フレンチ・ジャポネ


 イタリアンの次はフレンチ、それも京都の和風フレンチをご紹介したいと思います。100年以上の長い歴史を持つ京都フレンチですが、皇室をはじめ国内外の要人にも愛される伝統的なフランスのコース料理から、京都の美意識と地元ならではの素材を柔軟に取り入れた京風フレンチのアラカルトまで、そのバラエティは幅広いものです。京都フレンチが数ある中で、今回は祇園の「おくむら」と「よねむら」、そして先斗町の「禊川(みそぎがわ)」をご紹介したいと思います(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

祇園おくむら
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■祇園おくむら

www.restaurant-okumura.com/index_gion.html
京都市東山区四条通上ル東側
075-533-2205

 白川南通りと四条通りを結ぶ「切り通し(短い通り)」に純和風の佇まいをみせる「祇園おくむら」、木を主体とした店内はじゅうぶん採光を配慮し、明るく清潔な雰囲気が漂います。オーナーシェフである奥村直樹は、本店「西洋膳所(せいようぜんどころ)おくむら」の父奥村真三のもとで修業を重ね、お箸でいただく京懐石風フレンチの精神も、その父から受け継いだものです。そして、まず木屋町で1号店を開店させた後、地元客へも観光客へも便利なこの祇園を選び、和の食材や調理法を大胆に取り入れた独自の「おまかせフランス懐石」を提供してきました。

 料理は、天然魚介、和牛など厳選した食材のほか、京野菜、鱧やぐじ(甘鯛)、湯葉、じゅん菜など、京都ならではの食材も積極的に用い、バターや生クリームを控えたあっさりとした味わいで、刺身のような一品が出ることもあります。器の選び方や美しい盛り付は定評があり、九谷焼や古伊万里などの骨董、京都の作家をはじめとした現代作家の器へ盛り付けた料理は、皆さんの目と舌をおおいに楽しませてくれることでしょう。

 なお、本店の「西洋膳所(せいようぜんどころ)おくむら」は、お箸でいただける懐石風フレンチの先駆け的存在であり、比叡の山並を間近へ望む郊外型のレストランで、周囲には修学院離宮、詩仙堂、曼殊院などの名刹が点在しています。店内はテーブル席のほか、テラス席やシェフとの会話が楽しめるゆったりとしたカウンター、そして2階にはブライダル・スペースがあり、親子三代で通う常連客も多い京都フレンチの老舗です。また、祇園の「匠(たくみ)奥村」も姉妹店で、座敷にすわって四季折々のフランス懐石を箸で堪能できます。

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#1
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#5

 写真は左から「季節の5種盛り(#1)」、「渡り蟹のフラン(#2)」、「雲丹と白子の創作寿司(#3)」、「真鯛と柿のサラダ(#4)」、「フォアグラのソテー(#5)」、中でも個人的に渡り蟹が好きですね。

祇園よねむら
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■祇園よねむら

r-yonemura.jp
京都市東山区八坂鳥居前下ル清井町481-1
075-533-6699

 「祇園よねむら」のコンセプトは、「京都・東山。八坂神社の南に佇む一軒の町家。門をくぐると、宴の始まり。すっと伸びるカウンターは特等席。立ち上る湯気と香り、躍動する料理人たち。目の前で今、盛り付けられようとする料理。食材の取り合わせ、器のセレクト、そして空間・・・。和とも洋ともカテゴライズできない、シェフ・米村昌泰の感性によるお料理でお客様をお迎えいたします。出会いのものを、ただただ、美味しく、そしてサプライズを込めて。ひと品ひと品に、主のもてなしの心と美意識が詰まっています」と、そのホームページで書かれています。

