牡蠣食えば・・・


 秋といえば柿・・・・・・と同時に生牡蠣のシーズンでもあります。その生牡蠣のシーズンは今月が最後です。もっとも生牡蠣そのものは一年中捕れ、真夏の海岸で捕りたての牡蠣をその場で開いてはレモンをかけて食べ、また捕るのというのもおつなもの。日本の場合、月の英語名の最後へ「ber」が付く9月から12月がシーズンと相場は決まっていますが、暑い季節はどうしても傷みやすいからでしょう。

 その点、生牡蠣が好きな人にとってアメリカは夢のような国です。一年中食べられて、種類が多く、日本で絶滅したクマモト牡蠣まであり、値段は日本より安いと思って間違いありません。ただ、日本で見かける巨大な岩牡蠣など、料理の材料として使う牡蠣となるとやや事情が違い、こちらではほとんど見かけません。しかし、丸ごと食べる生牡蠣なら(レストランで)1個250円から300円ぐらいで手軽に味わえます。そこで今回ご紹介するのが、ロサンゼルスで美味しい生牡蠣を食べさせてくれるお店です(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

Santa Monica Seafood Market, Oyster Bar
画像による目次はここをクリックして下さい
■Santa Monica Seafood Market, Oyster Bar

www.santamonicaseafood.com/content/santa-monica
1000 Wilshire Blvd., Santa Monica
310-393-5244

 サンタモニカ・シーフードが正式に設立されたのは1939年ですが、その歴史は1898年まで遡(さかのぼ)ります。この年、イタリアのナポリからサンペドロへ移住したばかりのジョン・デルーカが漁師になると決めました。そして、漁業で家族を養ううち長男のジャックも加わり、家族操業の原型は固まってゆくのです。

 それから4世代を経て今の形へ至るまでに、ジャックや彼の義理の兄弟であるジェラルド・シグリアーノ、また実の弟のフランクなどが加わって、たんなる漁業から魚の卸業やサンタモニカ・ピアーでの小売まで手を広げます。こうしてサンタモニカ・シーフードはいったんその形を整えるや、ジャックや兄弟の努力の甲斐あって南カリフォルニアで最大の卸業者へと成長し、本社を兼ねた店がトゥエルブス通りとコロラド通りの角にオープンするのでした。

 ここでは卸売と小売の両方をやっていましたが、小売のみを現在の場所へ移すまでカフェとオイスター・バーまで手を広げていません。1985年にはオレンジ郡へ2軒目の卸売と小売店をオープンし、そこからパームスプリングス、サンディエゴ、ラスベガスに拡張していった後、コスタメサへ初めて小売だけの店を出したのが1997年のことです。21世紀に入ってからも、事業を拡張し続けるサンタモニカ・シーフード、ロサンゼルスで生牡蠣を食べたい時のファースト・チョイスと言えるでしょう。

画像による目次はここをクリックして下さい
#1
画像による目次はここをクリックして下さい
#2
画像による目次はここをクリックして下さい
#3
画像による目次はここをクリックして下さい
#4
画像による目次はここをクリックして下さい
#5

 写真は左から「その日の牡蠣のセレクション(#1)」、「牡蠣3種類(#2)」、「ニューイングランド・クラムチャウダー・スープ(#3)」、「シーフード・シチュー(#4)」、「フィッシュ&チップス(#5)」、筆者が断っているだけで、ふつう生牡蠣には写真のホース・ラディッシュの他、カクテル・ソースも付いてきます。

L&E Oyster Bar
画像による目次はここをクリックして下さい
■L&E Oyster Bar

www.leoysterbar.com
1637 Silver Lake Blvd., Los Angeles
323-660-2255

 ロサンゼルス出身のスペンサー・ベザイアは、ドイツ人、フランス人、日本人の血が混ざっており、小さい頃は日本人の祖母が料理を作るところや母親が庭で野菜を栽培するのを見て育ちました。高校を卒業した彼は、パサディナのコルドン・ブルーへ入学し、本格的に料理の勉強をします。在学中、インターンとしてシルバーレイクの「カフェ・ステラ」で実務をこなしたのがきっかけとなって、2008年の卒業後はカフェ・ステラのチーフ・シェフとなるのです。

