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(1999年1月16日)          




トレンディーな副業

エドワード・ノートン(右)
俳優稼業にとって、映画、ステージ、TV、舞台と華やかな活躍の場には事欠かないのがハリウッドです。そして、本業ばかりでなく、CM、声優などの副業へ精を出すスターも少なくありません。ベストセラー小説のカセットテープ版といえば、それらの副業の1つですが、従来はイギリス人俳優などを起用し、その特有の訛を活かしたナレーションが主流でした。しかし、ここしばらくは車での通勤範囲が広がったせいもあるのか、“耳で聞く本”の需要は増え、それと平行して朗読がスターの間でトレンディーな副業となってきたようです。なんといっても、人気作家の著書を朗読することは演技を磨く格好のトレーニングとなり、“一石二鳥”を狙えるのが大きな理由でしょう。“真実の行方”で衝撃的なデビューを飾り、“ラリー・フリント”や“ラウンダーズ”で熱演した若手スター、エドワード・ノートンは、1983年フィリップ・コウフマン("ライジング・サン")監督、サム・シェパード主演で映画化された“ライトスタッフ”や、1990年ブライアン・デ・パルマ("スネークアイ")監督、トム・ハンクス主演で映画化された“虚栄のかがり火"、そして最近“マン・イン・フル”が出版された20世紀の文豪トム・ウォルフの小説“アンブッシュ・オブ・フォート・ブラッグ”でナレーションを務めています。また、“ユージュアル・サスペクツ”や“ナゴシエーター”のオスカー俳優ケビン・スペーシーは、1998年ロバート・ベントン("クレイマー・クレイマー")監督、ポール・ニューマンとスーザン・サランドン主演で映画化されたベストセラー作家リチャード・ルッソの“トゥワイライト”や、1994年同じくベントンの監督、ポール・ニューマンとメラニー・グリフィス主演で映画化された“ノーバディーズ・フール”を収録済みです。ふつう1時間の録音は100ドルから150ドルと、ほんの「ガソリン代」程度のギャラながら、小説の緊迫感や感情を盛り上げる
ジリアン・アンダーソン
“仕掛け人”の満足感が大きなプラス・アルファなのだと思います。実際、ナレーションを請け負うスターのほとんどは著者やその著作のファンであり、自分なりの解釈で広げたイメージをどれだけ読者(聴者?)へ伝えられるかというチャレンジ精神が動機だそうです。他にも、冷酷な悪役振りで印象深いジョン・マルコビッチ("コンエア"、"ラウンダーズ")は、1988年ローレンス・カスダン("再会の時")監督、ウィリアム・ハートとジーナ・デイビス主演で映画化されたアン・タイラーの“偶然の旅行者”を、またジリアン・アンダーソン("Xファイル")は、1994年ニール・ジョーダン("クライング・ゲーム")監督、トム・クルーズとブラッド・ピット主演で映画化された“インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア”を書いた女流吸血鬼作家アン・ライスのソフト・ポルノ作“エクジット・トゥー・エデン”をセクシーに朗読しています。読むほうがスターのトレンドな副業だとしたら、聞くほうの一般人は、お馴染みの俳優のナレーションで好みのベストセラー小説を楽しみ、ラッシュアワーのストレスを和らげるのが確かに得策かもしれませんね!?





2代目ジム・キャリー?

