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(2016年3月)          




ボウイ追悼

2016年度グラミー授賞式で最も話題となったのは、なんといってもレディー・ガガ(写真)29歳による先月亡くなったデヴィッド・ボウイの追悼パフォーマンスです。会場へ現われた時からすでに彼女の「ボウイ追悼」が始まっており、かつて彼が作り上げて演じた宇宙から来た架空のロックスター「ジギー・スターダスト」をイメージした格好で登場。パフォーマンスの際はインテルと協力し、スクリーン上の顔へボウイさながらのメイクをほどこして観客を沸かせました。6分ほどの間にボウイのヒットソング9曲を詰め込むという目まぐるしい構成ではありながら、相当な時間の準備と練習が必要だったのは間違いありません。ガガがボウイをどれだけ敬愛していたの伝わってくるステージで、パワフルな歌声はもちろん健在であり、ローリング・ストーンズ誌などが「素晴らしい」とベタ褒めしています。いっぽう、ボウイと彼の最初の妻アンジーとの息子ダンカン・ジョーンズは追悼パフォーマンスが終わるや否や、「『興奮しすぎか、あるいは訳がわからなくなっていて、夢中になりすぎるか、あるいは過度の熱狂の結果起こる一般的な状態、つまり精神的な混乱』。チキショー! なんて言葉なんだ!?」とツイートしました。辞書で「gaga」という言葉を引くと載っている文を引用したもので、本人の名前こそ出していないものの、ガガをけなしているのは明らかです。このジョーンズのツイートへの反応も賛否両論あって、ほとんどが否定的な中、一部はボウイが亡くなってから僅か1ケ月、息子としてみれば悲しみもまだ癒えない時期に、グラミー賞という大きな舞台で行われたガガのパフォーマンスは見ていて辛かったのかもしれないと好意的な見方をしています。



アレンの新作

ウディ・アレン(写真右)による新作映画の北米配給権をアマゾン・スタジオが獲得しました。タイトル未定の同作は1930年代が舞台のロマンチック・コメディーで、出演はジェシー・アイゼンバーグ(写真右)やクリステン・スチュワート(写真中央)の他、スティーヴ・カレル、ジーニー・バーリン、ブレイク・ライヴリー、パーカー・ポージー、コリー・ストール、ケン・ストットら ――― カレルの役はもともとブルース・ウィリスが演じていたものの、台詞を憶えられずクビになったと報じているメディアもあります ――― 昨年の夏からニューヨークとロサンゼルスで撮影が行われていたものです。この夏の全米公開を予定しており、劇場公開後はアマゾン・プライム・ビデオでの配信も行われます。昨年1月、アマゾンが映画製作および配給業への進出を表明した際、アマゾン・スタジオが製作配給した作品は、劇場公開の4〜8週間後にアマゾン・プライム・ビデオでのオンライン配信を開始する見通しだと宣言していました。アレン監督はアマゾン・スタジオとの契約を、「始まったすべての関係はとても望ましいもので、相互への愛情や本物の善意で溢れているよ・・・・・・訴訟があるとしたらもっと後だろうね」とジョークを交えつつコメント、本作以外にも彼はマイリー・サイラスを迎えたTVシリーズをアマゾン・スタジオで製作しています。エミー賞やゴールデングローブ賞などでネットフリックスやアマゾンといったインターネット配信サービスのTVドラマが台頭してきた今日、映画の分野でもネットフリックスの作品は第88回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞へノミネートされ、ますます存在感が増してきました。アカデミー賞の常連でもあるアレン監督の作品は、さらに作品部門でもアカデミー賞ノミネートへの道を切り開く一作になるかもしれません。



