映画とトラブル


 恋人と観るとトラブルを起こしそうな映画がある。今回はそういった映画を何本か取り上げてみたので、週末とかに恋人とビデオを借りて観るなら、これらの映画は避けたほうがいいだろう。

画像による目次はここをクリックして下さい
「ゴーン・ガール」
 ギリアン・フリンのミステリー小説を映画化したデヴィッド・フィンチャー監督作「ゴーン・ガール(2014年)」は、自分のパートナーのことを本当に知っていると誤解するのが容易であると教えてくれる類の映画であり、映画を観た時の効果は現実のパートナーへ疑惑を生じさせる可能性もありそうだ。

 たぶん、現実のパートナーは彼か彼女自身の死を偽装し、相手を騙そうと計画していないと思う。しかし、劇中でロザムンド・パイク演じるエイミー・エリオット・ダン(アメージング・エイミー)の場合、ベン・アフレック演じる良人ニコラス・ダン(ニック)の浮気を許せず、徹底的な復讐に出る。恋人とこの映画を観た結果、現実の関係へ影響を及ぼすかもしれないので、避けたほうが無難だ。ただ、ミステリー映画としてよく出来ており、独りで観ることはお薦めする。

画像による目次はここをクリックして下さい
「スウィート・ノベンバー」
 公開当時、このハリウッド最前線でもご紹介した「スウィート・ノベンバー(2001年)」は、ロマンチックなドラマである一方、大きなどんでん返しが待ち受けている。ドラマはシャーリーズ・セロン演じるサラ・エィーヴァが中心となって展開するが、彼女はキアヌ・リーブス演じるネルソン・モスが間もなく発見するように、もっと複雑な事情があった。

 末期癌で死期の迫ったサラは、この数ケ月間、問題を抱える男達の生活を自分の存在下でより良くするため費やしており、彼女が1ケ月ごとに恋人を変えてきたのは幻想の世界で生きるためである。そういった事情もあり、ネルソンへ尽くすサラだが、残された日はあまりにも少なく、失意の中で独り取り残されるネルソン・・・・・・

 ある人にとって、これが星の交差するごとき失恋の物語かもしれないし、またある人にとって、病気を隠した女性へ心を捧げた可哀想な男性の狂気と映るかもしれない。恋人との議論を避けるため、もしメロドラマがお好きなら、この映画もまた独りでご覧になることをお薦めする。

画像による目次はここをクリックして下さい
「運命の女」
 「運命の女(2002年)」はドラマの性格上、簡単な意見を述べるだけでも議論へ発展しえるだろう。コニー・サムナー(ダイアン・レイン)は、平凡だが幸せな家庭を築く既婚の母親であった。息子チャーリー・サムニー(エリック・パー・サリヴァン)の誕生日プレゼントを買いに出かけた彼女は、フランス人の青年ポール・マーテル(オリヴィエ・マルティネス)と出逢い、そこからすべてが変わってしまう。

 不倫の恋は、コニー自身へ官能的な中毒性ばかりでなく、良人エドワード・サムニー(リチャード・ギア)との結婚や最愛の息子にも深刻な影響をもたらす。結局、彼女一人の問題で済むはずがなかった。そして、そういう状況は姦通を究極の取引であるとみなす観客から深刻な欺瞞のポイントとなるだろう。この映画を誰かと観た後の必然的な意見の衝突を避けるため、後日、独りの観賞用にとっておくほうがいい。

画像による目次はここをクリックして下さい
「グッド・ガール」
 ジェニファー・アニストンのファンなら、「グッド・ガール(2002年)」を観たいと思うだろう。本作は、人気TVシリーズ「フレンズ(1994年〜2004年)」のレイチェル・グリーン役以来のスタイルから、比較的最近の「Cake/ケーキ ?悲しみが通り過ぎるまで?(2014年)」のクレア・シモンズ役に代表されるシリアスな役柄へ幅を広げる転機となった。

 テキサスの田舎町で平凡な主婦またディスカウト・ストアの店員として暮らすジャスティン・ラスト(アニストン)、塗装業の良人フィル・ラスト(ジョン・C・ライリー)との生活は退屈で、せめて子どもがほしいと願ってもなかなか叶わない。そんなある日、新しくレジ係として雇われた文学青年ホールデン・トム・ウォルター(ジェイク・ジレンホール)と親しくなったジャスティンは、心の空虚さを埋めるように彼との不倫へ奔(はし)る。トムとの子供を妊娠した彼女が、フィルに自分の子供だと確信させるのだ。

 一部の観客はジャスティンの決断へ同意するかもしれないが、他の観客はフィルのことを考え同意しないだろう。不倫や良人以外の子供の妊娠といえば、ドラマチックには違いない。しかし、くれぐれも映画の世界を実生活へ結びつけないよう心掛けてほしい。

