映画と画像


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洋画ポスター vs. 邦画ポスター
 ここしばらくはハリウッド映画邦画の違いについて書いてきたが、今月は映画そのものでなく囲りの状況の違いといったことに触れてみたい。1996年1月、この「ハリウッド最前線」を立ち上げて以来、10年間でインターネット上の映画関連のデータベースは目覚しい発展を遂げた。ただ、日米を比べた場合、日本のほうが少なくとも数年は遅れている。画像の充実度なら、それどころの開きではない。

 日本のホームページで画像が比較的少ないのは、何も映画関連ばかりではないが、映画の性格上、データを調べる時は画像のあるなしがそのデータベースの使い出をかなり左右する。たとえば、公開前にその映画の雰囲気を知りたい時はポスターを見るのが手っ取り早い。映画ポスターは、もともと街の中に張り出されたりする性格上、パブリック・ドメイン(公共物)と見なされるのか、洋画の場合インターネット上で検索するのは簡単だ。

 それでも、「ハリウッド最前線」オープン2年目からポスター・ページを新設した頃は、今とだいぶ状況が違っていた。当時、特定の映画ポスターを個人のホームページへ掲載している以外、まとめてポスターを検索できるサイトのほとんどは「サイバーシネマ・ポスターショップ」に代表される販売が目的のページであった。つまり、そのサイトで売っているポスターの見本として掲載しているのだ。そういった目的から考えると、客の購買意欲をそそるため画像のサイズはそこそこ大きいほうが有利である。

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「ムービー・ポスター・アワード」
のホームページ
 結果、在庫ポスターを縮小画像(サム・ネイル)でズラリとならべ、拡大画像はそれをクリックすると表示されるのが当時のパターンだった。つまり、レパートリーは必ずしもヒット映画のポスターと限らず、在庫のあるなしで左右されるため、目指すポスターを見つけるまでの手間がかかると覚悟しなくてはならない。かくいう「ハリウッド最前線」のポスター・ページですら、当初、販売が目的であったのだから・・・・・・

 こういった状況はインターネットの急激な発展とともに間もなく変わってゆく。自ら映画ポスターのネット販売を体験したおかげで断言できるが、希少価値のあるオリジナル・ポスターでなく再生(リプリント)をインターネット経由で買おうとする人間の数は、たかだか知れている。いっぽう、それらのポスターを見たいだけの人間の数なら、比較にならないぐらい多い。

 そうすると見せるだけのポスターを品揃えして動員数を稼ぎ、スポンサーをつけたほうが商売としての可能性も桁違いに広がるのは自明の理だ。案の定、'90年代後半へ差し掛かると、販売を目的としないで、かつ品数豊富な映画ポスター・サイトが増え始めた。「ポスター・イメージ」の他、「ムービー・ポスター・アワード」や「ムービー・ポスター・ウェアハウス」は、その後、更に内容が充実してゆく。

 「ムービー・ポスター・アワード」など、今や新作ポスターばかりでなく、その週の全米トップ10まで紹介するいっぽう、過去のポスターが見たかったら年代別で検索できる立派なデータベースなのだ。また、最近はポスター・サイズも更に大型のものが追加され、詳細まで見ることが出来る。たとえば、今月の「お先に失礼!」でご紹介している「サイレント・ヒル」のポスターの場合、縮小画像のサイズは68×100ピクセル(「ハリウッド最前線」のポスター・ページで100×150ピクセル)、拡大画像が510×755ピクセル(「ハリウッド最前線」のポスター・ページで330×480ピクセル)、今ではそこへ更に大きな1013×1500ピクセルが加わった。

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「ムービー・ポスター・ウェアハウス」
のホームページ
 メジャーの洋画はほとんど揃っている「ムービー・ポスター・アワード」でも、ポスターの種類によって見つからない時がある。そんな時は「ムービー・ポスター・ウェアハウス」を探せばいい。クラシック映画のポスターだと、むしろこちらのほうが品揃えは豊富だ。このところ、洋画なら大概のポスターがこれら2つのサイトで簡単に見つけられる反面、そこでいつも思うのは邦画ポスターとの落差の激しさである。

 たとえば、今年の日本アカデミー賞で作品賞その他を獲得した「ALWAYS 三丁目の夕日」が、いったいどのようなポスターなのか検索しても縮小版以外はなかなか見つからない。なんとか330×480ピクセル程度なら探し出せたが、1013×1500ピクセルのような大型ポスターはまず期待できないのである。それより、「Yahoo! Japan」や「Google」などの検索エンジンで「映画ポスター」を探すと、ある程度品数が揃っているサイトは販売が目的で、データベースの域とは程遠いのだ。

 こうした日米の開きが生じるそもそもの原因は国民性の違いといえばそれまでだが、かといって日本の映画ファンだってデータベースは求めているのだろう。じっさい、この「ハリウッド最前線」で現在一番人気のあるのは「ハリウッド・ベスト10」と「ポスター・ページ」、次が「最新情報」なのである。上位はどちらもデータベース的な性格のページというのも、それだけ日本で画像を含めたデータベースが不足しているのではないだろうか?

