映画と珍記録


 様々な映画関連の賞に輝くという記録ならいいのだが、あまり褒められない記録保持者のスターも少なくない。今回の「テーマソング(エッセイ)」は、そういった記録保持者たちを何人か選んでご紹介したいと思う。
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メル・ギブソン

 一番手がメル・ギブソン(写真)、彼は2006年、酔っ払い運転で捕まった際、ユダヤ人へ人種差別の暴言を吐いた結果、同年「最悪の酔っ払い」記録を樹立した。後日、自らの態度を反省し、詫びたものの、時すでに遅し。今でこそ、よくある「ネット上の炎上」の典型であった。この一軒でギブソンが多くのファンを失くしたばかりか、俳優業へも致命的なダメージを受けたことは広く知られている。

 もともと熱心なカトリック教徒で純潔運動家としても有名な彼が、私財30億円を投じてイエス・キリストの最期を描いた「パッション(2004年)」を製作して空前のヒットとなった後だけに皮肉な事件であった。ばかりか、2010年のガールフレンドへの暴力事件でエージェントから契約を破棄され、ほとんど干されながら、ほぼ年1作のペースでコンスタントに銀幕(シルバー・スクリーン)へ登場しているあたりはさすがだ。

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アンジェリーナ・ジョリー
 続いての記録はアンジェリーナ・ジョリー(写真)が樹立した「もっともヌード・シーンの多い女優」、これは意外な方が多いかもしれない。ブラッド・ピットと円満な家庭を築き、養子を含めて子沢山の彼女は確かに「ヌード女優」のイメージと違う。

 しかし、「フォックスファイア(1996年)」、「狂っちゃいないぜ(1999年)」、「ポワゾン(2001年)」、「テイキング・ライブス(2004年)」、「ウォンテッド(2008年)」、「チェンジリング(2008年)」で脱いでいる他、「ベオウルフ/呪われし勇者(2007年)」のCGで描かれた彼女のヌード・シーンもずいぶん評判になった。
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マーティン・シーン

 ハリウッドのどの俳優より逮捕歴が多いのはマーティン・シーン(写真)である。ばかりか、そのほとんどが公民権抗議の逮捕なのだ。2009年の時点で、その回数たるや、なんと66回にも及ぶ。ハリウッド広しといえど、そこまで徹底して公民権抗議を行い、かつ逮捕されたハリウッド・スターはいない。

 そんなシーンなので、公民権運動で知られるマーティン・ルーサー・キングの映画「グローリー/明日(あす)への行進」にもクレジットなしで出演している。その他、今年の出演作が「バッジ・オブ・オナー」、タイトル未定のウォーレン・ベイティ主演作、TVシリーズ「グレイス&フランキー」、「ヴェッセル」、TV映画「リベンジ・オブ・ウェール」と、75歳の現在も多忙だ。

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リンジー・ローハン
 リンジー・ローハン(写真)の記録は、業界で「DUI(酔っ払い運転)の逮捕歴」がもっとも多いこと。最初のDUIによる逮捕は2007年で、それがきっかけとなり保釈の取り消しやリハビリテーションの追加といった他の法的な問題へとつながっていった。

 それらの事件が影響して「アイ・ノウ・フー・キルド・ミー(2007年)」以来しばらく劇場映画の出演は途絶えていたが、ロバート・ロドリゲス監督作「マチェーテ(2010年)」で復帰、最近はドキュメンタリーとかTV出演が多い。私生活も一時期と比べ、だいぶ落ち着いてきたようだ。
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チャーリー・シーン

 チャーリー・シーン(写真)は、いうまでもなくマーティン・シーンの息子であり、父親同様、留置場の中はお馴染みだ。しかし、彼の場合、逮捕の理由が父親より深刻であり、家庭内暴力で逮捕されたのが2009年、翌2010年にはミューヨークのプラザ・ホテルで公共物破損などの騒ぎを起こし、けっきょくホテル側へ何千ドルもの賠償金を支払っている。

 また、家庭内暴力のスキャンダルから人気TV番組「トゥー・アンド・ア・ハーフ・メン」を降ろされた時もTV局側と一騒動起こし、ローハンと並ぶ「お騒がせ俳優」の名を確固たるものとした。ただ、シーンの場合は当時もっとも稼ぐ俳優の1人であり、金銭的にローハンほど仕事がなくても困っていない。

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ジェシカ・シンプソン
 ジェシカ・シンプソン(写真)の樹立した記録は「もっとも馬鹿な有名人」と、ちょっとかわいそうな気もする。有名人が利口ぶるのは、よくある話だ。しかし、それが裏目に出た時は悲惨であり、シンプソンもそのケースだった。彼女がこの不名誉な記録保持者となったのは、そもそもシーチキンがチキンなのかツナなのかを知らなかったからだ。

 もちろん、そればかりではない。日常の一言一言がどこかピント外れで、たとえば「私はコンサートに行って考えるの、『それが間違いなく私のしたいことだ』と」、あるいは「人々が私のイメージより私の声を好きになって欲しいわ」といった迷言を数多く残している。
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シルベスター・スタローン

 シルベスター・スタローン(写真)は、アカデミー賞のパロディーとして毎年最悪の映画や俳優を選ぶラジー賞の最多ノミネート俳優だ。アカデミー賞と時期を同じくして開催されるラジー賞へ、これまでスタローンが最悪男優賞その他でノミネートされたのは30回、そのうち8回受賞した。

 たとえラジー賞の最悪男優賞に輝こうが、当人は「エクスペンダブルズ・シリーズ」が好調なばかりか、現在は「ロッキー・バルボア・シリーズ」の新作で今年の11月25日全米公開が予定される「クリード」の撮影や、来年公開予定のアニメ作「アニマル・クラッカーズ」の声優などで忙しく、それどころではないだろう。

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サリー・フィールド
 パロディーのラジー賞でなく、本家アカデミー賞で最悪の受賞スピーチを記録したのがサリー・フィール(写真)、1984年の「プレイス・イン・ザ・ハート」で主演女優賞を獲得した時のことだった。その受賞スピーチでフィールドは、「皆さん、私が好きよね、たった今、皆さん、私が好きよね」という有名な台詞をアカデミー史上へ残したのだ。

 彼女は、その5年前にも「ノーマ・レイ」で主演女優賞を獲得しており、受賞で舞い上がったわけでもあるまい。その時のスピーチがどうあれ、ゴールデングローブ賞やエミー賞その他も含めると、55回ノミネートされたうち受賞は41回というキャリの持ち主なのである。

 以上8人の俳優と8つの珍記録をご紹介したところで、今回の幕を閉じたい。

横 井 康 和      


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