画像による目次はここをクリックして下さい
「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」
 かつて「タイタニック(1997年)」で主演したケイト・ウィンスレットとレオナルド・ディカプリオが再びタッグを組んだ「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで(2008年)」、残念ながら10年前のマジックは再現できなかった。1950年代のアメリカが舞台となり、俳優志望ながら才能に恵まれないエイプリル・ウィーラー(ウィンスレット)は、フランク・ウィーラー(ディカプリオ)と結婚して2児をもうけ、主婦業へ専念しようとしている。他方、フランクは、かつて父親が働いていた会社で、生き甲斐を見いだせず浮気をしたりしている。そんな生活から脱皮しようと2人はフランスへの移住を決心するも、エイプリルが3人目の子供を身ごもり、そしてすべてが崩壊してゆく。

 リチャード・イエーツの小説を映画化した本作を観た観客は、劇中で延々と続く論議のシーンへ俳優たちの才能を見出すだろう。同時に、一見完璧なカップルでさえ取り返しのつかない事態を招くのがどれだけ容易なことか想像がつく。つまり、デート向けの映画ではない。

画像による目次はここをクリックして下さい
「クローサー」
 裏切りは人間関係の毒であり、マイク・ニコラス監督作「クローサー(2004年)」が証明しようとしているように、騙した結果はかなり広範囲まで及ぶ傾向がある。自身の演劇からパトリック・マーバーの書き起こした脚本は、ナタリー・ポートマン、ジュリア・ロバーツ、クライヴ・オーウェン、ジュード・ローの4人の俳優が、その素晴らしい演技で息を吹き込み、複雑な四角関係を描き出す。

 全体的にベタベタした状況は1人のキャラクターがきっかけとなっているものの、その波及効果は関係者全員の内面的な問題を露呈する。最も安定していると思われるカップルでさえ、そうした軽蔑的な人間へどれほど簡単に落ちぶれるかを見た時、観客へ不審の種が芽生える場合もある。とは言え、本作のオリジナリティー、キャストの力強い演技、そして最後まで観客をつかんで離さないドラマが高い評価を得ているのは確かだ。

画像による目次はここをクリックして下さい
「アウェイ・フロム・ハー君を想う」
 アリス・マンローの短編小説「クマが山を越えてきた」を映画化したサラ・ポーリー脚本監督作「アウェイ・フロム・ハー君を想う(2006年)」は、突出した脚本から主演俳優の素晴らしい演技まで、あらゆる点で傑作といえよう。じゅうぶん観る価値がある反面、恋人同士の観客へいい影響を与える映画とは思えない。

 妻を深く愛する良人は、彼女のアルツハイマー病が彼らの共有する40年以上の人生を記憶から洗い流してゆくのを見ているうち、介護施設に入った妻は良人のことを忘れ、入居者の一人である身体の不自由な男へ好意を寄せる。そして、その男が経済的な理由から自宅へ引き取られた時、妻の失意は自分とのそれを上回っていた。一緒に成長して手をつないで死ぬつもりでいるカップルが本作を観ると、あらゆる種類の倫理的議論を招く目覚めの呼びかけとなる可能性もある。

画像による目次はここをクリックして下さい
「ダイヤルM」
 この「ダイヤルM(1998年)」は非常に多くの裏切りという名の層(レイヤー)を含んでいるため、絞り込むのが難しい。問題はエミリー・ブラッドフォード・テイラー(グウィネス・パルトロウ)とデイヴィッド・ショー(ヴィゴ・モーテンセン)との不倫関係、それともエミリーの良人スティーヴン・テイラー(マイケル・ダグラス)の報復計画なのか? はたまた、自分の恋人の人生へ潜在的な犠牲を払ってまで陰謀に加わりたいデイヴィッドの意思、それともスティーヴンの心の底に秘められた欲望が火付け役となっているのか?

 観客がそれをどう見ても、これらの登場人物は多かれ少なかれ悪人であり、本当の意味で善人はいない。アルフレッド・ヒッチコック監督作「ダイヤルMを廻せ!(1954年)」の'90年代リメイク版でビデオをレンタルする価値があると謳っているものの、もしビデオをレンタルするなら独りでの鑑賞をお薦めする。

 以上の8作は、男と女の複雑な関係を描き、観る側へ立つと、どちらかといえば男と女のロマンチックな雰囲気をぶち壊しにしかねないタイプの映画だ。しかし、同性の愛情を描いた映画も異性のカップルの観客へ向かないものが多い。たとえば、男性ストリップ・クラブの看板ストリッパーを描いた「マジック・マイク(2012年)」は、監督のスティーブン・ソダーバーグや主演のチャニング・テイタムに悪いが、どう考えても(異性のカップルの)盛り上がる映画とは思えない。

 「ブロークバック・マウンテン(2005年)」も、やはりその類の1作で、映画ファン必見の美しい作品ながら、そのテーマの奥深さゆえ(異性の)恋人同士が観るには不向きだ。私自身、これまでの人生を振り返ってみると、やはり恋人や妻と映画を観る場合、無意識のうちに、こういう映画を避けてきたし、相手もまたそうだった。

横 井 康 和      


Copyright (C) 2019 by Yasukazu Yokoi. All Rights Reserved.

映画と衣装 目次に戻ります