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(1997年1月1日)          




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モンキーズのリバイバル

'60年代に“ヘイ・ヘイ、ウィ・アー・ザ・モンキーズ・・・・・・”のキャッチフレーズで始まるTV番組を大ヒットさせ、イギリスのビートルズと並ぶ人気グループとして一世を風靡したザ・モンキーズが、中年のオジサンに変身した彼らの主演映画企画を進行させています。映画プロデューサーとして“バンデットQ”をヒットさせた経験を持つマイク・ネスミスを中心に、リードシンガーとして最も人気があったデービー・ジョーンズ(写真)、コミカルなドラマーのミッキー・ドレンツ、そしてやや影の薄かったピーター・トークのオリジナル・メンバー4人が相変わらず定職のないロックバンドとして登場し、テーマは中年の目から見た現代若者文化だそうです。30周年を記念したTVスペシャルや話題の新アルバム“ジャスタス”と、がぜん好調の兆しをみせている彼らは、勢いに乗ってインタビュー形式のCD-ROMまで出すハッスルぶり。その上、2月からはイギリスでのコンサート・ツアーと売れまくっています。デビュー当時、ビートルズに触発されてTV番組のため構成されたコメディー俳優の集団的存在で楽器もろくに出来ないバンドだったのが、“プレゼント・バレー・サンデー”や“リッスン・トゥー・ザ・バンド”などの大ヒットをとばし、いつの間にかポップスターの座についてしまいました。今やアメリカの中堅社会人となったベビー・ブーマーの間では、あのモンキーズ・ブームが'60年代のアメリカ文化を象徴する現象だったのか、それともただの偽善なTV現象だったのか、パーティーなどで議論の的となっています。





ボックス・オフィスの信憑性

もともと映画の入場券売場の呼称にすぎなかったのが、今や映画の劇場興業収益成績の代名詞とまでなっている「ボックス・オフィス」は、その順位で観客の入りが左右されるというだけに、発表される数字も時として信じ難い場合があるようです。週末の成績とはいえ、土曜日の夜11時までの集計を基にスタジオの勝手な計算で「自分の映画がアメリカでNo1!」と宣言するケースも多く、とんだハプニングを巻き起こしたりしています。10月中旬の“ロング・キス・グッドナイト"(ジーナ・デイビス主演)と“ゴースト・アンド・ダークネス"(バル・キルマー主演)による首位攻防戦は、そのいい例でしょう。13日の日曜日、前者を製作したニューライン・シネマが週末売上見込み900万ドルとして1位宣言したところ、その直後、後者をプロデュースしたパラマウントが売上見込み920万ドルを発表して首位宣言したから大変、両スタジオとも相手は数字をごまかしているとののしり合う始末で、結局、月曜日の業界紙「デイリー・バラエティー紙」朝刊の集計結果を待って、僅差で“ロング・キス・・・”に軍配が上がりました。こうして毎週末繰り広げられる売上見積を水増したスタジオ間のボックス・オフィス戦争のため、映画宣伝業界では日曜日を“サンデー・マッドネス(狂気の日曜日)”と呼んでいます。しかし、毎週月曜日に発表される数字を集計するエンターテイメント・データ・インク(EDI)がアメリカとカナダで29、000館ある映画館中23、000館分の収益しか集計しないことや、EDIへのアクセスを持つ各スタジオが残り6、000館の売上推定額の上増し可能なことなどを考えると、どうも当てにならないランキングですね。これらの数字を巡って、前記のハプニングの他、日曜日の収益見込みを含んだ週末興業成績でトップだった“フォレスト・ガンプ”を“ライオン・キング”が月曜日に数字で抜いたと思えば、その直後“ガンプ”製作スタジオのパラマウントが僅か34、000ドルを「発見」して逆転した事件や、スライ(シルベスター・スタローン)主演の“スペシャリスト”が920万ドルの推定でトップを宣言しながら、月曜日に90館で20万ドルの収益を「発掘」した“パルプ・フィクション”に首位を奪われたハプニング、あるいは3、500万ドルという破格の収益結果で“バットマン・フォーエバー”に200万ドルの大差をつけたディズニーの“ポカホンタス”の数字に疑問を持ったワーナーブラザーズがクレイムをつけ、正式調査の結果、本当は僅か30万ドルの差だったエピソードなど、製作している映画のストーリーより露骨なドラマが展開されているボックス・オフィスの舞台裏といえます。





