映画とヨット


 ハリウッド・スターの玩具といえば、これまで自家用ジェット機腕時計を取りあげたが、豪華なヨットもまたセレブらしい。それらのオーナーたちは「リッチ・アンド・フェーマス(金持ちで有名人)」を意味し、両者を兼ね備えたのがハリウッドのセレブだからである。彼らの多くは、ハリウッドの日々の喧騒から逃れ、家族や友人と過ごすため航海へ出るのが好きだ。有名なセレブの中には、スーパーヨットを所有し、地中海からカリブ海まで世界中を旅する人も少なくない。そこで今回は世界のトップ・セレブのヨット12隻を選んでご紹介しよう。

 エリック・クラプトンが2005年に1,500万ドル(約16.5憶円)で購入したスーパーヨット「ヴァ・ベーネ号(Va Bene)」は、1992年の建造で全長が156フィート(48メートル)で、最大6キャビンへ12名のゲストと6キャビンへ12名の乗組員を収容できる美しい船だ。 これまで17のグラミー賞を獲得しているクラプトンは、今でもバンドとツアーを行ったりコンサートで演奏するばかりでなく、このスーパーヨットでのツアーにも多くの時間を割いている。彼が造船所キース・コーネリセン社へ発注した内装は、快適で広々としたリビング・エリアと心地良い家具、温かみのある色調、そして映画ラウンジなどが目につく。

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エリック・クラプトンの「ヴァ・ベーネ号」
 
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スティーヴン・スピルバーグの「セブンシーズ号」

 スティーヴン・スピルバーグは最も有名な映画監督兼脚本家の一人であり、どちらの仕事もしていない時は、文字通り7つの海を航海しているのが普通だという。スピルバーグはオーシャンコ社が建造した86メートルの「セブンシーズ号(Seven Seas)」のオーナーで、豪華なヨットは15フィート(4.5メートル)のガラス張りの壁で囲まれた美しいインフィニティプール(後方の外壁が存在しないかのごとく見せかけたプール)を備え、大規模な屋外映画館のスクリーンへ変身し、ゲストと一緒に映画を鑑賞できる。

 オーストラリア出身のニコール・キッドマンは現在、伝説のカントリー・シンガー、キース・アーバンと結婚し、2人の娘がいる。夫婦で映画の撮影やコンサートを行っていない時は、スーパーヨット「ホウクラニ号(Houkulani)」で彼らの姿を見ることが出来るかもしれない。この美しいヨットはデッキの内側と外側を動き回るためのスペースが多くあり、水泳用プラットフォームと統合型エンターテインメント・システムを搭載しているのが特徴だ。

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ニコール・キッドマンの「ホウクラニ号」
 
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ボノの「シアン号」

 ボノといえば1980年代から人気のバンドU2のヴォーカルとして知られており、多くのヒット曲がある。何年もの間、バンドのレコーディングやツアーへ数百万ドルを費やし、その後はボノとしてソロでも活動してきた。何百万人というファンにとって、彼が彼自身のスーパーヨットを所有していることはあなたを驚かせないだろう。有名な造船所コーデカーサ社が建造した全長49メートルのスーパーヨット「シアン号(Cyan)」は、6室のキャビンへ快適に12人まで収容が可能だ。後部デッキのプールとスパ、そして日光浴のためのたくさんの「水の玩具」など、他のスーパーヨット同様、至るところへ贅が尽くされている。

 ジョニー・デップは映画「シザーハンド(1990年)」、「ギルバート・グレイプ(1993年)」、そして一連の「パイレーツ・オブ・カリビアン」などで彼が演じる変わったキャラクターでよく知られており、良かれ悪しかれニュースの的となってきた。ただ、三流紙(タブロイド)から何と言われようと、デップの成功は間違いない。その主演作が彼に何千万ドル(何十億円)もの富をもたらした中の一部は、スーパーヨット「アムビトリーテー号(Amphitrite)」の購入へ充てられている。156フィート(48メートル)のヨットは平均的な船と違って、チーク材などの木材やクールなアメニティに囲まれているが、スイミングプールやヘリコプター・パッドはなく、パイレーツ・オブ・カリビアンから出てきたような外観だ。彼はただ航海するのが大好きらしい。

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ジョニー・デップの「アムビトリーテー号」
 
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タイガー・ウッズの「プライバシー号」

 不倫が発覚した末の離婚騒動やセックス依存症で世間を騒がしたタイガー・ウッズは、2,000万ドル(約22憶円)のメガヨット「プライバシー号(Privacy)」を所有している。結婚の時の前妻への贈り物だったが、離婚後、彼女はもはやそれを維持することを望まなかった。全長が164フィート(50メートル)のプライバシー号には、主寝室の他、ゲストを楽しませるための6寝室があり、キャビネットへ内蔵された50インチのプラズマ・スクリーンTVは、回転させるとダイニング・エリアでもサロンでも観ることができる。そして、ジムや定員8人の浴槽、スキューバ・ダイビング用の減圧室まで備える用意周到さだ。人の集まるエリアは広々として自然光が差し込み、ギャレーには特注のミーレ・エスプレッソ・マシンが装備されている。先の2018年夏全米オープン選手権中も、ウッズはプライベート号で滞在していた。

