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(2016年8月)          




ベッソンの新作

フランスのヒットメーカー、リュック・ベッソン(写真)監督が先日サンディエゴで開幕されたポップカルチャーの祭典「サンディエゴ・コミコン・インターナショナル」で、新作のSF大作「ヴァレリアン・アンド・ザ・シティ・オブ・ア・サウザンド・プラネッツ」のプレゼンテーションを行いました。この新作は、一連の「スター・ウォーズ」や「アバター」へ影響を与えたといわれる仏バンド・デシネ界の巨匠ジャン=クロード・メジエールとピエール・クリスタンのSFコミック「ヴァレリアンとロールリーヌ・シリーズ」の実写化で、5週間前(6月中旬)にクランクインを迎えたばかりだといいます。プレゼンテーションで上映されたのが、観光客のような服装で砂漠の惑星へ到着する時空間を移動できるエージェント、ヴァレリアン(デイン・デハーン)とロールリーヌ(カーラ・デルビーニュ)の場面、真っ白な宇宙船の船内を連行されているロールリーヌが男性兵士2人を制圧する場面、あるいは人探しのため歓楽街へやってきたヴァレリアンの前に、リアーナ演じるダンサーが現われる場面などです。ベッソンは、「10歳の頃、ロールリーヌへ恋して、ヴァレリアンになりたいと思った。脚本を書き上げたものの、『アバター(2009年)』のせいでゴミ箱へ捨てたよ。それで、もう一度書き直したんだ」と紆余曲折のプロセスを告白しています。ちなみに、ベッソンの代表作「フィフス・エレメント(1997年)」では特殊効果が用いられたショットは200程度だったのが、撮影技術などの進歩で今作は2700ショット以上の特殊効果が施されるそうです。「『フィフス・エレメント』で思い通り出来ないこともあったから、今作でリベンジを果たすんだ。20年前、僕は変人扱いされたが、ようやく今、世界は僕に追いついたよ」とジョークを飛ばすひと幕もありました。2017年7月21日全米公開の予定です。



「ニュースの真相」

全米公開されたのは去年ですが、今の安倍政権を見ていると、日本で最もタイムリーといえそうなのが今月(8月)5日の公開を控えたケイト・ブランシェット(写真)とロバート・レッドフォード主演作「ニュースの真相」です。舞台はジョージ・W・ブッシュ米大統領が再選を目指していた2004年、CBSニュースのベテラン・プロデューサー、メアリー・メイプス(ブランシェット)は、伝説的ジャーナリスト、ダン・ラザーがアンカーマンを務める看板番組で、ブッシュの軍歴詐称疑惑を裏付けるスクープを放送し、全米にセンセーションを巻き起こします。しかし、その疑惑の「決定的新証拠」を保守派のブロガーから「偽造」と断じられたことから一転、メイプスやラザーら番組スタッフをはじめ、CBSは猛烈な批判の矢面に立たされるのです。同業他社の批判報道もとどまるところを知らず、とうとう上層部が内部調査委員会を設置、メイプスは真実を伝えるジャーナリストとしての矜持と信念を伝えるため勇気を奮い起こすものの・・・・・・メイプスの自伝を映画化した本作、米大統領をめぐる一大スクープとその波紋の一部始終が実名で描かれています。政権を脅かすスクープ、その後、窮地へ立たされる番組スタッフ、事態の収束を図る局の上層部と、TV業界の裏側へ斬り込んだ問題作です。クライマックスで、「取材の趣旨が気に入らないと、報道した人間の政治傾向や客観性、人間性までも疑ってかかり、スクラムを組んでわめき、真実を消し去ってしまう。異常なほど騒いで、すべてが終わった時には、本来の内容が何だったかさえも思い出せない」というブランシェットの台詞は、今の日本を取り巻く状況と完全にシンクロしています。



