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(1998年6月1日)          




新企画情報

2ケ月振りでまたもや登場の“新企画情報”ですが、今回はジャンルや内容の異なるプロジェクトをワイドにお届けしてみましょう!


“さゆり”

アーサー・ゴールデンのベストセラー小説を映画化したこの作品は、日本の片田舎で生まれた少女が置屋へ売られ、芸者の教育を受けながら成長してゆく姿を1世紀に渡って回想する古風な恋物語です。製作は小説を読んで感激したスティーブン・スピルバーグ監督のもと、ドリームワークス・スタジオが取り組みます。スピルバーグとしては“アミスタッド"、"プライベート・ライアン”に続く3本目の「時代もの」で、日本が絡むのは“太陽の帝国”以来2本目となります。

“トゥーム・レイダー”


アクション・アドベンチャー・ゲームでは驚異的な6百万本という数を売り飛ばし、ゲームソフト史上に名を残す人気ソフト“トゥーム・レイダー”とその続編“トゥーム・レイダーU”の映画化権をパラマウントが獲得しました。現在、企画されている映画の内容はゲームの展開に沿って、主人公の女性古物ハンター、ララ・クロフトの冒険談です。ゲームソフトの人気キャラクターが銀幕で成功するか、またこの作品は新時代のスタイルを開拓するかが見ものです。興味のあるかたは“トゥーム・レイダー”の
ウェブサイトを覗(のぞ)かれてみれば?

“グッドナイト・ジョセフ・パーカー”

娘("すべてをあなたに”のリブ・タイラー)の影響なのか、エアロスミスの中年ロッカー、スティーブン・タイラーが、この独立プロ作品で俳優デビュー。共演は、やはり娘("リプレイスメント・キラーズ”のミラ・ソルビノ)が活躍中のポール・ソルビノ("ニクソン")で、田舎町を舞台に倒産寸前のバーが地元の青年の出世へ望みを託す物語です。

“エンド・オブ・デイズ”(仮題)

1億ドルの製作費を投じ、間もなくクランクインするこのユニバーサル映画では、アーノルド・シュワルツェネッガーが久方ぶりで悪魔と戦う19世紀末の戦士をマッチョに演じます。

“マーク”

同じく、この夏クランクインを予定するユニバーサル製作のSFスリラーで、主演は人気絶頂のウィル・スミス。1999年最後の1週間に、ごく普通の男が古代のお守りを発見し、超能力を授かって活躍するというストーリーです。

“ハムナプトラ・失われた砂漠の都”

やはりユニバーサルの企画ながら、過去と未来の次は古代エジプトのミイラ男が現代社会へ蘇るホラー作品と、やや趣向を変えたあたりはスタジオ重役も苦労しているのでしょう。ブレンダン・フレーザー("ジャングル・ジョージ")とレイチェル・ウェイツ("チェイン・リアクション")がピラミッドから蘇生したマミーに狙われるパターンはありきたりですが、往年のTVシリーズなどでお馴染みのミイラ男とはイメージが違います。これまでのような鈍い動作ではなく、素早くて凶暴なターミネーター風マミーが暴れ回る、ハイテクを駆使したインディー・ジョーンズ風の映画だとか!

“エニー・ギビング・サンデー”

若い後輩に先発の座を奪われまいと怪我をおしてプレイするクォーターバックの選手を通じ、プロ・フットボール界の厳しさを描いたオリバー・ストーン("Uターン")製作のドラマ。名優アル・パチーノ("ディアボロス/悪魔の扉")がコーチ役で、映画は初めてというギャングスタ・ラップの帝王、ショーン“パフィー”コームズがフットボール選手役で出る他、トミー・リー・ジョーンズ("追跡者")共演と話題も豊富です。“ウォール街”では株の世界の内幕を暴いた鬼才ストーンが、一見華やかそうでシビアーなフットーボール界の実体を、どう描き出すのか大変楽しみですね!?

