肉を食べるなら・・・・・・日本スタイル篇


 今回は再び肉料理、それも日本の肉料理です。日本の肉料理といえば、一般の日本人が肉を食べ始めた明治時代からすき焼と相場は決まっており、長年アメリカで日本料理の王座の地位を守っています。戦後になってからそこへ鉄板焼が加わり、故ロッキー青木の「Benihana of Tokyo」をきっかけに全米へ広がりました。彼の偉いところは、アメリカでBenihanaチェーンを展開するだけでなくBenihana学校を作ってシェフを育てたことです。給料を貰いながらBenihana学校で鉄板焼を学んだシェフの中には、卒業するや退社してより給料のいい他の鉄板焼レストランへ鞍替えする者がいながら、それもまた最終的に鉄板焼ステーキを普及させる原動力となったことは否めません。

 いっぽう、すき焼の弟分みたいな存在がしゃぶしゃぶで、名のあるすき焼き屋ならメニューを見れば必ず載っているはずです。ということで、今回は関西のすき焼、しゃぶしゃぶ、鉄板焼の店を1軒ずつご紹介しましょう。なお、「焼肉がないじゃないか!」と文句を言う方には10月まで待って下さいと申し上げておきます(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

三嶋亭
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■三嶋亭

www.mishima-tei.co.jp
京都市中京区寺町通三条下ル桜之町405
075-221-0003

 さる御公家侍に仕えていた初代三嶌兼吉が妻ていと長崎で牛鍋を学び、明治6年京都へ戻って現在の寺町三条で創業したのが「三嶋亭」です。以来130余年、明治、大正、昭和、平成とその味を守り続け、現在で5代目となります。今も創業当時と変わらぬ佇まいで産地にこだわらず、選びぬかれた牛肉を独自の方法で熟成させ、三嶋亭こだわりの焼き方で提供してきました。

 基本的な料理はすき焼、オイル焼、水だき、みぞれ鍋があり、水だきとはいわゆるしゃぶしゃぶですが、牛肉の味を堪能できるよう通常のしゃぶしゃぶ肉より、やや厚めにスライスしてあります。やはり熟成させた厳選高級黒毛和牛を和風かぶらだしでいただくみぞれ鍋もしゃぶしゃぶのバリエーションながら、こちらは季節限定(11月〜2月)です。

 あと、ランチ用の単品メニューでステーキや網焼きもなかなかなものだし、もし自宅ですき焼、しゃぶしゃぶ、ステーキなどを調理したい方がおられれば、本店1階の精肉店でいろんな種類の肉を買うことも出来ます。ご贈答の場合は、木箱がお洒落かも・・・

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#1
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#5

 写真は左から「定番のすき焼(#1)」、「水だき/しゃぶしゃぶ(#2)」、「ステーキ(#3)」、「網焼き(#4)」、「1階の肉屋で売っている持ち帰り用の肉(#5)」。

十二段家
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■十二段家

junidanya-kyoto.com
京都市東山区祇園町南側570-128
075-561-0213

 しゃぶしゃぶ発祥の店と言われる老舗「十二段家 本店」、しゃぶしゃぶはもちろん、すき焼きも楽しむことができます。店名の十二段とは、歌舞伎好きの初代店主、精之助が十一段まである演目「忠臣蔵」を観劇した後、次の幕として訪れて欲しいという思いから付けられたそうです。

 祇園花見小路を少し脇へ入ると目に留まる、古式ゆかしい日本家屋のこの店は、京都を訪れる観光客へ、「ほど近い南座で忠臣蔵を観劇した後、十二段目を当店でお愉しみください」との思いが込められているのだとか。しゃぶしゃぶは黒毛和牛のサーロインを用い、自家製ごまだれと炭火で加熱する古い銅鍋を使った創業以来のスタイルを今も引き継いでいます。ちなみに、中央に煙突があるしゃぶしゃぶ鍋は、かつて七輪の炭火で調理していた頃の通気口としての役割の名残という説が有力です。

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#6
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#7
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#9
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#10

 写真は左から「先付の揚げた小芋(#6)」、「紅白模様の美しいマキ海老が中心となった八寸(#7)」、「しゃぶしゃぶの肉(#8)」、「しゃぶしゃぶ鍋は、やはりこれでないと!(#9)」、「ゴマダレ(#10)」。八寸の湯葉が京都らしい。

みその
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■みその

www.misono.org
兵庫県神戸市中央区下山手通1-1-2
078-331-2890

 鉄板焼といえば、今や3ツ星以上のホテルなら天ぷら、寿司と並んで売り物の一つとして必ず見かけます。その元祖が「みその」の鉄板焼ステーキで、終戦間もない昭和20年(1945年)の初秋、荒涼たる街並みを残した神戸三宮で誕生しました。一風変わったこの鉄板焼ステーキは、まずハイカラ好みのダンサーや進駐軍の兵士たちに人気を博し、その後、各界の著名人や食通 の人たちへと受け継がれてゆくのです。

 今でこそ英語の辞書にさえ載っている「鉄板焼/Teppanyaki」も、みそのが創業当時、外国人の取材に対して説明したのが最初で、「神戸ビーフ」の名を世界へ広めたのもこの店でした。また、洋食であるステーキを箸で食べ、茶碗に御飯、日本茶を出す走りでもあります。

 あと、どこのステーキ屋にもあるガーリックライス、これはみそのが創業当時、フィリピンの客から「シナガン」や「アチャラ」をリクエストされ、その内容を教えてもらって考案したものです。これが一般の客へも好評を博したのが始まりでした。当時の神戸には各国の領事館があり、フィリピンからはジシニン元高官やラウエル元大統領らが来訪し、みそのの肉と鉄板の図面を本国へ運んだのだとか。

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 写真は左から「ステーキ(#11)」、「ロブスター(#12)」、「あわび(#13)」、「ホタテ(#14)」、「野菜(#15)」。あと、忘れてはいけないのがガーリックライスです。

 つゆで食べる豚しゃぶの店なら山福より古い「瓢斗」などもありますが、比較的最近店を移転してからメニューの内容は微妙に変わり、割烹志向が強くなってきたので豚しゃぶへ専念する山福を選んだ次第です。同じく、鉄板焼もみそのよりレベルの高い店は少なからずありながら、歴史的な観点からここにしました。

横 井 康 和      


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