バルセロナ・ナイツ・・・・・・京都篇


 以前、「バルセロナ・ナイツ」と題してロサンゼルスのスパニッシュ・レストランをご紹介しました。そして、スペイン料理といえば日本人にもお馴染みでしょう。京都も例外ではなく、数多くのスパニッシュ・レストランがあり、今回はそんな中から3軒を選んでご紹介したいと思います。

 そもそも、スペインでは地中海と大西洋で豊富な魚介類が獲れる結果、各地方にそれらの素材を活かした海鮮レストランがあると同時、調理方法は素材や地方で様々です。海老ひとつとってみても、鉄板焼き、塩ゆで、煮込み、マリネ、フリート、アヒージョ、パエリアといろんな料理へ変わります。北から南、地方の野菜や香辛料、各地の風土が生んだ調理法で作られる料理はバラエティー豊かです。スペイン同様、日本も沢山の美味しい魚介類が溢れており、以下の3軒ではそれらを活かしたメニューを工夫しています(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

La Masa(ラマーサ)
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■La Masa(ラマーサ)

www.lamasa.jp
京都市中京区亀屋町380
075-255-6093

 もともと「ラマーサ」が寺町二条でオープンしたのは1998年で、以来、帰国するたびに立ち寄ってきました。その後、スペイン炭火焼料理の「El Fogon(エルフォゴン)」という系列店があった今の場所へ移転したのが、20周年を迎えた昨年のことです(エルフォゴンのオープンは2006年から2018年まで)。スペイン語で「固まり」を意味するラマーサという名前ですが、そこには「いろいろな人達や物が集まる場所」という想いを込めたのだとか。

 ラマーサで気に入っているメニューの一つはマテ貝のプランチャですが、このマテ貝はいつもあるわけではありません。むしろ、あることが珍しい食材です。初めてマテ貝を食べたのは、以前「肉を食べるなら・・・・・・ユーロ・スタイル篇」で登場した「Chi Spacca」で、まだレイザー・クラムという英語の名前しか知りませんでした。その後、マテ貝という日本語の名前がわかり、帰国するたびに食べられる店を捜していたら、馴染みのラマーサへ行きついたという次第です。それからは帰国中、マテ貝が入ったら電話をもらうようになりました。

 ちなみに、以前ラマーサはエルフォゴンの他、三条京阪に姉妹店「La Gallega(ラガジェガ)」も出していたのですが、現在はその店を畳み、姉小路通柳馬場を上がったところへパエリアへ特化したレストラン「Barraca(バラッカ)」を出しています。

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#1
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#2
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#3
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#4
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#5

 写真は左から「アンチョビとガーリックが乗った玉ねぎのオーブン焼き(#1)」、「岡山産のマテ貝プランチャ(#2)」、「富山湾産ホタルイカと春アスパラガスのアヒージョ(#3)」、「のれそれ(穴子の稚魚)のアヒージョ(#4)」、「ホタテと甘海老のパエリア(#5)」。イベリコ豚はどこの店にもあるので写真を省略しました。

Aca(アカ)
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■Aca(アカ)

aca-kyoto.jp
京都市中京区桝屋町55 白鳥ビル2F
075-223-3002

 烏丸御池から近い「アカ」は2013年のオープンから3年後、ミシュラン・ガイド2017で1つ星を獲得しました。予約を取るのが難しく、ディナーは魚介をふんだんに盛り込んだおまかせコースのみといえば、どのような店かだいたい想像がつくでしょう。スペインの家庭料理を独自の感性で昇華させた唯一無二の「モダン・スパニッシュ」が売り物です。

 スペイン料理は素材を最大限に活かした素朴な調理法でありながら、枠に囚われずに自由な表現の仕方で楽しめるというのがアカのシェフ東鉄雄の考えで、古典的なスペイン料理へ彼の新しいアイディアを積極的に取り入れています。たとえば、炭火で焼いた河豚の白子を乗せたイカ墨のパエリア(アクセントは京都のすぐき漬け)とか、車海老と白子のパエリアなど、白子好きへはたまりません。

 1978年岡山生まれの東が料理の世界へ入ったのは25歳の時で、アカをオープンする前にラマーサで9年間修業しています。その彼が研修でバスクの1つ星レストラン「ミラドール・デ・ウリア」を訪れ、コンテンポラリーなスペイン料理へ感銘を受けたのが転機となりました。それから新たな道を模索した彼が2003年にアカをオープンして以来、独自のスペイン料理を追求し続けています。生まれ故郷である岡山のGGファームや京都大原の朝市などで仕入れた良質な野菜、そして研究し尽くした魚介類など、研ぎ澄まされた食材の旨味を最大限に活かしたモダン・スパニッシュは、この店でしか味わえません。

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#6
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#7
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#8
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#9
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#10

 写真は左から「コハダのボカディージョ(スペイン風サンドイッチ)(#6)」、「太刀魚とチコリ(#7)」、「雲子と車海老のアヒージョ(#8)」、「山形牛のヒレ肉の炭火焼(#9)」、「松葉ガニのパエリア(#10)」。今回は写真をパスしましたが、この店の稚鮎のカルドッソ(スペイン雑炊)も最高です。

Xativa(シャティバ)
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■Xativa(シャティバ)

www.xativa-kyoto.jp
京都市中京区木屋町二条西入ル樋之口町466-2
050-6890-6656

 ラマーサやこの店はハイエンドのアカと比べて値段が安いだけ、客層は若いのが目立ちます。また、スペイン語でビアホールを意味する「Cerveceria」を掲げているだけあって、お酒の種類も豊富です(メキシコ人の多いロサンゼルスではビールを注文する時、1本なら「ウノ・セルベッサ」、2本なら「ドス・セルベッサ」という状況も珍しくありません。そしてセルベッサを出す店がセルベッセリアという次第)。

 この店の売り物は、お酒のあてにもなる米料理アロスアバンダや、毎朝市場から仕入れる新鮮な旬の魚介類を使用したスペインの郷土料理です。のれそれ(穴子の稚魚)をしらすで代用したり、工夫を凝らしているのも、よくわかります。ただ、この店のため弁解しておくと、本来ののれそれは鰻の稚魚で、スペインを除く世界中で捕獲を禁止されているため、ロサンゼルスの「パエリア」でさえ、スペインから輸入するしかありません。ラマーサののれそれもかなり大きくなった穴子の稚魚であり、もっともっと小さいほうが美味しいのです。

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#11
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#14
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#15

 写真は左から「田舎風パテ(#11)」、「愛媛産鯛のカルパッチョ(#12)」、「生ハム入り半熟オムレツ(#13)」、「和歌山県産しらすのアヒージョ(#14)」、「アロス・ア・バンダ(海鮮パエリア)(#15)」。スペイン料理の定番、生ハムのコロッケばかりでなく白魚のコロッケもあります。

 もちろん京都にはまだまだスパニッシュ・レストランがあって、10年ほど前はまだ河原町店1軒しかなかった「Bellota(ベジョータ)」も今や3軒まで増えていたり(一時4軒まで増えた後、オリジナルの河原町店が閉店)、今では山科でさえ「Harubaru(ハルバル)」という本格的なスペイン料理を出す店があります。

横 井 康 和      


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