“アイデアル・ハズバンド”

このところ“グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち”のオスカー・ノミネートやマット・デイモンとの破局で注目されているミニー・ドライバーの次作は、オスカー・ワイルドの名作を映画化したドラマ。富と名声を極めた愛妻家の政治家で文字通り「理想の良人(アイデアル・ハズバンド)」が、じつは成功の裏に隠された虚構があると知った妻の葛藤を描いたこの映画で、ミニーは妻の妹役を演じます。今月中旬クランクインの予定です。

“将軍の娘”

原作はネルソン・デ・ミラーのベストセラーで、一種の探偵/推理小説ながら、軍隊という特殊な閉鎖社会を舞台にしているミラー独自の作風がユニークでした。7月13日クランクインの映画はウィリアム・ゴールドマン("目撃")が脚色し、将軍の娘である若き女性陸軍士官の死を捜査する主人公はジョン・トラボルタが演じます。

“スパイ・ゲーム”
先月、封切られた“モンタナの風に吹かれて”では相変わらず渋い魅力を見せているロバート・レッドフォード主演のスパイ・スリラー。30年間務めたCIAの辣腕捜査官が、引退間際に人生最大の事件と直面するという内容のユニバーサル作品です。

“ベンジャミン・バットン”

ハリウッドで「映画化されていない最も素晴らしい脚本」といわれた企画が、ユニバーサルとパラマウントの共同製作で実現します。監督はロン・ハワード("身代金")、ロビン・スイコード("若草物語")脚色の、年をとるに連れて若返る男のファンタジー・ドラマです。50歳で30歳の女性と結婚したものの、妻が老いてゆく一方で自分は少年となってしまうこの物語を誰が演じるかは未定ですが、ロンとしては、いつまでも「少年らしさ」を失わないジョン・トラボルタを起用したい意向。

“バイセンテニアル・マン”

ディズニーが企画中のプロジェクトで、主人公は人間になりたい願望を持つ家庭用ロボットです。自分がどう機械を演じるか、俳優としては前代未聞のチャレンジでもあり、トム・ハンクス、ロビン・ウィリアムスといったアカデミー受賞者を含む多くがこの企画へ興味を示しています。今後の進行状況に、こうご期待!!

“ネックスト・ベスト・シング”

“エビータ”以来、マドンナ久々の登場。彼女の役柄は「母親になる最後のチャンス」を迎えた30代後半の独身女性です。ルパート・エベレット("ベストフレンズ・ウェディング")演じる親友との子供を妊娠した彼女が、その5年後、本当の恋に落ちて人生は大混乱・・・・・・と、未婚の母マドンナ自身の生き様が交錯するようなラブロマンスを、どんな役作りで見せてくれるのでしょうね?




ハリウッドより愛をこめて

ハリウッドで暮らしていると、いろいろな交友関係から耳や目にする映画情報も少なくありません。そこで、それらのニュースをいくつかご紹介してみましょう。まず最初は、世界中で「レオ」フィーバーを巻き起こしているレオナルド・ディキャプリオの近況です。当人がフィーバーするNBAレーカーズ、プレイオフたけなわの現在、最近ジャック・ニコルソンやチャーリー・シーンなどの応援軍団へ仲間入りした彼は、本拠地フォーラムから遠征先まで駆けつける“追っかけ”ぶりです。サンセット大通りに面したモンドリアン・ホテルといえば、スターの溜まり場で有名なスカイ・バーを、先日レーカーズが借り切ってパーティーを開きました。ホームゲーム後の豪華な週末パーティー席上、話題はレオの次作となり、そこで彼がいま一番主演したいと宣言した企画は、NBAニューヨーク・ニックスの熱狂的なファンであるスパイク・リー監督("ヒー・ガット・ゲーム")の“サマー・オブ・サム”です。'40年代のニューヨーク、生まれ故郷のブロンクス地区を去った不良少年が新しい人生に目覚めるストーリーらしく、近々スパイクに会うと、少し太った顔で熱っぽく語っていました。また、カンヌ映画祭で発表された彼の主演企画“アメリカン・サイコ”ではヤッピー殺人鬼を演じ、そのギャラがなんと破格の2,100万ドルとは!・・・・・・ハリウッド発、2番目のニュースで登場するのがブライアン・デ・パルマ監督。“ミッション・インポッシブル”の大ヒット以来、今年は間もなく公開されるニコラス・ケイジ主演作“スネーク・アイ”が期待されています。そのデ・パルマ監督のホーム・パーティーで、彼は次作のアイデアを明かしました。“ナチス・ゴールド”という、第二次大戦中、ナチス・ドイツがユダヤ人大虐殺(ホロコースト)の犠牲者から略奪し、スイス銀行へ秘蔵された金銀財宝を、奪い返して所有者の子孫へ返す男の冒険談で、名作“アンタッチャブル”風アクション・スリラーだそうです。ブライアン自ら書いた脚本をMGMが企画中・・・・・・ハリウッド発、最後のニュースは、この夏の目玉映画の一つ“リーサル・ウェポン4”のロケを見に行った時のハプニングをお伝えします。共演者への悪戯が業界で有名なメル・ギブソン、“リーサル・・・”第1作目からムター刑事役で共演してきたダニー・グラバーは、当然ながら犠牲者の1人でした。その彼が本番中、とうとう仕返しをし、クルーの大喝采を浴びたのです。メル演じるリッグス刑事は瀕死の重傷を負い、そこへグラバーが駆けつけて介抱するシーン。「アクション」のかけ声で走り寄ったグラバーはメルのぐったりとした身体を抱き寄せ、いきなり「やっと2人きりになれたね!」と真顔で囁きます。カメラが回っているにも拘わらず、メルや監督以下クルー全員は吹き出し、彼らを後目に大声で「やった!」と叫ぶグラバーの嬉しそうな顔が印象的でした。