 3年間、カフェ・ステラで様々なフレンチを試みたベザイアが店を辞め、数ケ月間、「ヘアルームL・A」でソーセージなどを作りながら出前(ケイタリング)へも係わった後、ダスティンとテイラーと共にこの「L&Eオイスター・バー」をオープンしたのが今年(2012年)の初めでした。

 以来、チーフ・シェフとしてシーフード中心のメニューを創作しながら、東海岸から西海岸へ至る全米の牡蠣業者(オイスター・ファーマー)と密な連絡を取り、ロサンゼルスでもっとも新鮮な牡蠣を提供すべく努めています。新鮮な牡蠣は生でもグリルでもフライでも美味しくいただける他、エビやダンジネス・クラブはスチームで、またカラスガイやニジマスはスモークでと、それぞれの食材を活かした調理法が他の店とは微妙に違う味わいです。

画像による目次はここをクリックして下さい
#6
画像による目次はここをクリックして下さい
#7
画像による目次はここをクリックして下さい
#8
画像による目次はここをクリックして下さい
#9
画像による目次はここをクリックして下さい
#10

 写真は左から「ハッシュ・パピー(#6)」、「生牡蠣(#7)」、「ベイクド・オイスター(#8)」、「牡蠣フライ(#9)」、「クラムチャウダー・スープ(#10)」、ここのクラムチァウダー・スープは貝が殻ごと入っているのが特徴です。

The Boiling Crab
画像による目次はここをクリックして下さい
■The Boiling Crab

www.theboilingcrab.com
3377 Wilshire Blvd. #115, Los Angeles
213-389-2722

 すべての始まりはテキサス州南東の片田舎シードリフトの街でした。人口わずか2千人のシードリフト、ヨー・ダディーと彼の一族がそこには住んでおり、漁師として牡蠣、蟹、海老などの海産物で生計を立てていたのです。ちょうど映画「フォレスト・ガンプ/一期一会(1994年)」へ登場する漁師の感じで、日々、ハードワークに明け暮れ、週末が来るとその週の収穫をビール片手に祝うのでした。

 いっぽう、カンサス州出身のヨー・ママは1995年、ヨー・ダディーと出逢うまでシーフードとほとんど縁がなかったものの、もともと彼女は社交的で料理と食べることが好きなタイプで、彼らのバックヤードへは毎週多くの人が集まり、それが高じて2004年、「ボイリング・クラブ」の1号店をオープンしたのです。それから8年後の現在、テキサス州に2店舗、カリフォルニア州に4店舗、ネバダ州ラスベガスに1店舗のチェーン展開をし、間もなくカリフォルニア州へあと2店舗オープンします。

画像による目次はここをクリックして下さい
#11
画像による目次はここをクリックして下さい
#12
画像による目次はここをクリックして下さい
#13
画像による目次はここをクリックして下さい
#14
画像による目次はここをクリックして下さい
#15

 写真は左から「ビニール袋に入って出てくる料理(#11)」、「生牡蠣(#12)」、「海老(#13)」、「ダンジネス・クラブ(#14)」、「クラム(#15)」、その他、キングクラブ・レグも超ダイナミックに出てきます。

 以上、たった3軒の生牡蠣を食べさせる店をご紹介しただけですが、その背景は様々です。イタリアのナポリがルーツの「サンタモニカ・シーフード」、日本人の祖母から学んだ家庭料理とコルドン・ブルーがルーツの「L&Eオイスター・バー」、そしてテキサスの片田舎がルーツの「ボイリング・クラブ」、牡蠣をお好きな方へはどの店もぜひお薦めです。

横 井 康 和      


Copyright (C) 2012 by Yasukazu Yokoi. All Rights Reserved.

バルセロナ・ナイツ 目次に戻ります プライベート・ディナー