映画と衣装


 キャラクターの衣装は、時として皆さんが思っているより重要だ。それは単純に観客の注意を引いたり、あるいはそのキャラクターが映画の文脈の中で人物像を明確にするため役立つ。時代遅れの映画やスーパーヒーロー映画の場合は、細かいことが大きな違いを生み出す。そこで、今回は比較的最近の映画でもっとも物議を醸す衣装のいくつかを見てみよう。

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「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」
 衣装の失敗でまず思い出すのは、ジョエル・シュマッカー監督作「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲(1997年)」だ。あの映画が控えめに言っても最悪だったことは間違いない。 漫画的な要素、ひどい対話、そして貧弱なプロットの選択をさて置いたとして、ファンはあの衣装、中でもバット・ニップル(バットマン・スーツの乳首)を決して忘れないだろう。

 シュマッカー自身、「乳首をバットマンの衣装へ乗せることで国際的な話題を作ることが出来たという以外、僕には説明しようがないよ」と語っている。「スーツは完璧なボディーを持つギリシャの彫像からインスピレーションを得ているんだ。その完璧なボディーをゴムで成型している。解剖学的にエロチックなのさ。だから男性の乳首が物議をかもしている身体部分であることを、僕は考えたこともなかった」とも語っている。

 すべてが十分に合理的だと思え、またバットマン&ロビンが他の多くのレベルで成功していたならば、観客は衣装の問題点を見過ごしたかもしれない。だがしかし、残念なことにこの映画は、フランチャイズの長い映画史の中で最悪の失敗を何年もの間ファンから嘲笑され、(バットマンの)フランチャイズ全体をしばらく凍結させる結果となった。

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「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」
 2016年9月、観客はロビン・ウィリアムズ主演のクリス・ヴァン・オールズバーグの絵本を映画化した「ジュマンジ(1995年)」に触発された新作「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」の映像を初めて公開された。ドウェイン・ジョンソン、ケヴィン・ハート、ジャック・ブラックがそれぞれジャングルへ最適な衣装を着けた映像だ。ただし、もう1人のカレン・ギランは子供服サイズの(つまり露出度の高い)衣装を着けている。その映像が炎上し、ギランはハリウッド・レポーター誌へ、「それだけの価値があることを約束するわ」と言って論争を治めようとした。

 その後ハリウッド・レポーター誌は、最初の映像でギランの衣装が露出度の高い理由を、「この計画は、拘禁中に学校の地下室を掃除することを余儀なくされている4人の高校生を巻き込みます。彼らは(ボードゲームではなく)古いビデオゲームを見つけ、それぞれがプレイするキャラクターを選びました。ギランのキャラクターは彼女の大人のキャラクターへ変身する恥ずかしがり屋の女の子であり、そして観客が映画の予告編で観たように、衣装の選択はビデオゲームが女性を描く方法を反映しています」と説明している。

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「グリーン・ランタン」
 「グリーン・ランタン(2011年)」の衣装はファンの間で論争を引き起こした ――― 全CGIのグリーンランタンだって? ――― オリジナルの静止画と予告編がかなりひどく、スタジオはそれがスクリーン上で素晴らしいように見えるだろうと主張したが、この衣装は映画の失敗の多くの理由の一つとして知れ渡っている。主演のライアン・レイノルズも後ほど、自身がCGIアンサンブルを気にしなかったと認め、「ずっとモーション・キャプチャー・スーツを着て映画を撮るのは残酷だよ。僕自身、初めて予告編を観るまでグリーンランタン・スーツがどのような外見かさえ知らなかった」と指摘した。

 この映画の製作者たちはスーパーヒーローのため、何か新しいことをしたいと思い、衣装デザイナーであるナイラ・ディクソンがスーツは身体の外へ発散する彼の力という考えを思いつく。しかし、特殊効果がついていけず、ディクソンも同意している。「私たちは皆がスタジオで創り出す行為を文字通りやっていました。ただ、私たちはコンピューターでそれをやったのです。多くの点で私たちは原則に従いましたが、衣裳部屋で行う創作の明白な結果を決して得られませんでした」と、彼女は振り返っている。

