フレンチディップ


 ローストビーフ・サンドイッチをスープに浸して食べるフレンチディップは、「Philippe The Original」が始めたという説と「Cole's French Dip」が始めたという説があり、どちらの店もロサンゼルスのダウンタウンで営業しています。また、フレンチディップ発祥の地というだけあって、ロサンゼルスのレストランでメニューへフレンチディップを加えている店も少なくありません。ということで、今回はPhilippe The OriginaとCole's French Dip、そしてあと1軒「Meat On Ocean」をご紹介しましょう(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

Philippe The Original
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■Philippe The Original

philippes.com
1001 N. Alameda St., Los Angeles
213-628-3781

 1918年にフィリップ・マシューは1人の警官のサンドイッチを作ろうとして、うっかりスライスしたフレンチロールをオーブンの熱いジュースでいっぱいのロースティング・パンへ落としてしまいました。そのフレンチロールで作ったサンドイッチを持って帰った警官が、翌日、仲間を連れて戻ってきます。彼らは、オーブンの熱いジュースで浸したサンドイッチをもっとくれと言うのです。こうしてフレンチディップの歴史が始まりました。

 Philippe The Originalは南カリフォリニアでも最も古く最もよく知られたレストランの1軒です。マシューがこの店を立ち上げたのは1908年で、1927年にハリー、デイヴ、フランク・マーチンの3兄弟がマシューから5,000ドル(約55万円)でレストランを買い取ります。彼らは毎日24時間、週7日の営業を続け、大恐慌や第2次大戦といった逆境の中で、着々と事業を伸ばしてゆきました。しかし、1951年のハリウッド・フリーウェイの建設で立ち退きを余儀なくされ、現在の場所へ移るのです。

 移転後もビジネスは順調で、今やPhilippeのフレンチディップはマイケル・コネリーの小説にも登場するぐらいの存在となりました。フレンチディップ以外、コールスローやマカロニなどのサイドディッシュからピクルスばかりでなく、チリ・ボールやビーフシチューなどのメニューまで着実に客をつかんでいます。ロサンゼルスへ行く機会があれば、ぜひ立ち寄られてみてはいかがでしょうか?

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#1
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 写真は左から「フレンチディップ(#1)」、「コールスロー(#2)」、「チリ・ボール(#3)」、「ビーフシチュー(#4)」、「テイクアウトのパッケージ(#5)」。サイドのマカロニも悪くありません。

Cole's French Dip
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■Cole's French Dip

213hospitality.com/project/coles
118 E. 6th St., Los Angeles
213-622-4090

 Philippeに対抗して元祖フレンチディップを主張するCole's French Dipは、やはりPhilippeと同じ1908年、かつてパシフィック・エレクトリックの鉄道ネットワークの中核であったパシフィック・エレクトリック・ビルでヘンリー・コールが創業しています。2007年に213ホスピタリティ社が買い取り、その翌年再オープンしたCole'sは、様々なメジャー雑誌から絶賛されました。2013年後半、ロサンゼルス国際空港へ2号店をオープンするまでに至っています。

 Cole'sが目指すのは地域社会への貢献です。地域社会なくしてレストランやバーが成り立つことはなく、それを一番よく知っているのが彼らであり、彼らは自分達が何をしているのか知っています。そう、「おもてなし」の心を大切にしているのです。ただし、大企業の戦略は裏表がありますから油断はできません。

 フレンチディップの元祖争いへ話を戻し、フィリップ・マシューがフランス人の血を引くことから世間はPhilippe有力説に傾くいっぽう、ヘンリー・コールの言い分はこうです。彼の客の1人が歯医者へ通っており、固いフランスパンを齧(かじ)れませんでした。そこでコールはその客のため、フランスパンをスープに漬けて柔らかくしたといいます。この説もそれなりの説得力があるため、とうぶん議論は続きそうです。

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#9
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#10

 写真は左から「フレンチディップ(#6)」、「テータートッツ(#7)」、「フレンチフライ(#8)」、「コールスローとベーコン・ポテトサラダ(#9)」、「テイクアウトのパッケージ(#10)」。

Meat On Ocean
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■Meat On Ocean

www.meatonocean.com
1501 Ocean Ave., Santa Monica
310-773-3366

 サンタモニカの海沿いで店を構えるMeat On Oceanは、その名のごとく基本的にステーキをはじめとする肉類全般が売り物のレストランです。肉料理の一つとしてフレンチディップを出しているに過ぎません。そんなフレンチディップながら侮(あなど)るなかれ、ロサンゼルスのベスト10へは間違いなく入ります。

 ステーキ、フレンチディップに係わらず、やはり肉が肉料理の決め手です。この店では30日から75日の熟成肉があって、日本の美味しい肉を食べ慣れたかたも唸ると思います。肉なら日本およびアメリカで育った和牛から豚や鶏まで何でもあり、それらがガラス張りの冷蔵庫へディスプレイしてあるのを見ているだけでも、そして店内のブッチャーショップを見ているだけでも期待感は膨らんでゆくでしょう。

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 写真は左から「フレンチディップ(#11)」、「ミート&チーズ・プラッター(#12)」、「いかにもホームメードのフレンチフライ(#13)」、「ベーコンで巻いた帆立(#14)」、「この店の中心であるブッチャーショップ(#15)」。精肉(ブッチャーショップ)とワインのセクションが中心というだけで、この店の性格はわかります。

 以上3軒の他、メニューへフレンチディップが加えられたロサンゼルスの多くのレストランでも、古顔では以前「ジューイッシュ・デリ」でご紹介した「Canter's Delicatessen and Restaurant」、そして新顔では「クラフトビールの夜」でご紹介した「Beer Belly」などが、よく知られています。

横 井 康 和      


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