ワイルドな役柄

なぜか日本では今頃公開されている去年のクリスマス映画「クーパー家の晩餐会」は、ダイアン・キートン、ジョン・グッドマン、マリサ・トメイ、アラン・アーキン、アマンダ・セイフライドら、オスカー俳優をはじめとするベテランから若手まで豪華な顔合わせで、クーパー夫妻(キートンとグッドマン)の娘エレノア役をオリヴィア・ワイルド(写真右)が演じています。監督は「I am Sam アイ・アム・サム(2001年)」のジェシー・ネルソン、彼が本作で描いているのは年1回クリスマス休暇で集まるクーパー家の晩餐会です。それぞれが満面の笑顔の下に秘密を隠し、代々受け継がれてきたファミリー・レシピが並ぶテーブルへついたクーパー家の最悪で最高の晩餐会・・・・・・ワイルドの役柄は劇作家を目指すもパッとせず、私生活でも妻子ある男性と不倫中という身。完全主義の母を今年も失望させるかと思うと実家へ向かう足取りがつい重くなり、空港のバーで時間をつぶすうちジェイク・レイシー(写真左)演じる真面目な若い軍人ジョーと出会います。そして、1日だけ恋人のフリをして両親に会ってくれと頼むのです。そんなエレノアの心理をワイルドは、「休日に家族が集まるのは世界共通の悪夢よ」と笑いながら、「知られたくないところも追及され、予期しないことが露見したり、いつも最悪ね。でも、友達は選べるけど家族は生まれた瞬間に決まって、お互い上手くやらないといけない。それが楽しいところでもあるわ」と語っています。彼女がこの役へ惹かれた理由は、ヒネリの利いた感動作を得意とするスティーブン・ロジャースの脚本が大きいようです。しかし、「この映画へ出たいと思わせてくれたのは監督よ。もちろん、ジョンとダイアンの娘を演じられるというのもとても魅力的だったわ」とも明かしています。



ロック界のパイオニア

20世紀フォックスが伝説的な音楽プロモーターである故ビル・グレアム(写真)の伝記映画を製作すると発表しました。これはグレアムがロバート・グリーンフィールドと共同執筆した自伝「ビル・グレアム ロックを創った男」の映画化企画で、監督には「ナイトミュージアム・シリーズ」や「リアル・スティール(2011年)」などのショーン・レヴィが決まっている以外、キャスティングや製作時期の詳細はまだ未定です。グレアムといえば、もともとベルリン生まれのユダヤ人であり、女手一つで子育てをした母親からニューヨークへ単身で送り出され、10歳でアメリカの地にやってきて一から自力で人生を築きあげました。'60年代初頭、ニューヨークからサンフランシスコへ移るやめきめきと頭角を現わし、'60年代から'70年代の音楽シーンを大きく牽引する立役者の一人となります。1965年、フィルモアやウィンターランドといったライブハウスを立ち上げ、西海岸のロックシーンを生みだした男として知られるようになり、そこから出てくるのが「ジェリー・ガルシアとグレートフルデッド」や「ジャニス・ジャプリンとビッグ・ブラザー・アンド・ホールディング・カンパニー」などのバンドです。1968年、ニューヨークへフィルモア・イーストをオープンしたグレアムは、ライブハウスの運営に続いてツアーやフェスティバルのプロモーターも務め、1991年、惜しくもヘリコプター事故で60年の生涯を閉じるまで常にロック界のパイオニアであり続けました。余談ながら、彼が音楽シーンで有名人となる前、俳優修行をした時期もあった関係上、成功してからは何度も映画出演の機会が訪れます。ただ、回ってきたのはアル・カポネや悪辣なプロモーター(「コットン・クラブ」)などの役ばかりでした。



運命のカンボジア

今や6人の子供たちを育てる母親となったアンジェリーナ・ジョリー(写真)ですが、以前は子供が欲しいと思っていなかったようです。現在、長男のマドックス14歳とともにカンボジアで監督作「ファースト・ゼイ・キルド・マイ・ファザー」を撮影中のジョリーがインタビューで明かしたもので、転機はカンボジアで訪れたのだといいます。辛いカンボジア・カレーと揚げた魚とライスを食べながらジョリーが語ったのは、「奇妙なことなんだけれど、15年前、『トゥームレイダー(2001年)』の撮影でカンボジアへ行くまで子供が欲しいと考えたこともなかったし、妊娠したいとも思わなかったの。子供をあやしたことはなかったし、まさか自分が母親になるなんて考えも及ばなかった。でも、学校で遊んでいる時、この国のどこかに私の息子がいるって閃いたのよ。カンボジアを訪れて私の物の見方は変わったわ。学校で習わないような奥深い歴史が沢山あり、ここで学ぶべきことは多いと思ったの。ロサンゼルスでの私は空虚だった」のだとか。2001年、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の親善大使へ就任し、「やっと私の人生が軌道修正されたというか、私がいるべき場所へ戻ってきた」と感じることのできるカンボジアで彼女はマドックスを養子に迎えます。そして、その後は2人の息子と娘を養子に迎えたほか、ブラッド・ピットとの間に3人の実子が誕生し、6児の母親として、またUNHCRの特使として慈善活動へ尽力しているのです。ちなみに、いま撮影中の「ファースト・ゼイ・キルド・マイ・ファザー」は今年の末ネットフリックスでの公開を予定しており、カンボジアで起こった1970年の大量殺戮を子供の視点から描いています。ジョリーが監督の他、脚本の執筆へも参加し、彼女のキャリアにとって最も重要な映画だそうです。



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