リメイク天国

ハリウッドも最近はネタ不足のせいなのか、往年の名作を今風に一捻りしたリメイクがトレンドとなっている中、“ロメオとジュリエット"(レオナルド・デキャプリオ主演)がMTVスタイルのヒップなバージョンでヒットしたことや、ケーリー・グラント主演の名作“ビショップズ・ワイフ”をデンゼル・ワシントン("マルコムX")とホィットニー・ヒューストンのコンビで心温まるクリスマス・ヒット映画に仕上げたこと、そして、今いちヒットこそしませんでしたが、黒沢明の名作“用心棒”をアレンジした“ラストマン・スタンディング"(ブルース・ウィルス主演)が話題を呼ぶなど、ハリウッドの「リメイク・ムード」は高まるばかりのようです。そこで、現在進行中のリメイク企画を探ってみました。

“ジャッカル”

1973年に製作されたヒット作“ジャッカルの日”のリメイク。陰謀小説の大御所フレデリック・フォーサイス("オデッサ・ファイル")の原作を基に巨匠フレッド・ジンネマン監督("ジュリア")が描いたオリジナル版の映画は、原作通り時のフランス大統領シャルル・ドゴールを狙う暗殺者がテーマだったのを、今回のリメイク版はFBI長官暗殺を企てるアサシン役のブルース・ウィルスを、IRA(アイルランド共和国軍)闘志リチャード・ギアとアメリカのGマン(CIAなど政府機関のエージェント)シドニー・ポワチエ("夜の大捜査線")が追いつめるスリラー仕立てにアレンジされています。“メンフィス・ベル”や“ロブ・ロイ”をヒットさせたマイケル・ケイトン・ジョーンズの監督で、撮影はすでに佳境へ入ったところです。

“グロリア”

オリジナル版は1980年製作のマフィア・ドラマで、故ジョン・カサベッテ監督("こわれゆく女")が、彼の奥さんであり、この作品でオスカー候補になり、最新作“ミルドレッド”でも注目を浴びている老練女優ジーナ・ローランズと夫婦でヒットさせた作品です。このリメイク版では、マフィアに狙われた少年を守る前科者の女性を、去年、やはりリメイク版の“ダイアボリック”で主演したシャロン・ストーンが演じます。オリジナルよりアクション倍増の期待作。

“ジェーン”

1962年製作のオリジナル版“何がジェーンに起こったか?”では、身体障害者の姉と彼女を世話する精神異常者である妹との不気味な葛藤が描かれていたのを、現在アレクサンドラ・セロス("スペシャリスト")によって製作準備中の脚本は、一人が「パンチ・ドランク(パンチを浴びすぎて脳に支障をきたす症状)」である30代のボクサー兄弟のいがみ合いをテーマとしたスリラーです。




ヒーローは誰?

1995年5月にボズニア上空で撃墜され、敵の目を逃れて6日間雨水と虫を食べながら生存し、奇跡の生還を遂げたアメリカ空軍パイロット、スコット・オグレディー大尉の自伝“リターン・ウィズ・オナー(名誉の帰還)”が映画化されることになりました。主役候補にはヒット作“トップガン”でジェット・パイロットを演じたトム・クルーズと、今夏の人気映画“ブロークン・アロー”で空軍飛行士役が光ったクリスチャン・スレーターが上がっています。製作スタジオのオリオン・ピクチャーは、現在準備中の脚本が完成し次第、監督候補者たちへ送る予定です。帰還後、独自の「意欲を高める講義」を世界各地で展開中のオグレディー大尉当人は、出版されたばかりの自叙伝の宣伝キャンペーンや小児病院の基金集めなどで多忙な日々を送っています。また、来春出版予定の童話“バッシャー52”を執筆したりTVのコメディー番組へも出演する彼いわく、「軍人は皆堅物とは限らない。ユーモアがなかったら、あの奇跡の生還はなかったと思う」と、人間的な側面を見せるヒーローを、いったい誰がスクリーンで演じることでしょう?





ピットの掘り出し物

今やハリウッドの看板スターにまで成長したブラッド・ピットが衝撃的なスクリーン・デビューを飾ったのは、あの“テルマ&ルイーズ”のセクシーなヒッチハイカー役でした。それ以前の無名時代、“ダークサイド・オブ・ザ・サン”という低予算映画で初めて主演しながら未公開のフィルムが、なんと旧ユーゴスラビアでつい最近発見されたそうです。1988年製作のこの映画は、家族と共にアドリア海沿岸の町へ移住したピット扮するアメリカ青年が危険な皮膚病の治療方を発見するという内容で、撮影は7週間かかり、その間彼に支払われた出演料が週給1,523ドルと、今では夢のような話です。ただ、撮影後ユーゴ戦争が勃発したためフィルムは行方不明となったままでした。発見されたばかりのこのフィルムが現在再編集されており、近々公開予定です。10年近くを経て陽の目を見るこの映画に抜擢されるまで、他の駆け出し俳優同様、ピットはTV番組やコマーシャルへ出演しながらチャンスを狙っていたわけですが、当時を振り返ったプロデューサーの話では、「役作りに対するブラッドの情熱が、あの頃から大スター並みだった」そうです。




(1997年1月1日)

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