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製作を急いだ理由
スティーブン・スピルバーグ(写真)監督が、メリル・ストリープ、トム・ハンクスと組んだ「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」は、他作品の製作スケジュールを調整してまで、スピルバーグが早期着手へこだわったという意欲作です。舞台は1971年、アメリカ初の女性新聞発行人であるワシントン・ポスト紙のキャサリン・グラハム(ストリープ)と編集主幹ベン・ブラッドリー(ハンクス)らが、ベトナム戦争に関する分析を記録した国防総省の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在を知り、社運と記者生命をかけて真実を世に発表しようとします。「スポットライト 世紀のスクープ(2016年)」のジョシュ・シンガーがリズ・ハンナと共同で脚本を手がけた本作をスピルバーグは、「脚本を読んで受けた印象は、これがジャーナリズムの英雄の物語であり、リーダーシップの物語だということだったよ。『リーダーはどう生まれるか? 決断を下すことへ前向きではないリーダーを前向きに変化させるようなひらめきは、どういうものだろうか?』・・・・・・キャサリン・グラハムの物語へ、そんな『変化』を感じ、心をつかまれたんだ」と語っています。スピルバーグが本作の製作を発表したのは、トランプ政権発足からわずか45日後、「この物語には現代との共通点がとても多いと考えた。だから、すぐ作って公開したかったんだ。また、こうも思った。全員が全力を出して集中すれば、短時間でも作れるはずだとね。出演者も監督も編集も作曲も美術監督も、全員が絶好調だった。短時間で作ったからこそ、撮影、そして物語へ力強いエネルギーを生み出すことができたんだ。ムダな部分がない作品だよ。最初から最後まで、速いスピードで進む物語だ。これまでの映画より短い期間で撮ったから、物語にエネルギーが満ちている」と自信満々です。
新ララ・クロフト
「リリーのすべて(2015年)」がアカデミー助演女優賞でオスカーに輝いたアリシア・ビカンダー(写真)は、「トゥームレイダー ファースト・ミッション」の主人公ララ・クラフトを演じるため、かなり過酷な肉体改造を行ったようです。ビカンダー曰(いわ)く、「私はチャレンジが大好き。だって女優だから。私の仕事の一部は、限界を押し進めることなの。もし人々が『驚かされた』と言えば、その反応は私を幸せにしてくれるわ。『私はこれが得意』という場合、繰り返すのを心地よいと感じるのは簡単よ。でも私は、これまで自分がやったものと違う役やキャラクターを作りたいと感じていたの。私はアドベンチャー映画を映画館で見るのがずっと大好きだったし、『インディ・ジョーンズ』や『ハムナプトラ』を見て育ってきた。若い時ダンスをしながら(ビカンダーはスウェーデン王立バレエ学校出身)、『こういった大きなアクション・シークエンスやスタントをやるのはどんな感じだろう?』とよく思っていたわ。そして今、それをやったのよ」ということです。本作へ挑むに当たって、「撮影を始める前の4ケ月間、週6日ジムで過ごしたわ。ただ強くなるだけでなく、動けるような身体が欲しかったの。ロック・クライミング、MMA(ミックス・マーシャル・アーツ)、少しボクシングをやって、泳いだわ。そして、自転車のトレーニングね。アーチェリーもたくさんやった。また、たくさん食べて体重を10〜12ポンド(約4.5〜5.4キロ)増やしたのよ。(こうした役作りは)私の仕事の大きな特権だと気づいたし、自分にはダンスをやってきた背景があるから楽しめたわ。本当の自分よりもあることへ長けているようなふりをするのが私の仕事、それは素晴らしい」と語るビカンダーにとって、ハードなトレーニングも体当たりの撮影も、すべてララ・クロフトを演じるための楽しいプロセスだったのでしょう。
エヴァンスの降板
「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー(2011年)」以来ヒーローのキャプテン・アメリカを演じ続けてきたクリス・エヴァンス(写真)が、同役からの降板を考えているようです。マーベル・シネマティック・ユニバースではフェーズ(段階)という区切りが設けられており、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ(2016年)」でスタートした「フェーズ3」は来年(2019年)公開の「アベンジャーズ」第4弾をもって幕を閉じることが決まっています。実際エヴァンスだけでなく、やはりアベンジャーズの主要メンバーであるロバート・ダウニー・Jr(アイアンマン)、マーク・ラファロ(ハルク)、スカーレット・ヨハンソン(ブラック・ウィドウ)、クリス・ヘムズワース(ソー)、ジェレミー・レナー(ホークアイ)らの出演契約もこれでいったん切れわけです。エヴァンスは、「電車は誰かから押し出される前に自分で降りたい」と語っており、「フェーズ3」以降のシリーズへ戻る予定はないとコメントしています。今年の秋、予定されている「アベンジャーズ」第4弾の再撮影が、キャプテン・アメリカのアーマーを着る最後の機会になるだろうと続けました。来月(今月)27日、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の公開を控えるエヴァンス、本来ならば、そこまでの出演契約だったのを「アベンジャーズ4」は「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」の「パート2」だからと説得され、契約を1本延長したそうです。今秋行われる予定の「アベンジャーズ4」の再撮影がエヴァンスへキャプテン・アメリカを演じる最後の撮影になるというので、ファンたちからは原作のコミックと同じく「劇中でキャプテン・アメリカが死ぬのかもしれない」との噂も飛び交っています。そのタイトル未発表の「アベンジャーズ4」は、2019年5月3日全米公開の予定。
性差別へ一石を投じた試合
「リトル・ミス・サンシャイン(2006年)」の監督コンビの最新作で、エマ・ストーン(写真)とスティーブ・カレルがともにゴールデン・グローブ賞へノミネートされた「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」は、女子テニス界の偉人として語り継がれる伝説のプレイヤー、ビリー・ジーン・キング(ストーン)と元男子テニス・チャンピオンであるボビー・リッグス(カレル)が対決した1973年の「性差を超えた戦い」を描いた実話に基づくドラマです。テニスの賞金は男女で大きな格差があった中、男女同権を訴えてテニス協会を離脱したキングは仲間たちと女子テニス協会を設立し、そんな彼女のもとへ人生の一発逆転を狙ったギャンブル好きで男性優位主義者のリッグスが戦いを挑みます。深夜に突然キングのもとへリッグスから電話が入り、試合の挑戦状として女性蔑視の言葉を投げかけて挑発してくるリッグスへ、一度は挑戦を拒否したキングですが、女性たちの期待を一身に受けて戦う決意を表明するのです。徹底的な役作りでキングを演じるストーンはもちろん、「フォックスキャッチャー(2015年)」でコメディ俳優から新たな道を切り拓いたカレルが本作でも見事な演技を披露。そこへ「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)(2014)」でストーンと共演したアンドレア・ライズブローがキングの秘書であり恋人のマリリン・バーネット役を演じる他、ビル・プルマン、アラン・カミング、エリザベス・シューらも出演しています。アメリカでは本作公開直後、大物プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラ問題が明るみに出て、いまだその余波は続いている現状です。45年前、スポーツ界へ蔓延する悪しき価値観を覆した物語を通し、いま一度「性差別」について考えてみるのも一考かもしれません。日本ではアメリカより約10ケ月遅れて7月6日の公開を予定しています。
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(2018年4月)
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