フットボール・チームの水汲み係が独特のタックルで一躍花形選手になるスポーツ・コメディー“ウォーターボーイ”は、全米興業収益が1億5千万ドルを突破し、主演のアダム・サンドラーへスーパースターの仲間入りをさせました。過去、ダン・アイクロイド("ブルーズ・ブラザーズ2000")、故ジョン・ベルーシ("アニマルハウス")、エディー・マーフィー、クリス・ロックといったスターを輩出した人気TV番組“サタデーナイト・ライブ”のキャスト・メンバーであったサンドラーは、“ビリー・マジソン/一日一善”の主演で映画デビューを飾り、遺産を相続するため小学校に戻る大人のお坊ちゃま役の滑稽な演技が注目を集めます。ドタバタ・コメディー“俺は飛ばし屋/プロゴルファー・ギル”で人気は定着し、製作スタジオ、ニューラインが狙ったとおり、前作“ウェディング・シンガー”ではコメディー・タッチ以外の彼の繊細さもアピールされ、8千万ドルを稼ぐヒット作となりました。“ウォーター・・・”が公開週に4千万ドルという驚異的な収益を上げた時点で、ニューラインは早くも彼と何本かの主演契約を結ぶ意向を固めていたようです。最近発表されたところでは、契約第1作目が2千万ドル、第2作目が2千5百万ドルと、ニューラインは破格のギャラを支払います。これでサンドラーも、ジム・キャリー、トム・ハンクス、メル・ギブソン、ハリソン・フォード、ジョン・トラボルタ、トム・クルーズらと並ぶ“2千万ドル男”となりました。ばかりか、ニューラインとの契約内容は「興業収益の歩合(バックエンド)」をギャラへ上乗せするという豪華版なのです。現在、ソニーが製作中のコメディー“ビッグ・ダディー”の撮影終了後は、ニューラインとの新契約の下で“リトル・ニッキー”がクランクインします。大学時代からの親友で“ビリー・マディソン”以来ずっと一緒に脚本を担当してきたティム・ハーリヒーと現在執筆を進めている脚本は、家業の承継を拒否する男のコメディーで、父親の職業が「悪魔」というところがミソでしょう。やはり人気TV番組“リビング・カラー”を踏み台にし、“マスク”で一躍A級(クラス)スターとなったジム・キャリーを彷彿させるサンドラーの躍進振り、彼の映画の素晴らしさは主役が「平凡なヒーロー」で、そのヒーローをサンドラーが嫌味なく同情を誘う不思議なカリスマ性で面白可笑しく演じる点に尽きるのではないでしょうか?





CGアニメの対決

新勢力「ドリームワークス」がCGスタジオ「PDI(パシフィック・データ・イメージ)」と組んだ“アンツ”は、老舗「ディズニー」が“トイ・ストーリー”の「ピクサーCGスタジオ」と組んだ“バグズ・ライフ”を相手取り、まっこうから対決する結果となったCGアニメ「冬の陣」、興行成績ではディズニー側の圧倒的勝利に終わっています。どちらも蟻の巣が舞台となり、不満だらけの女王蟻、巣を壊滅から救う勇敢な働き蟻を巡るストーリー展開は変わりません。先陣をきった“アンツ”が10月の封切りから暮までで9千万ドルという予想外の収益を上げる一方、1ケ月出遅れた“バグズ・・・”は、それを上回る1億ドルの収益を記録し、なおも快進撃を続けているのです。CGアニメの確固たる地位を築いた“トイ・ストーリー”のプラスチック・キャラクター同様、鋭角の頭蓋骨や関節がCGアニメ向きであり、また恐竜やオモチャ同様、子供達の興味を誘う生き物であることが、今回、主役のモチーフとして昆虫類を選んだ大きな理由だとか。脚本の内容や声優のネームバリューでは先をいく“アンツ”ながら、“バグズ・・・”のほうがアニメーション自体の質は優れている上、キャラクターの受けでも遅れをとりました。大きな「おむすび頭」へ小さくて尖った鼻、そして人間のような目が、昆虫よりエイリアンぽい印象を与える“アンツ”のキャラクターと比べ、“バグズ・・・”の大きくて丸い目や自在に動く口、そして鼻のないアニメっぽい風貌は、年少の客層へよりアピールしたようです。また、“アンツ”のヒーローZと彼の軍団が、複雑な感情を限られた眉の動きや頭の傾き加減だけで表現し、どうしても声優のネームバリューに頼る感が拭えないことも欠点の一つ。その「人間っぽい虫」と比べ、主人公フリックはじめ“バグズ・・・”の昆虫たちは手と足が2本づつと単純かつ表情は変化に富み、いかにも「虫っぽく」描かれています。ただ、“ビューティー&ザ・ビースト”などの手書きアニメと比べ、微妙な感情描写で見劣りする部分も多く、CGアニメのジャンルがまだまだ開拓途上ということなのかもしれません。実際、“バグズ・・・"、"アンツ”のどちらも登場人物(虫?)は“生き物”より“プラスチック製玩具”のイメージが強いのは確かです。しかし、日進月歩のCGアニメ、ヒット映画のリメイク版や続編に頼る最近の実写作品よりも将来へ期待が持てるかもしれませんね? ちなみに、“バグズ・・・”最後のクレジットで登場するNG集は予想以上の反響があり、気をよくしたピクサーはそこへ13パターンを加えたプリントを年末から年始にかけて2,700館へ出荷しました。CGキャラクターたちが台詞を間違えたり、失敗した自分の演技に腹を抱えて笑ったり、ジャッキー・チェンの映画顔負けNG集を、ぜひお見逃しなく!
アンツ




