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(2019年5月)          


The First Lady
ファースト・レディー

by by James Patterson & Brendan DuBois


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 ジェームズ・パターソンといえば、今さら言うまでもなく、その著書が世界中で3億8,000万冊以上売れており、またニューヨーク・タイムズ紙でもっとも多くベストセラーに選ばれたギネスブックの公式記録を持つ作家です。「アレックス・クロス・シリーズ」や「ウーメンズ・マーダークラブ・シリーズ」など、多くの人気シリーズ物のほか、単独の著書も数多く、去年はビル・クリントン元米大統領との共著「プレジデント・イズ・ミッシング」も話題となりました。

 4月末現在、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーに4冊の著書が入っているうちの1冊である本著は、アメリカでまだ出版されたばかりであり、米大統領ハリソン・タッカーがアトランタのホテルでロビーイストのタミー・ドイルと浮気をしているシーンから幕を開けます。その後、シークレットサービスに囲まれてホテルを出ようとしたところを待ち受けたTVニュースのクルーが捉え、愛人と一緒の姿が全米へ流れてしまうのです。ホワイトハウスでそれを見たファースト・レディーのグレース・タッカーは、なんとか怒りを抑え・・・・・・こうして物語が展開してゆきます。そして、いったん読み始めると多くのパーターソン・ノベル同様、最後まで止まりません。

 米大統領の不倫スキャンダルと聞いて、クリントン元大統領のモニカ・ルインスキー事件を思い浮かべる方はおられると思いますが、じっさいに読んでみると印象は違います。最初の7〜8章の後、視点は一人称へ移って大統領の警護を担当する主任サリー・グリソムの目から物語が語られる体裁をとっており、本著ではそれがかなり効果的です。いくつかの穏やかな呪いや粗雑な言葉遣いを除けば、誰でも共有できる内容といえるでしょう。

 全体の流れはよく、そして適度に現実味がある物語は、まるで実話を背景として書かれたかのごとき印象すら受けます。現在のトランプ大統領はそうでもありませんが、(クリントンと限らず)それ以前の他の大統領およびファースト・レディーへは、さほど困難なく本著を当てはめて想像することが可能です。第2期目の再選を賭けた選挙戦の途中、当選間違いなしと予想される現役の大統領には隙が生じることもあれば、両陣営が必死で相手を潰そうとするのは何処の国も変わりません。そうした状況の中から生まれる人間ドラマが、パターソンの筆力で生き生きと描かれています。

 最後に余談ですが、パターソンは100万冊以上の本を学生や兵士へ寄付したり、24の大学で400以上の教員教育奨学金の基金を作るばかりでなく、何百万もの独立した書店や学校の図書館にも寄付をしてきました。そんなパターソンの新作「ファースト・レディー」を、ぜひお楽しみ下さい。


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(2019年5月)

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