映画とシリーズ化


 すべての製作スタジオは、シリーズ化された自分達の映画が何年も、あるいは何世代も続くことを夢見ていると思うが、それを実現した映画といえばさほど多くない。そこで、今回はハリウッドでシリーズ化された映画のうち、もっとも本数の多い8作をご紹介したい。ギネスブックの記録だと山本洋二監督作「男はつらいよシリーズ」などもあるが、ここではハリウッドで公開された映画に絞ってみた。
画像による目次はここをクリックして下さい
「ハロウィン」 → 10本

 ジョン・カーペンター監督の名作「ハロウィン」が公開されたのは1978年だった。15年前に実の姉を殺害した少年マイケル・マイヤーズが、収容されていた精神病院から脱走して故郷へ向かう。ハロウィンの夜、子守をするはめになった女学生ローリー・ストロード(ジェイミー・リー・カーティス)は白塗りの不気味な仮面をつけた男の姿を目撃する。そのころマイケルの担当医サム・ルーミス(ドナルド・プレザンス)もその地ハドンフィールドへ到着していた・・・・・・

 こうして始まる「ハロウィン」はその後シリーズ化され、「ハロウィンV(1982年)」を除いて連続殺人鬼マイヤーズと彼の呪われた家族の歴史を描き続けている。2009年までに10本が製作され、その世界興行収益は3.67億ドル(約440億円)を記録した。11作目の噂もあるが、今のところ製作されそうな兆候はない。

画像による目次はここをクリックして下さい
「ピンク・パンサー」 → 11本
 1963年に公開された「ピンクの豹」、某国王女が所有する巨大な宝石「ピンクの豹」を狙って怪盗ファントムが王女へ接近する。ファントムを追い続けていたクルーゾー警部は、犯行を未然に防ぐため、王女がバカンスを過ごすスキー場へ乗り込む・・・・・・デヴィッド・ニーヴン扮する怪盗ファントムと、ピーター・セラーズのクルーゾー警部が巻き起こすドタバタを描いたコメディーだ。

 シリーズ化された「ピンク・パンサー」は2009年までに11本製作されるが、9本目の後、主演のセラーズは他界したためスティーヴ・マーティンがクルーゾー警部役を引き継ぎ、残りのリメイク版2本は彼の主演である。オリジナルの「ピンクの豹」、2作目「ピンク・パンサー2(1964年)」、「ピンク・パンサー3(1975年)」がシリーズの中では一番可笑しい。
画像による目次はここをクリックして下さい
「マーベル・ユニバース」 → 12本

 2008年の「アイアンマン」から始まる「マーベル・ユニバース」を描いた映画はこれまで12本製作され、少なくともあと10本の公開が決まっている。ただし、この中には同じマーベル・コミックでもソニーが製作している「スパイダーマン・シリーズ」あるいは20世紀フォックスが製作している「X-MENシリーズ」や「ファンタスティック・フォー・シリーズ」、そしてマーク・ラファロ以前の「ハルク・シリーズ」その他は含まず、あくまでもマーベル・スタジオ製作のみの数字だ(TVシリーズも除く)。

 去年(2015年)の「アントマン」まで現在12本が製作されているこのシリーズは、これまで数あるハリウッドのシリーズ物の中でももっとも可能性を秘めている。また、オリジナルの劇画を映像化する観点から際立ったシリーズだといえよう。なお、「アベンジャーズ(2012年)」と「アベンジャーズ:エイジ・オブ・ウルトロン」の米国内興行収益は、それぞれ6.2億ドル(約744億円)と4.6億ドル(約552億円)で歴代の4位と8位を記録している。

画像による目次はここをクリックして下さい
「13日の金曜日」 → 12本
 アメリカの代表的なホラー映画「13日の金曜日」は、1980年の1作目から2001年までに単独のシリーズ物として10本が、そして2003年に「エルム街の悪夢シリーズ」とのクロスオーバー作「フレディVSジェイソン」および2009年にマイケル・ベイ監督のリブート・リメイク版、合計12本が製作された。ただし、5作目は4作目「完結編」の続編ながらストーリーのつながりがなく、9作目以降は版権がパラマウントからニュー・ライン・シネマへ移ったこともあり、9作目「ジェイソンの命日」と10作目「ジェイソン]」は、やはりそれまでのストーリーとつながりがない。

 ちなみに、シリーズ作の多くは殺人鬼「ジェイソン・ボーヒーズ」が主人公であり、1作目から8作目までの日本語表記は「ジェイソン・ボリーズ」、版権がニュー・ライン・シネマへ移った9作目以降からは「ジェイソン・ボーヒーズ」に変わっているが、メディアごとでの単なる表記の違いであり、パラマウント時代だった8作目以前から「ボーヒーズ」表記のメディアも存在している。日本語へ訳すと、どうしてもこのような混乱は避けられないようだ。
画像による目次はここをクリックして下さい
「スター・トレック」 → 12本