サバイバル・スキル

演技派として知られるヴィゴ・モーテンセン(写真)が、全米公開されたばかりの「キャプテン・ファンタスティック」で演じているのは、6人の子供たちと森の奥地で自給自足のサバイバル生活を送る主人公ベン・キャッシュです。自身がコミューンで育った監督のマット・ロスはこの映画について、「僕の伝記的な要素も2〜3ケ所あるが、ほとんどは自給自足の生活への憧れを描いた。僕は2人の子持ちで、彼らが小さかった頃、僕の価値観をどう伝えるかを考えた。その時々、父親として意識的に子供のそばにいるよう心掛けた。子供の魂の責任は自分(親)にある。子供へ何を食べさせ、どんな本を読ませ、何を鑑賞させるかということだけでなく、何が気になり、何が重要で、何を伝えるべきか、いろいろ考えた。それを映画という形で描いたんだ」と語っています。いっぽうモーテンセンは、「僕がこれまで読んできた脚本の中でも、ストーリーの均整が取れ、幾重もの個性的なキャラクターを含むベストな脚本だ。僕の役柄は6人の子供がいる設定で、彼らはとても聡明かつ健康的、そして人生へ興味がある。この脚本では知的な関心を持った子供たちがクールに描かれており、さらに家族同士が関わってお互いを改善しながら、時としてイチかバチかなことをやって間違えを起こすこともある。精神的、肉体的に絶えず改善を図りながら、彼らはコミュニケーションを図っているんだ」とロスの脚本をべた褒めです。また、キャッシュ役を演じる上で、ワシントン州の東部やアイダホ州の北部辺りのいわゆるインランド・ノースウェストに住み、父親が釣りや狩りへ連れて行った経験は活かせた半面、今作で使用されたようなサバイバル・スキルに関して馴染みがなかったとか。



世の中、甘くはなかった

「ハリー・ポッター・シリーズ」や「トワイライト・シリーズ」をはじめとして、ベストセラー小説の映画化がトレンドとなって久しいハリウッド業界ながら、世の中、そう甘くはないようです。シェイリーン・ウッドリー(写真)主演の人気SFシリーズ「ダイバージェント」の第4弾が、どうやら劇場公開をせずにTV映画として製作されるかもしれません。本シリーズは、人類が5つの共同体へ強制的に選別される近未来の地球が舞台となり、この5つの共同体へ属さない異端者(ダイバージェント)である主人公の繰り広げる戦いを描いたSFアクションで、シリーズ完結編の第3作目はパート1、パート2の2部作での製作が発表されていました。そして、パート1「アレジアント」は今年(2016年)の3月、全米で公開されたものの不発に終わっています。その結果、映画化版としては第4弾で完結編となるパート2「アセンダント」を、スピンオフのTV映画として、ライオンズゲートのTV部門が主導して製作するとの噂です(ただし、ライオンズゲートはコメントを差し控えています)。これまでシリーズ3作で主演を務めてきたウッドリーがTV映画版への出演を打診されているといういっぽうで、共演者のマイルズ・テラー、アンセル・エルゴートらはTV映画版への正式な出演オファーを受け取っていないとか。主要な俳優陣をキャスティングすることが出来ると考えているライオンズゲートと比べ、俳優のエージェント達はTV映画版となると更なる交渉を慎重に進める必要があると見ているようです。今後、どう展開するにせよ、ウッドリーは自ら主演するオリバー・ストーン監督作「スノーデン」が来月(9月)16日の全米公開を控えているため、しばらくはそのプロモーションで追われるでしょう。



売れっ子リーヴス

日本では主演作「エクスポーズ 暗闇の迷宮」がアメリカより半年遅れで今月(8月)公開されるキアヌ・リーヴスですが、今年(2016年)はここしばらく鳴りを潜めていたのが嘘のような売れっ子振り。今年公開済みの作品だけでも1月に全米公開された「エクスポーズ」の他、TVシリーズ「スウェディッシュ・ディックス」のテックス役から「エニーワン・キャン・クオンタム」のナレーション、そして「キアヌ」での声優から「ホール・トゥルース」や「ネオン・デイモン」での主演などがあります、年内はあとTVミニ・シリーズ「レイン」での主役が決まっていたり、劇場映画「バッド・バッチ」が完成しているばかりか、来年(2017年)度作としては早くも「トゥー・ザ・ボーン」、「ジョン・ウィック:チャプター2」、「レプリカ」の主演作3本が編集段階(ポスト・プロダクション)へ入っているという忙しさ。中でも「ジョン・ウィック:チャプター2」は低迷していたリーヴスが再ブレークするきっかけとなった映画の続編であり、1作目の監督チャド・スタエルスキや脚本のデレク・コルスタッド、また音楽のタイラー・ベイツとジョエル・J・リチャードなどが続投、今から目を離せません。キャスティングではヘレン役のブリジット・モナハンが再び登場し、続編ではその苗字(ラスト・ネーム)が「ウィック」ということは?・・・・・・1作目を観た方ならご存知のとおり、死別した妻から贈られた子犬との穏やかな暮らしで喪失感を癒すところから幕を開けました。その犬が殺されてブチ切れ、最後は別の犬と仲良くなったところで終わるだけに、余計続編での私生活の設定が興味深いところです。いっぽう、日本で今月公開される「エクスポーズ」のほうは、ウィックでの引退した殺し屋役と対照的で、相棒を殺されたニューヨーク市警の刑事役を演じています。



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