 「ギャラクティカ・スター号(Galactica Star)」はビヨンセが所有するスーパーヨットの名前だ。この美しい213フィート(65メートル)の船はオランダのヒーセン・シップヤード社によって建設された。歌手であり作曲家のビヨンセは音楽業界のアイコンであり、これまで何百万枚ものアルバムが売れている。彼女は良人と娘ブルーアイビーと常にレコーディング、ツアー、そして少しの休暇を取っており、家族と一緒にこの豪華なスーパーヨットへ乗船しているところを目撃されることも珍しくない。後部デッキの美しいスイミングプール、スパ、ヘリポート、最大12名までゲストを収容可能な広々としたキャビンなど、クイーンサイズのアメニティが揃った豪華スーパーヨットである。

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ビヨンセの「ギャラクティカ・スター号」
 
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ニコラス・ケイジの「サリタ・シ号」

 「サリタ・シ号(Sarita Si)」はニコラス・ケイジが所有する全長120フィート(37メートル)のスーパーヨットで、じっさいその船上にいる姿を何度も目撃されている。素晴らしいアメニティを満載したデッキでは、水泳、日光浴、食事、リラックスするため必要なものが何でも揃っている。最大12名まで宿泊可能なキャビンを備えたサリタ・シ号は、地中海であろうとカリブ海であろうと、どこへ出港する準備もOKだ。デップが「パイレーツ・・・」の2と3を撮影している時、彼はサリタ・シ号を1年間チャーターしていたというエピソードもあるぐらいだ。

 レオナルド・ディカプリオがハリウッドで最も有名なスターの1人なのは、誰も異議がないだろう。その興行収益は、彼が全長453フィート(138メートル)の「ライジング・サン号(Rising Sun)」のような美しいメガヨットを買っても何ら不思議はない。世界で11番目に大きなヨットとしてランクされており、最大14名のゲストと45名の乗組員を収容でき、ワインセラーや映画館など端から端まで豪華さが満載だ。それはまた、使用されていない時バスケットボール・コートへ変身する内蔵ヘリポートも備えている。

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レオナルド・ディカプリオの「ライジング・サン号」
 
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ジョルジオ・アルマーニの「メイン号」

 イタリアの著名なファッション・デザイナー、ジョルジオ・アルマーニは素晴らしい服をデザインするだけでなく、豪華なメガヨット「メイン号(Main)」で世界を航海している。1825年から続く造船所コデカサ社によって建造された上品なデザインのスーパーヨットで、とてもスタイリッシュだ。黒く塗装された外観が嫌でも目を引く。アルマーニはまた、彼の母親にちなんで「マリア号」と名づけた2隻目のヨットも持っていた。マリア号の長さは163フィート(50メートル)に対し、メイン号の長さは213フィート(65メートル)だ。

 2016年1月、「ハリー・ポッター・シリーズ」の著者として知られるJ・K・ローリングは「ヴァジョリロジャー号(Vajoliroja)」を購入した。かつてデップが所有していた船であり、彼の元妻(ヴァネッサ・パラディ)の「Va」、彼自身の「jo」、そして子供たち(長女のリリー=ローズ・メロディと長男のジョン・クリストファー)の「ro」と「ja」が名前の由来だ。ローリングは所有権を得て、その名前を「アンフィトライト号(Amphitrite)」へ変更した。より新しく、より近代的な船と比較して、穏やかなヨットである。

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J・K・ローリングの「アンフィトライト号」
 
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スティーヴ・ジョブズの「ビーナス号」

 故アップルの創設者は金を稼ぎまくっていたので、金星(ビーナス)のようなスーパーヨットを買う余裕があった。悪名高い造船所フィードシップ社によって建設された、この全長257フィート(78メートル)のメガヨット「ビーナス号(Venus)」は、究極のプライバシーのためガラスで覆われた非常にハイテクな、外観から想像するより充実した内装のスーパーヨットだ。コンピュータが占める船橋(ブリッジ)ばかりでなく、船全体をクールなアメネティで装備しているのだろう。ジョブズは亡くなったが、それまでビーナス号は家族が所有しており、実際のところギリシャの島々を巡航するのを目撃された。

 以上12隻の中でも、デップの「アムビトリーテー号」やローリングの「アンフィトライト号(元デップのヴァジョリロジャー号)」を見ると、彼らのユニーク(古典的?)な好みがよくわかる。またジョブズの「ビーナス号」も、いかにも彼らしい。

横 井 康 和      


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