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洋画の俳優 vs. 邦画の俳優
 ポスターともう1つ、日本の場合、俳優を検索している時も画像の少なさが目立つ。あの女優、この男優は、いったいどんな顔をしているのだろうか? あの映画では、いったいどんな役なんだろうか? 公式の場へ、どんな格好で出席しているのだろうか?・・・・・・たとえば、アメリカの「Yahoo! Movies」で渡辺謙を検索すれば、写真だけでも40枚あり、経歴にはその生い立ちから白血病に倒れて奇跡のカムバックを果たす経緯までが詳しく載っている。いっぽう、日本の「Yahoo! ムービー」は、写真1枚ないおそまつさだ。

 また、アメリカだと「Yahoo! Movies」ばかりか「IMDb(インターネット・ムービー・データベース)」という、映画ではインターネット上、世界最大規模のデータベースがある。こちらも日本の「Yahoo! ムービー」と桁違いで渡辺に関する情報は多い。日本の俳優ですらこの状態だから、ハリウッドの俳優たるや違いが予想できるはずだ。特に「世界の女優」ページで使えそうな写真を探す時など、その違いを痛感させられる。

 試しに、いくつかの検索エンジンで「Marilyn Monroe Images」および「マリリン・モンロー 画像」を検索した結果と、「Ayako Wakao Images」および「若尾文子 画像」や「Ruriko Asaoka Images」および「浅丘ルリ子 画像」を検索した結果を比べてみるといい。まず、言えることは見つかるホームページ数が違う。ハリウッドの女優の場合、モンローも含めてファンの作ったその女優のオフィシャルでないページが目立つ。そして、それらのページのほとんどは多くの画像を紹介している。かなり質のいい画像を取り揃えたページも少なくない。

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「セクシー・デスクトップ」
のホームページ
 これが「Lindsay Lohan Images」および「リンゼイ・ローハン 画像」や「Jessica Alba Images」および「ジェシカ・アルバ 画像」と「Aya Ueto Images」および「上戸彩 画像」でも変わらないどころか、むしろ大きく開く。日本の若い女優を往年の女優と比較すれば、けっこう画像は見つかるが、ハリウッドの若手たるやそれどころの比ではない。つまり、世代がどうあれ、雲泥の差とはこのことだ。

 そういったオフシャルでないファンの女優ページ以外、いわゆるデスクトップ用の「ウォールペーパー」として女優の画像を掲載したページも日本だとセレクションが極端に貧しい。その点、たとえばイギリスの「セクシー・デスクトップ」というウォールペーパーのページなど、網羅した女優の数と内容の豊富さでは群を抜いている。吉岡美穂という女優の存在を私が知ったのも、じつはこのページで、それから初めて彼女の出演作である「巌流島 -GANRYUJIMA-(2003年)」や「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS(2003年)」を見たぐらいだ・・・・・・見ないほうがイメージは良かったかもしれないが?

 ハリウッドと日本の俳優の画像を巡って、もう1つ思うことは、庶民レベルでの著作権に対する価値観の違いである。「本音」と「建前」の二重構造がハッキリしている日本では、たとえマスコミが著作権侵害の問題を騒ぎ立てようと、インターネット上の非合法な映画のダウンロードにかけてはドイツ、イタリア、フランスを抜いて世界のトップ・クラスなのだ。「WinMX」や「Winny」に代表される「P2P」と呼ばれるファイル交換ソフトで映画を検索してみると、その現状がよくわかる。

 非合法なCDの製造販売なら世界のトップをゆく中国でさえ、庶民レベルはまだインターネット上で映画のやりとりをするまで至っていない。反面、日本は政府やマスコミがいくら著作権侵害の問題を取り上げ、はたまた京都府警はインターネットの非合法なダウンロードを防ごうと躍起になっても、現状は(つまり庶民レベルでは)世界のトップを走っている。ところが、映画のポスター俳優の写真は極端に少ないところをみると、考えられる理由は2つ・・・・・・庶民レベルがそれを求めていないか、あるいは映画のポスターや俳優の写真に関してのみ著作権への倫理観が強いかのどちらかだ。

 結局、コンピュータを含めてインターネットを利用する年齢層が、日本はアメリカと比べてどれだけ低いか画像処理が身近な人間の絶対数が、日本はアメリカと比べてどれだけ少ないか著作権の受け取り方が、日本はアメリカと比べてどれだけ違うか!・・・・・・こうした要素が邦画と洋画の間の壁を高くしているのだと思う。

横 井 康 和      


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