バグズ・ライフ






サンダンス・フィーバー

ロバート・レッドフォードといえば、“普通の人々”や“モンタナの風に吹かれて”などの名作で監督としても不動の地位を築き上げました。その彼が「インディーズ」と呼ばれる独立プロ作品を奨励する意味で「サンダンス映画祭」を創設したのは14年前です。今や新人発掘の宝庫として、今年も有名なスキー・リゾート地であるユタ州パークシティーで1月21日から10日間開催され、200本以上の映画試写が行われます。試写を予定されている中で話題の映画を何本かご紹介すると・・・・・・


“ウォー・ゾーン”

家庭内の性的屈辱で悩むロンドンに住むティーン・エージャーの物語です。“戦闘地域”というタイトルどおり、かなりショッキングな内容とか。“レザボア・ドッグス”や“パルプ・フィクション”で存在感ある演技の印象深いティム・ロスが初めて監督します。

“ヒディアス・キンキー”

“タイタニック”直後、次の出演作品としてケイト・ウィンズレットが選んだ'70年代のヒッピー・ママとその家族の物語です。タイトルは「醜いほどひねくれた」と意味深で、堅苦しい英国社会から逃れるべく、子供たちとアフリカはマラケッシュへ移住する母親の一風変わったドラマ。

“ゴー”

小売店のレジ係、ドラッグの売人、そして昼メロ・スターがラスベガスへ行く途中のハプニングを描いた軽妙なドラマを、テイーン・アイドルのケイティー・ホルムズ("アイス・ストーム")とスコット・ウォルフ("白い嵐")が演じます。L・Aナイトライフのメッカ「ロスフェリス地区」の若者文化を描写してヒットした“スウィンガーズ”のダグ・ライマン監督期待の新作です。


“ウォーク・オン・ザ・ムーン”

ダスティン・ホフマン("ワッグ・ザ・ドッグ")と“ゴースト/ニューヨークの幻”の悪役ぶりが光ったトニー・ゴールドウィンが共同製作したロマンチック・ドラマ。'60年代後半、東海岸にある当時流行の避暑地キャッツキルで夏を過ごすブルックリン在住の人妻("ホワイトハウスの陰謀”のダイアン・レイン)と、通りすがりのセールスマン("ダイアルM”のヴィゴ・モーテンセン)の淡い恋を描いています。

“クッキーズ・フォーチュン”

“プレイヤー"、"プレタポルテ”など、巧妙なストーリーと多くのスターを起用した“アンサンブル映画”で知られるロバート・アルトマン監督の新作です。またまた、グレン・クロース("101")、ジュリアン・ムア("ブギーナイツ")、クリス・オダネル("バットマンとロビン")などの配役で、怪しい死亡事故がきっかけとなり、その町の秘密を知ってしまうミシシッピー州の田舎町で住む人間を描いたサスペンス。おみくじの入った「フォーチュン・クッキー」をもじった「クッキーの運」”というタイトルも、なにやら謎めいて面白そうですね?

“ジョー・ザ・キング”

“ブロークン・アロー”の若手中堅俳優フランク・ウェイリーが初めて監督します。家庭内暴力の絶えない家庭で育った若者の挫折を描いたドラマで、主人公の乱暴な父親は演技派バル・キルマー("セイント")が“アット・ファースト・サイト”の盲目の青年役に続いて好演しているとか!



(1999年1月16日)

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