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ヨハンソンの新作
古くは「ロスト・イン・トランスレーション(2004年)」から最近のマーベル映画でのブラック・ウィドウ役で人気を誇るスカーレット・ヨハンソン(写真)が、先月(8月)末にイタリアで開催された第76回ベネチア国際映画祭で行われた新作「マリッジ・ストーリー」の公式会見へ出席し、同作に対して運命的なものを感じていると明かしました。この映画でジョハンソンは、「ブラック・クランズマン(2018年)」や「スター・ウォーズ・シリーズ」のカイロ・レン役などで知られるアダム・ドライヴァーと共演しており、2人が演じるのは女優のニコールとその良人で監督兼脚本家のチャーリーが直面する「離婚」に関する人間ドラマです。監督と脚本は「イカとクジラ(2005年)」や「フランシス・ハ(2012年)」などのノア・バームバックで、ヨハンソンとドライヴァーが俳優としての腕の見せどころであるかなり長めの会話劇のシーンもあります。会見場所へ登場したキャスト陣は大きな拍手で迎えられ、記者や司会者からの質問に答える中、2017年に自ら離婚を経験しているヨハンソンが、「この映画は、たくさんの人が共感できる内容がつまっていると思う。その時はまだ作品のことを知らなかったんだけれど、ちょうどノア(監督)と会った時、私自身が『離婚』へと向かっていて、ある意味で運命のようなものを感じたわ」と語っているのです。コンペティション部門へ出品された「マリッジ・ストーリー」は、ネットフリックスの製作で今年(2019年)の冬に配信されます。去年のベネチア映画祭でアルフォンソ・キュアロン監督作「ROMA/ローマ」がネットフリックス初の金獅子賞を獲得していることもあって、今年は本作の上映時にネットフリックスのロゴがスクリーンへ映し出されると観客から拍手が送られる一幕もありました。
タランティーノの引退
日本でも最新作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が公開中のクエンティン・タランティーノ(写真)監督が、そのインタビューで話題の引退発言についても語っています。本作はタランティーノが脚本の執筆へ5年の歳月を費やし、1969年のハリウッド黄金時代と、そこで起きた女優シャロン・テート殺害事件を絡ませて描いた物語です。主人公はレオナルド・ディカプリオ演じる落ち目の俳優と、ブラッド・ピット演じる盟友のスタントマンで、マーゴット・ロビーがテート役を演じています。「10作撮ったら引退する」と公言しているタランティーノは、インタビューでそのことを聞かれると、「ああ、劇場映画の映画監督として引退するつもりだ。だが、TV映画やTVドラマはやるかもしれないし、映画の脚本執筆や舞台劇もやりたいね」と即答しました。また、「フィルモグラフィー(作品歴)は貨物列車のようなもので、貨車が作品として連なっている。いま僕はすべての貨車を誇りに思っているよ。だからこそ監督としての引退を考えているんだ。誇りを持てる完璧なフィルモグラフィーを残したいから」と、引退理由を明かしています。そうすると彼が監督を務める映画は残り1本しかありません。余談ですが、タランティーノの初期監督作「パルプ・フィクション(1994年)」へ出演したジョン・トラヴォルタは、その最後の作品に出演することを熱望しているそうです。とはいえ、自ら監督へ「出演させてほしい」と直談判するつもりはなく、「クエンティン次第さ。それが彼のやり方だからね」と語っています。10作目についてはまだ詳細が明らかとなっておらず、トラヴォルタとしては彼の意向がタランティーノの耳まで届き、彼をキャステキングするよう祈るばかりだとか・・・・・・
ストリープは語る
やはり第76回ベネチア国際映画祭のニュースで、メリル・ストリープ(写真)が「ザ・ランドロマット −パナマ文書流出−」の公式記者会見へ出席し、作品に込めた熱い思いを語りました。やはりネットフリックス製作の本作は、世界へ衝撃を与えたパナマ文書事件を映画化したもので、「お金の秘密」を6つの章に分けてつづっています。ストリープが演じるのは事故で良人を亡くした未亡人のエレン、彼女の他、ゲイリー・オールドマン、アントニオ・バンデラス、「フレンズ・シリーズ」のデヴィッド・シュワイマーなどが集結しており、メガホンを取るのは「オーシャンズ・シリーズ」のスティーヴン・ソダーバーグ監督です。会見で本作を「ダーク・コメディー」だと紹介したソダーバーグが、「パナマ文書で明らかになった複雑な問題をジョークを交えて描いたので、観客は作品を楽しみながら学べるところがあると思う」と語ったいっぽう、ストリープは、「楽しくて、光るものがあって、とてもダークなジョークをみんなで伝えています。パナマ文書と絡む一連の事件は犠牲者がいて、その犠牲者の多くは、情報を発信しようとしたジャーナリストの人たちでした」と、犠牲者の名前を読み上げました。そして、会見で本作がネットフリックスの映画であることを質問した記者へ、「サイズは関係ないと思うわ。大きなスクリーンで観るほうが私は好きだけど、最近の子どもたちへそれが重要ではないみたいだし・・・・・・」と考えを述べています。横に座っていたオールドマンもこの話題へ加わり、「僕はTVが好きだな。最高の作品、演技、撮影、脚本、監督は今やTVにもある。もし、とても重要なら、なるべく多くの人へ届ける必要があるし、この作品もネットフリックスのおかげで、より多くの人へ届けられるだろう」とコメントしました。
ロウのローマ教皇
最後に第76回ベネチア国際映画祭のニュースをもう1つ。ドラマ「ザ・ニュー・ポープ」の公式会見へ、主人公のアメリカ人ローマ教皇にふんしたジュード・ロウ(写真)が出席しました。会見でイタリア人記者から、「今作のローマ教皇と(『ファンタスティック・ビースト・シリーズ』で演じている魔法使い)ダンブルドアのような魔法使い、どちらを演じるのが大変ですか?」と聞かれたロウは、「どちらの役でも、それぞれ様々な挑戦がある。どちらも役についてたくさん研究しなくてはならないし、共通点としてどちらもパワーを持っているけれど、そのパワーの使い方が違うんだ。だけど演じる際、意識する基本的なことは脚本がどういったもので、誰が監督なのか? この作品も楽しかったよ」とコメントしています。また、予告編での白い海パン一枚だけの姿について聞かれたロウは、「驚くかもしれないが、僕はこの新シリーズであの白い海パンよりも小さい衣装で出ているシーンがあるんだ。それは1枚のテーブル・ナプキンなのさ。写真まで撮ってしまったよ。今まで僕が渡された衣装の中で史上最小であることは間違いない。僕が衣装担当へ『今日の衣装は何?』って聞いたら、彼女が笑いながら1枚のナプキンを見せたんだぜ! 今日、撮影だったら良かったのに、撮った時はちょっと寒かったからね」と身振り手振りを交えて語りました。やはりロウが主演した「破天荒な史上初のアメリカ人ローマ教皇が誕生したら?」という設定の「ヤング・ポープ 美しき異端児」に続く本作は、「グレート・ビューティー/追憶のローマ(2013年)」や「グランドフィナーレ(2015年)」などのパオロ・ソレンティーノ監督がメガホンを取り、映画祭の特別枠として新シリーズの第2話と第7話がプレミア上映されたものです。
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(2019年9月)
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