シネマ・イタリアーノ
ロブ・マーシャル(「シカゴ」)監督作「NINE(2009年)」は映画ファンならたまらないミュージカルですが、中でもケイト・ハドソン(「私だけのハッピー・エンディング」)の歌う「シネマ・イタリアーノ」は印象に残ります。ただ同じイタリアーノでも、食べるのが好きなかたへはシネマよりオステリア(レストラン)のほうが気になるところでしょう。
そのオステリア・イタリアーノならロサンゼルスでは腐るほどあり、納得のゆく料理と気が遠くなりそうなワインのコレクションを誇る最高級のレストランから、そこら中にあるピッツァの出前まで、それこそ「ピンキリ」です。そこで今回は、それらピンキリの中から選りすぐったイタリア・レストラを3軒ご紹介したいと思います(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。
■Angelini Osteria
Angelini Osteria
www.angeliniosteria.com
7313 Beverly Blvd, Los Angeles
323-297-0070ロサンゼルスに数あるイタリア・レストランの中でも、ここほど有名な店はそうありません。2001年10月のオープン以来、オーナー・シェフのジーノ・アンジェリーニが手塩にかけただけあって、いつも満席です。もちろん、この店のオープンへ至るまでには長い道のりがありました。
1953年、イタリアのリミニで生まれたアンジェリーニは14歳でレストラン業界へ入り、23歳で高級ホテル「アンバシアトリ」のキッチンを指揮して以来、イタリア中に彼の名前が知れ渡ります。1995年、ロサンゼルスへ移った彼はダウンタウンにあるマウロ・ヴィンセンティの「Rex U Ristorante」で働いた後、1997年、マウロの未亡人モリーン・ヴィンセンティと共同でブレントウッドの「Vincenti Ristorante」をオープンします。なお、「Rex U」が閉店したいっぽうで、「Vincenti」のほうはアンジェリーニが手を引いた今も健在です。
これは余談ですが、2001年にオープンした直後、テーブルの案内を見ると日曜日は料理教室も開いていました。間もなくその案内がなくなり、何年か経ってマネージャーのリトル・ジーノ(オーナーはビッグ・ジーノ)へ「あの料理教室」がどうなったか聞いてみたら、結局、誰も来なくて実現せずじまいだったとか。しかし、私は結果よりその発想が好きです。その発想こそ、10年以上この店へ通っている理由の1つではないかと思います。
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#5写真は左から「蛸(#1)」、「ブラッタ・チーズと赤カブ(#2)」、「イカ(#3)」、「スズキの塩釜(#4)」、「生ウニ・パスタとニョッキ(#5)」、中でも蛸がお薦めです。
■Capo
Capo
www.caporestaurant.com
1810 Ocean Ave., Santa Monica
310-394-5550サンタモニカの海岸から近いオーシャン通りにポツンと建ったこの店は、うっかりすると見過ごしそうな地味な佇(たたず)まいなのでご注意ください。外観が地味ないっぽうで、薄暗い店内は黒いカーテンの掛かった窓と窓の間へ額縁が並び、木を多用したインテリアと共に暖かい雰囲気を醸し出しています。壁の一面を占めるバーへはずらりと酒瓶が並ぶ他、1,200本以上のワインをストックしているのもこの店の自慢です。
ワインの種類ばかりでなく、メニューの種類も多く、何を頼んでいいか迷った場合、8品で98ドル(約8千円)のテイスティング・メニュー(日本でいうコース)がお手軽でしょう。単品で頼むと、他のイタリア・レストランと比べて、かなり高価な店なので覚悟しておいて下さい。その代わり、味はじゅうぶん納得できます。
オーナー・シェフのブルース・マドラーがこの店をオープンしたのは1999年で、それ以外にも「Cora's Coffee Shoppe」、「Brentwood Restaurant and Lounge」などを経営し、すべてがサンタモニカ方面でありながら、それぞれの持ち味を活かして成功しているようです。なお、1999年は「L・Aスタイル・マガジン」が、その年の「ベスト・ニュー・レストラン」としてこの店を紹介しています。イタリア料理とワインをお好きな方なら、ぜひトライしてみて下さい。
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#10写真は左から「スイート・ホワイト・コーンの冷たいスープ(#6)」、「牡丹海老/スカンピ(#7)」、「シェイブド・アーティチョークとパルミジャーノ・レッジャーノ(#8)」、「ブラッタ・チーズ(#9)」、「カボチャのラビオリ(#10)」です。スープとスカンピが光っています。
■La Piazza
La Piazza
lapiazzaonline.net
189 The Grove Dr., Los Angeles
323-933-5050レストランそのもののクラスからいうと他の2店より劣りますが、「The Grove」というシネプレックスとショッピング・モールの中にあるため、映画を見た帰りに立ち寄れるところは魅力です。まさしく「シネマ・イタリアーノ」といえるでしょう(この「The Grove」がロサンゼルスでもっともセレブの愛用する映画館でもあります)。そして、シェフはイタリアのアドリアティック・コースト出身のジアコモ・ペテナリという若手ながら、腕は確かです。
14歳の時、イタリアでもっとも有名な料理学校「パンツィニ」へ入学したペテナリは、19歳で同校を卒業した翌年ロンドンに移り、ロンドンからバルセロナ、バルセロナからバンコックと修行の旅が続きます。26歳でロサンゼルスへ辿(たど)り着いてからは、「Valentino」のオーナー・シェフの下で4年間働き、今に至るのです。この店の他、系列店であるサンタモニカとハリウッドの「Trastevere Restaurant」でもチーフ・シェフを務めています。
ともあれ、彼の創作するメニューは伝統的なイタリア料理が基本となりながら、その繊細な味加減へイタリア→ロンドン→バルセロナ→バンコック→ロサンゼルスと修行の旅を続けた彼のバックグランドを感じ取れるのです。また、映画の帰りに立ち寄る時はバー・カウンターで食事も済ませますが、バーテンダーはバーテンダーで支配人同様イタリア語で会話をするため、何を話しているのやら?・・・・・・美味しい食事を飲み物さえ提供してくれれば、文句はありません。
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#15写真は左から「レモンでマリネした牡丹海老/スカンピ・カクテル(#11)」、「トマトとブラッタ・チーズ(#12)」、「スピナッチ・ラビオリ(#13)」、「イカ墨パスタとシーフード・ソース(#14)」、「イタリアン・ソーセ−ジ・ピッツァ(#15)」です。スカンピの炙(あぶ)り具合が絶妙な他、この店で試さないといけないのは、なんといってもイカ墨パスタでしょう。
紹介したいイタリア・レストランは、まだまだあります。たとえば、最近「A1 Cucine Italiana」へ名前を変えたばかりの元「Il Buco Restaurant」や、先代の頃から私が愛用している「Marino Ristorante」、そして元「La Brea Bakery」のオーナーがオープンした「Pizzeria Mozza」と「Osteria Mozza」なども、加えるべきかずいぶん迷いました。その結果、それだけロサンゼルスにはイタリア・レストランが多いということを今回は再認識させられた次第です・・・・・・では、ボナペティート!
横 井 康 和