日本の影響?
 − PartU−

著名な映画監督へスポットを当てた前回同様、引き続き映画界(ハリウッド)とCMの関係をお伝えする今回のテーマは「ボイス・オーバー」の略称で「VO」、つまり声優です。日本やイタリアが多額のギャラを払ってCMでスーパースターを起用することは知られています。しかし、アメリカ国内で放映されるCMスポットの多くが、アッと驚くようなスターの声優によることは、意外と知られていません。自動車や航空会社、石油や食品会社などの大企業が、自分たちのスポットへ大物スターを起用し、そのネームバリューで商品価値あるいはイメージアップを図ろうとする一方、声しか提供せず多額の報酬が獲られるスター側、そしてエージェント側は顔が見えない安心感も手伝って利害は一致します。結果、従来無名の声優が務めるCMスポット業界を大きく変えました。全米ネットで放映中のスポットは声優の45パーセントが有名スターといわれる今、ギャラは1年契約で60万ドルから100万ドル以上が相場となり、つい最近までは映画俳優にとってTV出演さえタブーであったのが嘘みたいです。'80年代初頭までは、映画スターがTV番組、ましてCMやVOへの出演は「落ち目」の代名詞という時代が続き、今も名残を留めています。年々ヒップになるテレビCMの変革と製作予算のエスカレートはそれを覆し、もはやマネー・パワーでスターを獲得するのが日本やイタリアの専売特許とはいえません。エージェントが積極的にクライアントのCM出演を検討し始めたり、“恋愛小説家”でオスカーを受賞したヘレン・ハントは“マッド・アバウト・ユー"、“ピースメーカー”のジョージ・クルーニーは“緊急救命室”と、映画スターがTVシリーズを掛け持つ最近のトレンドも、CMの偏見壊滅への貢献度は少なくないでしょう。マーチン・シーン("地獄の黙示録")がペプシ・コーラの声優を務めた'80年代以来、すっかり状況は変わり、有名スターが挙ってCM/OV戦線へ加わる現在、茶の間で「このCMは誰の声?」というトレビア的話題を提供するほど一般化した声優業、その一例が・・・・・・



ローレン・バコール→  ファンシー・フィースト・キャットフード
アレック・ボールドウィンシボレー・トラック
ジョージ・クルーニーAT&A
リチャード・ドレイファス→ アップル・コンピュータ
ロバート・デュバルレクサス(トヨタ・セルシオ)
ヘクター・エリゾンドビュイック
スコット・グレンジープ、米海軍
チャールトン・ヘストンバッドワイザー
ジーン・ハックマンオッペンハイマー・ファンド
ジェレミー・アイアンレクサス
クリス・クリストファーソンシボレー・トラック
ジャック・レモンホンダ
ポール・ニューマンテキサコ石油
ジョー・ペッシレクサス
クリフ・ロバートソンユニオン銀行
ジョージ・C・スコットケロッグ・コーンフレーク
シルベスター・スタローン  ポンティアック
キャサリーン・ターナーベル・アトランティック
シゴニー・ウィーバービュイック





“リメイク天国”は永遠に!