 オーナーシェフの米村昌泰は1963年京都で生まれ、京都の老舗フレンチ・レストランで10年間勤務した後、1993年に独立して京都木屋町へ「レストランよねむら」をオープン、2001年に現在の場所へ移転しました。2004年には東京銀座へも出店し、私が銀座店を訪れたのはその直後です(任されていた2番のシェフがまだ若く、京都の本店よりは劣りました)。フランス料理とも日本料理とも称される独創的な料理の数々が注目を集め、「ミシュランガイド東京・横浜・鎌倉」と「ミシュランガイド京都・大阪・神戸」の両方に選出されています。

 この「祇園よねむら」ではオリジナル・クッキーもオンライン販売しており、12種類のフレーバーが1缶の中へ収められたオリジナル・キッキーの他、サマー・トリュフ・クッキーはお薦めです。

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 写真は左から「湯葉とサーディン・ミニ・ラタトゥユ(#6)」、「カニ、クリーム・コロッケ、リゾットの三色ソース(#7)」、「仔鴨ロースと冬瓜の炊いたん(#8)」、「フォワグラ、栗、そば粉のブリオッシュ(#9)」、「ブイヤベース、鱧炙り添え(#10)」です。和風だけあって、ご飯もので締めるのですが、先の「おくむら」同様、この店もカレーライスを選択できます。日本とフランスへインドまで加わって、もう大変です。

禊川(みそぎがわ)
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■禊川(みそぎがわ)

www.misogui.jp
京都市中京区先斗町通り三条下ル東側
075-221-2270

 1981年、京都を代表する花街で誕生した「先斗町 禊川」、由緒ある元お茶屋を使った店内は、欄間へ彫られた東山や伏見の風景など風情ある室内装飾が、当時の面影を今に残します。そんな純日本的な佇まいの中で楽しめるのは、新しい食文化のスタイル「フランス会席」です。伝統的なフランス料理の技術で裏打ちされた正統派のフレンチを、和の器を使い表現しています。

 3つのダイニング・エリアからなるうちのメインが「和心」と呼ばれるストレートなカウンター席で、オーソドックスなアラカルトを気軽な割烹感覚でオーダーでき、素材の持ち味を活かした一品を、じっくりと味わえるのはカウンター席ならではの愉しみです。その次が「貴船」と呼ばれる掘りごたつ式のカウンター・エリアで、カウンター内部は掘りごたつの足を置く部分より低くなっているため、客がその中で調理するシェフを見上げることはありません。そして、コの字型のカウンター正面の窓へは春の桜、夏の緑、秋の落葉、冬の雪と鴨川の四季が風景画のごとく趣を添えてくれます。残る4つの座敷エリアも、落ち着いた佇まいの中で落ち着いたひとときを過ごせるセットアップです。

 また、この店は「Maison d' it」ブランドのチョコレートも有名で、電話やメールでの注文が可能です(冬のシーズンのみ店内でも販売しています)。注文したチョコレートはクロネコヤマトの宅急便、それも4月上旬〜10月中旬とそれ以外の時期で暑い時はクール便が使われるという気の配りようです。もともとは食後出していたデザートのチョコレートが評判となり、販売を始めたという曰くつきで、「トリュフ・オー・ショコラ」などは濃厚で口どけが良く、とろけるような舌触りと後味のキレの良さが際立っています。

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 写真は左から「手長海老と賀茂ナス(#11)」、「フォアグラと白桃(#12)」、「トマトの冷製スープ(#13)」、「舌平目(#14)」、「仔羊(#15)」、手長海老と賀茂ナスのコンビネーションが、なかなかいけますよ。

 これら3軒の他、宮内庁皇室との縁が深い1904年(明治37年)創業の「萬養軒」や、情緒溢れる祇園花見小路を通り抜けた建仁寺から近いプロヴァンス地方出身のシェフ、パンテル・ステファンによる独創性豊かなフレンチを楽しめる「ケザコ」をはじめ、紹介したい京都フレンチはまだまだありますが、とりあえず今回はこれぐらいで・・・・・・オ・ルヴワール!

横 井 康 和      


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