 康 和      


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