もはやオリジナルなど存在しないと言われるハリウッド、去年の1月に「リメイク天国」を書いて以来、大手スタジオの「リメイク・ブーム」たるや、ますます激しさを増しています。封切りが迫った(6月5日)ワーナーブラザーズの新作“パーフェクト・マーダー”は、マイケル・ダグラスがグウィネス・パルトロウ演じる愛妻の殺人を依頼したところから広がってゆくスリラーです。ヒッチコック・ファンなら「あれっ!?」と思われるとおり、この映画はグレース・ケリー主演でヒットした1954年度の名作“ダイヤルMを廻せ!”のリメイク版に他なりません。また、同じWBが製作し、ほぼ6千万ドルを稼ぎ出した“シティー・オブ・エンジェルス”は、ドイツ・アート・ムービーの巨匠ヴィム・ヴェンダースによる1987年度クラシック“ベルリン・天使の詩”の現代版であることも、以前ご紹介しました。この夏の公開作なら、デニス・クエイド("ドラゴンハート")とナターシャ・リチャードソン("ネル")が共演するディズニーの新作“ペアレント・トラップ"、あるいはエディー・マーフィー主演の20世紀フォックス作品“ドクター・ドリトル”が、それぞれ往年の名作“罠にかかったパパとママ(1961年)"、"ドリトル先生の不思議な旅(1967年)”を焼き直したものです。続く秋の封切り予定は、ディズニーの現代版キングコング映画“マイティー・ジョー・ヤング”や、去年の「リメイク天国」で取り上げたシャロン・ストーン主演のコロンビア作品“グロリア”が待ち受けています。なお、去年の10月にも触れた“グロリア”の場合は、1980年の製作そのものが1949年度のヒット作を焼き直したものでした。そして、以下のとおり、まだまだ“リメイク・ブーム”は衰える気配がありません。


“ユー・ガット・メイル”(ワーナー)

Eメールが届いた時のメッセージでお馴染みのかたも多いタイトルながら、こちらは“めぐり逢えたら”の名コンビ、トム・ハンクスとメグ・ライアン共演のロマンチック・コメディーです。ジェームズ・スチュワート主演の1940年度作“桃色(ピンク)の店”のリメイクで、12月の封切りを目指し、現在ニューヨーク・ロケが進んでいます。

“アウト・オブ・タウナーズ”(パラマウント)

オリジナルは1970年に製作された同名映画で、ゴールディー・ホーン("ファースト・ワイフ・クラブ")とスティーブ・マーチン("花嫁のパパ")演じるツーリストがマンハッタンを訪れ、さんざんな目に遭うという内容のコメディーです。やはり12月の公開予定で撮影中。

“バチェラー”(ニューライン)

24時間以内に結婚相手を見つけない限り、莫大な遺産を逃してしまう独身男性の悲哀をクリス・オダネル("バットマンとロビン")が演じるこのコメディーは、なんと無声映画のキング、バスター・キートンが主演した1925年度作“セブン・チャンス”のリメイクとは!

“サイコ”(ユニバーサル)

“グッド・ウィル・ハンティング”や“ドラッグストア・カウボーイ”の名監督ガス・バン・サントが挑むオリジナルは、一連のヒッチコック作でも群を抜いた1960年度作と言うまでもありません。その拘(こだわ)りが他のリメイク映画とはひと味違って、ヒッチコックのオリジナル脚本を使用し、フレームごとの詳細へ至るまでオリジナルに忠実な撮影をする徹底振りです。アンソニー・パーキンスが怪演(?)したノーマン・ベイツ役をビンス・ヴォーン("ロスト・ワールド)、シャワー・シーンで有名なジャネット・リーの旅行者役をアン・ヘッシ("ボルケーノ")が演じ、“スクリーム”風のヒップな現代版となります。

トム・クルーズ、ニコール・キッドマン夫妻が熱を入れる“アイ・マリード・ア・ウィッチ”も1940年度製作の同名スリラーをリメイクしたもので、当時は想像さえ出来ないCGを駆使したタイムトリップや、どこまで時代考証に沿ってリアリティーを表現するかが注目の的です。ディキャプリオの“ロミオとジュリエット”が“ウエストサイド物語”ぽいアレンジで成功したことなどを考えると、今後は「リメイク映画」の概念も単なる“複製”から新たな生命を宿した“創作”へと飛躍を遂げるのかもしれません。




(1998年6月1日)

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