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「ピッチ・パーフェクト ラストステージ」
 「ピッチ・パーフェクト ラストステージ(2017年)」が封切られる前から、その制作はプラス・サイズのスターへ差別の可能性を秘めていた。レベル・ウィルソンが共演のブリタニー・スノウとクリッシー・フィットの2人と並んだ自分の写真をオンラインで投稿し、2人がノースリーブのトップスを着ているのに対し、ウィルソンは半袖だった。ウィルソンは健康な女性の肉体美を支持してきたので、写真は差別の非難を促す結果となる。

 ウィルソンの共演者の一人であるエスター・ディーンも、彼女のインスタグラムへ掲載されている写真の中で、似たような長袖の縞模様のセーラー服を着ていると指摘があったとき、論争はさらに激化した。衣装デザイナー、サルバドール・ペレスがツイッターで、「私はそれぞれの俳優へ彼らの衣装がどのように合うかを決めさせました。それは彼らの選択でした」と火を消そうとしたが、あまり効果はなかったようだ。

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「ジャッジ・ドレッド」
 「ジャッジ・ドレッド(1995年)」は、いくつかの理由から駄作といえよう。一つはロブ・シュナイダーの出番が多過ぎる。もう一つはシルヴェスター・スタローンの役柄がばかげていることだ。もっとも、「私は法律です!」というジャッジ・ドレッドの長年のファンにとって、それほどひどくなかった。

 原作の漫画(コミック)だとドレッドがヘルメットを脱ぐことはないが、スタローンは20分も経たないで脱ぐ。当初、ダニー・キャノン監督が考えていたのは、ドレッドを昏(くら)く暴力的でNC-17指定(17歳以下鑑賞禁止)を保つことである。彼ができるだけ原作の漫画(コミック)へ近づけたいと意図するいっぽう、スタローンはコミカルさを求めた。キャノンが語ったところ、スタローンは無数の書き直しを望み、いつも笑いを盛り込もうとしたらしい。加えて、自身の演じるキャラクターの捉え方がキャノンと違っており、衣装へも口を挟む。

 スタローンはファッション・デザイナーの起用を望み、衣装デザインの一部はエマ・ポーテウスとジャンニ・ヴェルサーチが担当した。ヴェルサーチは明らかに、将来コッドピース(14世紀から16世紀末にかけて流行した股間の前開き部分を覆うための布)が主流と考えていたようだ。なぜならその後、彼の作品の特徴となったからである。

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「スーサイド・スクワッド」
 デヴィッド・エアー監督作「スーサイド・スクワッド(2016年)」でハーレイ・クインの銀幕(シルバー・スクリーン)デビューは、マーゴット・ロビーが有名な悪役を演じて注目を浴びた。中でも話題となったのは彼女の衣装だ。

 ニューヨーク・タイムズ紙からその衣装について尋ねられたロビーが、「ハーレイ・クインはキラキラと楽しいからホットパンツを履いた」と答えながら、彼女が必ずしもそれを楽しんだわけではないと付け加えている。「私自身、いいえ、あの衣装は好きじゃないわ。昼食にハンバーガーを食べ、そして撮影が始まると白いTシャツとホットパンツでずぶ濡れのシーンを撮るのよ。(Tシャツが)密着してとても気持ち悪い」と彼女は認めた。

 エアー監督が、「デニムのオーバーオールはそのキャラクターへ相応しいと思わなかった」と述べると同時、それ(衣装)がキャラクターの一部だとロビーは理解しているという彼の見解も述べた。最初、ハーレー・クインが漫画(コミック)のバットマン・シリーズへ登場したとき、彼女はジェスター・スーツを着ていたのが、長年にわたってワードローブは変化し、キャラクターが漫画(コミック)業界で性的なシンボルとなったところから大きく変わる。今ハリウッドでは、彼女のホットパンツ抜きで語れない。

 いかがだろう、衣装の重要性がわかってもらえたか?

横 井 康 和      


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