 人気TVシリーズ「宇宙大作戦」が初めて映画化されたのは1979年だった。その背景には「スター・ウォーズ(1977年)」の爆発的なヒットがある。当時、TVシリーズは「スタートレック:フェイズU」の企画が立ち上がり撮影まで行われたものの、「スター・ウォーズ」のヒットはSF映画ブームを巻き起こし、フェイズU企画がTVシリーズから劇場映画へ変更された。こうして誕生した映画「スター・トレック」はシリーズ化され、現在までの36年間で12本製作されている。

 12本のうち6作目までがオリジナル・キャストで時代設定は2271年から2293年、続く4本がTVシリーズ「新スタートレック」のメンバーを中心として2371年から2379年、そして最新作2本は新たなキャスティングで「宇宙大作戦」のメンバーの若き日々を2258年と2259年の時代設定で描いており、続く「スター・トレック・ビヨンド」が今年(2016年)の7月22日に全米公開の予定だ。余談ではあるが、TVシリーズは「宇宙大作戦」、「新スタートレック」の後、「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」、「スタートレック:ヴォイジャー」、「スタートレック:エンタープライズ」が放映された。

画像による目次はここをクリックして下さい
「ジェームズ・ボンド」 → 24本
 アルバート・ブロッコリーのプロデュースによるジェームズ・ボンドの映画化第1弾「007は殺しの番号/ドクター・ノー」が銀幕(シルバー・スクリーン)へ登場したのは1962年のことだ。以来、ブロッコリー親子のプロデュースで24本のボンド・シリーズが製作されてきた。それ以外、あと3本映画化されているが、イアン・フレミングの原作とかけ離れた内容であったり喜劇であったりリメイクであったりするため、ここではそれらを除く。

 ブロッコリー親子製作の24本と限った場合、一番多くボンドを演じてきたのがロジャー・ムーア(7本)だ。続いてはショーン・コネリー(6本)、ピアース・ブロズナン(4本)とダニエル・クレイグ(4本)、ティモシー・ダルトン(2本)、ジョージ・レーゼンビーの順になる。さあ、7人目のボンドを誰が演じるのか興味は尽きない。
画像による目次はここをクリックして下さい
「ゴジラ」 → 30本

 ここらで邦画に登場してもらおう。ご存知「ゴジラ」である。「男はつらいよシリーズ」と違ってアメリカでも一般の劇場で上映されており、1954年の1作目から30本製作されてきた。このうち東宝製作の28本が邦画で、あとの2本はハリウッド版だ。

 ハリウッド版の1作目でゴジラをよりリアルな生物として描いたところ、よく出来ていながら評判が今一だった。そこで2作目は東宝版のゴジラへイメージを近づけた結果、好評を博し、現在その続編の製作準備が着々と進んでいる。タイトルは(3作目ながら1作目を無視した)「ゴジラ2」で2018年6月16日全米公開の予定だ。いっぽう、ハリウッド版の成功に刺激されたのか東宝版も新作の準備中で、今のところ今年(2016年)7月29日の日本公開が決まっている。加えて、ハリウッド版は2020年に「ゴジラvs.キングコング」を公開するというから嬉しい。その伏線として2017年公開の「キングコング:スカルアイランド」も見逃せないだろう。

画像による目次はここをクリックして下さい
「キャリー・オン」 → 31本
 最後にアメリカで一番多くシリーズ化されている映画「キャリー・オン」、1958年から1992年までで31本が製作された。もともとイギリスで製作された低予算のコメディーであり、全作のプロデュースも監督もたった2人で、一流のコメディアンを使い回し、34年間続くうち31本の映画を製作している。カルト映画として、その存在感を確立した本シリーズだが、「ゴジラ・シリーズ」に抜かれるのは時間の問題だ。

 以上、シリーズ化の本数ベスト8をずらっと挙げてみた。そして、これら8シリーズに続いては「エルム街の悪夢シリーズ」の9本や「ハリー・ポッター・シリーズ」、「バットマン・シリーズ」、「猿の惑星シリーズ」の8本が控えている。「スター・ウォーズ・シリーズ」だって番外編(スピンオフ)である「イウォーク・アドベンチャー(1984年)「と「エンドア/魔空の妖精(1985年)」を除いたとしても現在公開済みの7本へ、少なくともあと2本公開されることは間違いない。

 また、2001年から2011年の10年間で8本が製作された「ハリー・ポッター・シリーズ」も、新作の企画は進行しているようだし、1966年以来8本が製作された「バットマン・シリーズ」や、1968年以来8本が製作された「猿の惑星シリーズ」も現在進行形である。ハリウッドの大手スタジオへ、シリーズ物は今後とも間違いなくドル箱であり続けるのだろう。

横 井 康 和      


Copyright (C) 2016 by Yasukazu Yokoi. All Rights Reserved.

映画と歴史(その2) 目次に戻ります 映画と性転換