サファリで世界を!


画像による目次はここをクリックして下さい  本題へ入る前に、まず前回の「マイクロソフトへのリベンジ」の追記です。多くの企業が「Microsoft Office」から「OpenOffice,org(オープン・オフィス)」へ乗り換え始めている現在、やはりマイクロソフト社の脅威になりそうな無料オフィス・スイートは、まだあと2つあります。IBMが去年から無料のオフィス・スイート「Lotus Symphony」をオンラインで提供している他、あのGoogleも「Googleドキュメント」で勝負をかけてきました。

 まず、「Lotus Symphony」のほうは、IBMのコラボレーション・スイート「Lotus Notes 8」の一部であるワープロ、表計算、プレゼン・ソフトで構成されたオフィス・スイートで、前回ご紹介した「OpenOffice.org」がベースとなっており、ファイル形式は「ODF(OpenDocument Format)」を採用している他、「Microsoft Office」と互換性があるのはいうまでもありません。そして、もう1つの「Googleドキュメント」も、「Microsoft Office」と互換性があるワープロ、表計算、プレゼン・ソフトで構成されています。

 ということで本題へ入ると、去年からオフィス・スイートばかりではなくブラウザ(閲覧ソフト)でも新たな動きが出てきました。「マイクロソフトへのリベンジ」というほどのインパクトはありませんが、'90年代はブラウザの主流であった「ネットスケープ」がマイクロソフト社の「IE(Internet Explorer)」に押されて、ほとんど姿を消して以来の目立った動きといえば、どうしても興味は引かれます。それがアップル社独自のブラウザ「Safari」の登場というわけです。

 では、これまでのブラウザと比べてどこがどう違うのかといえば、アップル社曰(いわ)く、「あらゆるプラットフォームのWebブラウザの中で最速のSafariは、Firefox 2の最大3倍、Internet Explorer 7の最大2倍、Opera 9の最大5.5倍のスピードでページを読み込めます。また、JavaScriptの実行速度はFirefox 2の最大4.5倍、Internet Explorer 7の最大7倍、Opera 9の最大5倍です。というわけで、ページの読み込み時間が短いSafariなら、思う存分ネットサーフィンを楽しめます」と、一番のうたい文句は、そのスピードです。じっさい使ってみると、そこまでの速さが実感できないとはいえ、確かに他社のブラウザと比べてスピードが速いのは嘘でもありません。

 2番目の特徴が「エレガントなユーザインターフェイス」、これはブラウザの枠の幅がわずか1ピクセルで、スクロールバーは必要な場合のみ表示されるため、ブラウザでなくコンテンツへ集中できるというのですが、私自身は他のブラウザだって余計なものをいっさい表示せず、最大限のスペースを確保するようセットアップしてから使い始めるので、これがSafariだけに限った特徴だといえば言いすぎでしょう。またエレガント云々は、個々のユーザーが決めることです。加えて、コンテンツへ集中できるか否かは、ブラウザの些細なデザインの違いより使っているモニターのサイズが決め手となります。

 3番目の特徴である「簡単なブックマーク」などは、ブックマークとコンテンツの両方を表示できるIEと比べ、むしろSafariの大きな欠点です。ブックマークが独立したページとしてブラウザへ表示されるSafariは、ブックマークだけをとれば確かに管理しやすいかもしれません。同じアップル社のiTunes同様、ワンクリックで同じウィンドウにインターフェイスが開き、iTunesで曲をブラウズ、検索、整理するごとくブックマークをブラウズ、検索、整理できます。ただ、この機能はIEの発想の原点である現在のエクスプローラを見るまでもなく、ウィンドウズが初期のバージョンから備えており、だからこそマイクロソフトは自社ブラウザのブックマーク機能へアップル社のようなアプローチを取らなかったぐらいです。

 つまり、「簡単なブックマーク」を裏返せば、それを独立したページとして扱うことで管理がしやすく、かつ構造上、簡単な設計で済むためスピードは速くなります。その代わり、いちいちブックマークを開く手間がかかり、IEのような同じウィンドウでブックマークとコンテンツを表示することで可能な迅速なブラウザは出来なくなります。何事も二面性があり、スピードを優先したSafariは、そのツケが回ってくるのはしかたなく、長所のみを強調して売り込まれても、そこへ短所が潜んでいる以上、単純に信用してはなりません。

 その他、Safariの売り文句がいろいろあるのはさておき、各機能の長所と短所を秤にかけると、スピードが掛け値なしに唯一の長所といえそうです。もっとも、スピードアップを図った結果なのかどうか、マイクロソフト社独自のHTML(ハイパー・テキスト・マークアップ・ランゲージ)機能はサポートしていませんが、これはIE以外のどのブラウザでも共通しています。したがって、問題と捉(とら)えるか否かユーザー次第でしょう。たとえば、この「ハリウッド最前線」の「聖林写真館」や「横井恵美写真集」がマイクロソフト社独自のHTML機能を使っているため、Safariを含めた他のブラウザでは本来の形でスライドショーを楽しめません。しかし、スライドショーへ興味のないかたなら、まったく問題にならないわけです。

 かつてブラウザの代名詞だったネットスケープが、IEの台頭でマイノリティーへ転落し、新しいヴァージョンで起死回生の勝負に出た時は、それが私のようなユーザーへ見切りをつけさせる致命傷となりました。1996年1月に「ハリウッド最前線」を開設して間もなく、インターネットの世界ではVRML(バーチャル・リアリティー・モデリング・ランゲージ)というコンピュータ言語で作成した3Dページが話題となっており、「ハリウッド最前線」の売り物の一つでもあったのです。その3Dページをブラウザで表示するためのプラグインは、ネットスケープが一番使いやすく、他社はVRMLから遠のき始めた後もがんばり続けていました。

 結局、日本語システムなら一太郎のほうが好きでも、最後は様々な必然性からマイクロソフト社のワードへ移行したごとく、ネットスケープが新しいヴァージョンで勝負に出る時点で、とうとうVRMLを捨てた瞬間、私とネットスケープの付き合いも終わっています。その後、IEは圧倒的なシェアを誇り、現在に至るまで独占体制が続いており、そこへ登場したSafariは、はたしてどこまで食い入ることが出来るのか興味津々です。ただ、マック派とウィンドウズ派の競っていた昔と違って、今やマイクロソフト社はアップル社の叔父のような存在かつ両者が同じインテル社のプロセッサを使う時代なので、アップル社のマイクロソフト社に対する遠慮のようなものも窺(うかが)えます。

 また、面白いのはアップル社の「Safari」ページを見ると、ブラウザのサンプル画像でヤフーのホームページが使われていることです。冒頭で触れたオフィス・スイートはどれもグーグル社との連携プレイで、マイクロソフト社と敵対している現状を露骨に反映しています。それらが新しい時代の波を代表しているとすれば、ヤフーを買収しようとするマイクロソフト社は時代から取り残されまいとあがく旧勢力と見えなくもありません。Safariがサンプル画像でヤフーを使う状況は、いわば勢力図の象徴といえそうな気もするのですが?・・・・・・ともあれ、一介のユーザーとしては快適なネットサーフィンが楽しめれば良く、結論はただ一言、「サファリで世界を!」


お断り 

これらのテクニックを試される場合は、みなさん個人の責任でお願いします。何かの手違いからWindowsが動かなくなったとしても責任は取りかねます。また、読者からのご質問、ご相談へは、当「ハリウッド最前線・サイバークラブ」の会員の皆様を除いてお応えいたしかねますので、それらの点をご了承ください。

横井康和        


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