映画とウェブサイト (下)


 1月に「映画とウェブサイト(上)」を書いて以来、当「ハリウッド最前線」のヒット(アクセス)件数は相変わらず着実な延びを示しており、1月が17万弱、2月は18万を、3月は20万を、そして先月は24万を突破した。開設以来の総ヒット件数が200万の大台に乗ったのも、みなさんのご支援の賜(たまもの)である。ここで改めて感謝の意を表したい。

 さて、前回同様、今回の「テーマソング」は家庭の事情をバラすべく「ウェブサイト」の話の続きだ。自分でハイパー・テキストまで書く(つまり、ウェブサイトを作る)気のない私が、なぜウェブマスターへ至ったかという事情は前回述べた。それから半年を過ぎた一昨年の夏、3Dページを追加し、そのページが現在まで予想もしない人気を保っているのは、私にとって2つの理由から意外である。

 まず、3Dページを作成するきっかけそのものが、たんなる偶然といおうか、些細な出来事なのだ。ある日、コンピュータ会社にいる私の知り合いと会った時、たまたま自分が持っていたウェブマスター用の雑誌を、内容は自分と関係なく、また私が新米ながらウェブマスターと知る彼は、「読んでみますか?」と言って私にくれた。私自身、まだウェブマスターとしての自覚がなく、軽い気持ちで貰った雑誌を持ち帰り、寝る前に読んでみると「3D特集号」、これはインターネット上で3Dを表現するVRML(バーチュアル・リアリティー・モデリング・ランゲージ)が、まだ開発段階で今ほど普及していなかったタイミングと無縁ではない。

 新しいテクニックとして3Dを紹介した、この特集号がウェブマスターを対象としている以上、同じ紹介でも、内容はVRMLの構造や、その活かし方を説明したり、簡単な作例まであった。これより後の時期だと、そうした初歩的なノウハウが、ウエブマスターならある程度は常識となってくるため、この専門誌がわざわざ紹介することはなかっただろう。

 作例は四角いキューブと球体を空間に浮かべた、ごく単純なものであったが、おかげでVRMLの基本的な構造はよく理解できた。また、いくら単純でも、実際それを自分が作成してみて、コンピュータ上で映像となったのを見る感動は大きい。その感動が、より複雑な3次元世界へと挑戦させた結果、翌朝には「ハリウッド最前線」のメニューを3次元化した私のVRML第1作が誕生する。それはブルーページの「タワー」として今も健在だ(ただし、VRMLが進化したおかげで、現在のプラグインでは元の形が崩れてしまうことは後述)。

 続いて、部屋のモデルを作成し始めた私は、2日がかりでVRML第2作を仕上げ、それが同じくブルーページの「ダンジョン入口」である。VRMLの原理は、数字で縦横奥行きを指定した点の羅列が形を作ってゆく。したがって、製作工程のほとんどは数字の計算であり、この「ダンジョン入口」を完成するまでに、びっしり数字を書き殴った紙が、少なくとも100枚は貯まった。こうして数日後、3Dなど何も知らなかった私が2つの作品をサイトへ加えたものだから、CBSのデザイナー連中は、いよいよ私を変態視(?)し始める。

 未だ納得できるHTML(ハイパー・テキスト・マークアップ・ランゲージ)作成ソフトがないため、私の場合、すべて「メモ帳」を使った手書きであるのと同様、VRMLも3Dソフトは使っていない。CBSでちょっとした修正を加えているのを見た他のウェブマスターが、最初は数字の羅列に何のファイルか不思議がった。それがVRMLだと知って、HTMLは手書きの彼らも呆れたようだが、こっちは先入観がないだけ強いわけだ。

 問題は手作りであるため、ちょっとした修正も手間取ってしまう。たとえば、それが部屋なら、ファイルを見てそれぞれの数字はどのポイントを指すか把握する必要がある。把握しない限り、修正箇所は見つからず、またファイルの数字が相対的なものである以上、壁を1メートル移動するなら、そのファイルでは1メートルがいくつか知らなくてはならない。そればかりか、一昨年の夏からはVRMLそのものが、かなり進化しているおかげで、途中からファイルで様々な情報を指定してゆく順序へ制約を受けるようになったりする。すると、修正のための原因追及が、これまた楽ではない。

 3Dのプラグインがバージョンアップされた結果、ファイルで指定した情報は正しくても、それが映像へ反映されなくなることはよくあった。そのつど原因を追及し、結局、書く順序をちょっと変えれば直るようなケースがほとんどだ。しかし、どう変えるかは試行錯誤の末、見つけだすのであって、理論的な裏付けがない。つまり、下手をすれば解決まで何週間かかかることもある。たとえ1時間で解決できる問題だとしても、いざ取り組む時は、それだけの覚悟がいるとおわかりいただけたであろうか?

 NetscapeMicrosoftの3Dプラグインが今のバージョンへ変わって以来、先の「タワー」はわけのわからない画面になる。それが未修理のままというのは、こういう家庭の事情があるからだ。つでにバラすと、最初は2部屋続きだけの「ダンジョン入口」へ地下室を加える際、階段を取り付けた。その壁の大理石が、よく見ると一部間延びしたような不自然な絵柄なのは、壁に大理石を指定するための計算が複雑で、まだ終わっていないからである。いったんアップロードをしてインターネットへ乗ると、つい億劫になってしまう。

 同じような問題は、3Dプラグインのバージョンアップで「スタートレック」のエンタープライズ号からレーダーが離れたり、「原子力潜水艦」の1隻はスクリュー等が妙なところへ移動したり、いくつかあった。これら未修理の問題点をお気づきのかたは多いと思うが、追々直してゆくので、そこは1つご容赦いただきたい。

 前回も書いたが、「ハリウッド最前線」の実状は私1人の家内工業であり、サイト規模が大きくなればなるほど管理の行き届かない部分は出てくる。その結果、おのずと優先順位のようなものが私の頭で出来てゆく。いい例は、先月からデザインを一新した「ポスター・ペ−ジ」で、3Dページの修理より、まずこうした新しい創作部分へエネルギーを費やすほうが、読者のかたにも喜んでいただけるのではないだろうか?

 ともあれ、こうした「MYページ」が誕生する時やその後の経緯(いきさつ)から、訪れる読者はほとんどいないだろうと予想していたのが、冒頭で3Dページの人気は意外だと述べた理由の1つだ。そして、現在のVRML自体、まだまだ一般読者の馴染むレベルからほど遠いと思っていたのが、もう1つの理由である。いくら早くなったとはいえ、ページが起きるまで、かなり手間取り、今も進歩途上のVRMLは仕様が統一されていない部分も多い。Netscapeで機能してMicrosoftは駄目といったことが、一般の読者へ近寄りがたい要因になりそうでありながら、「MYページ」は「ハリウッド最前線」のヒット件数トップ20常連というのが現実なのだ。

 訪れて下さったかたのためにも、ついつい修理は後回しとなっているが、3Dを軽視するわけではないことをお断りしておく。いろいろな構想があるので、今後、それらはみなさんがご覧になるページへ反映されてゆくはずだ。どうなるかは、こうご期待!・・・・・・というわけで、そろそろ今回のエッセイを終わりたいと思う。テーマの「ハリウッド最前線」が映画のウェブサイトという以外、映画そのものはいっさい登場せず、読み終わった読者のかたから、どこが「映画とウェブサイト」だとお叱りを受けそうなエンディングではあるが、悪しからず!!

横 井 康 和      


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