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(2018年12月)          




ヴァン・サント監督の新作

アメリカでは今年の夏に封切られたガス・ヴァン・サント監督2年ぶりの新作「ドント・ウォーリー」が、日本でも来年(2019年)5月公開と決まりました。主演はホアキン・フェニックス(写真)で、アメリカの風刺漫画家ジョン・キャラハンの半生を描いています。自動車事故で四肢麻痺となり、オレゴン州ポートランドで酒浸りの自暴自棄な毎日を送っていたキャラハンですが、やがて過去を乗り越え、持ち前のユーモアと不自由な手を使って風刺漫画を描き始めるのです。59歳で他界したキャラハンと、彼の人生を支え続けたかけがえのない人たちの物語は、もともと2014年に他界したロビン・ウィリアムズが「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997年)」の公開当時から企画を考えていました。ウィリアムズの死後、ヴァン・サントは彼の意志を受け継ぎ、自身の半生を綴ったキャラハンの自伝をもとに映画化へと乗り出し、約20年の月日を経て完成したのが本作です。ヴァン・サント曰(いわ)く、「キャラハンは僕の住んでいたポートランドでとても有名で、すごいスピードで街を(車椅子で)走り回っていたからね。また『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』へ出演してくれたロビン・ウィリアムズが、彼の漫画をとても好きで、ずっと愛読していたんだ」と明かしています。主演のフェニックスは、今年日米でも公開された「ビューティフル・デイ(2017年)」でカンヌ国際映画祭の主演男優賞を受賞、自らジョーカー役として出演する話題作「ジョーカー」が来年10月全米公開の予定です。本作ではキャラハンの仕草や話し方を徹底的に研究しており、そんなフェニックスの演技も見所の一つでしょう。また、共演者へルーニー・マーラ(「ドラゴン・タトゥーの女」)、ジョナ・ヒル(「ウルフ・オブ・ウォールストリート」)、ジャック・ブラック(「ルイスと不思議の時計」)などが名を連ねています。



ジャネイの新作

「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル(2017年)」でアカデミー助演女優賞に輝いたアリソン・ジャネイ(写真)が、J・J・エイブラムスのプロデュース作「ルー」へ出演することが決まりました。同作は、疎遠となった良人に我が子を誘拐された若い女性が、さまざまなスキルを持つ大家の女性ルー(ジャネイ)と追跡する物語です。女性2人のロードムービーという点では「テルマ&ルイーズ(1991年)」、誘拐された子どもを取り戻すべく奮闘する親の物語という点では「96時間(2008年)」に近いといいます。マギー・コーンのオリジナル脚本をジャック・スタンリーがリライトしており、監督は「クリミナル・マインド」や「アウトランダー」などを手がけたTV演出家アンナ・フォースターが務めます。当初はエイブラムスの制作会社バッド・ロボットが(参加へ最初の選択権を持つ)ファーストルック契約を結ぶパラマウントで企画開発されていたものの、同社は離脱したため、バッド・ロボットが独立プロ作(インディペンデント作)として製作することになり、来年(2019年)春のクランクインの予定だそうです。もともとジャネイはケニオン大学在学中、俳優ポール・ニューマンとその妻で女優のジョアン・ウッドワードに見出され、大学卒業後ニューヨークのネイバーフッド・プレイハウスと、ロンドンの王立演劇学校(RADA)で演技を学びます。1980年代中頃から舞台へ立ち、'96年にブロードウェイ・デビュー。ブレークのきっかけとなったのがTVドラマ「ザ・ホワイトハウス(1999〜2006年)」での広報官C・J・クレッグ役で、エミー賞を4度受賞しました。映画でも「めぐりあう時間たち(2002年)」、「JUNO ジュノ(2007年)」、「ヘルプ 心がつなぐストーリー(2011年)」といったオスカー候補作で脇役を務めています。今から「ルー」へ期待できそうですね!



イーストウッドの新作

今月14日、全米で封切られるクリント・イーストウッド(写真)が監督と主演を務める最新作「運び屋」は、日本でも来年(2019年)3月8日の公開が決まりました。内容はタイトル通り、最年長の「運び屋」となった老人の前代未聞の実話を描いています。金もなく孤独な90歳のアール・ストーン(イーストウッド)が主人公で、商売に失敗し、自宅も差し押さえられかけたとき、車の運転さえすればいいという仕事を持ちかけられた彼は、まさかメキシコの麻薬カルテルの運び屋だとも知らず、それなら簡単と引き受けるのですが・・・・・・「許されざる者(1992年)」と「ミリオンダラー・ベイビー(2004年)」で2度のアカデミー作品賞と監督賞を受賞したイーストウッド監督、前作「15時17分、パリ行き(2017年)」からわずか1年、そして「グラン・トリノ(2008年)」以来、10年ぶりで自らの監督作へ主演します。物語のベースとなっているのは、2014年6月「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」に掲載された「シナロア・カルテルの90歳の運び屋」という記事 ――― メキシコからデトロイトへ大量のコカインが運びこまれ、麻薬取締局(DEA)必死の捜査で浮かび上がったのは、たった1人で大量のコカインを運ぶ伝説の運び屋の存在でした。追跡捜査の末、怪しまれないよう通常の速度違反のごとく停車し、警察官の前へ姿を見せたのがしわくちゃの老人。2011年に逮捕されたとき、運び屋は87歳で逮捕歴もないありきたりの老人だったのです ――― この記事から「グラン・トリノ」のニック・シェンクが脚本を起こし、撮影時87歳だったイーストウッドは、自身の人生と重ね合わせてストーン役を演じました。そしてストーンを追いつめるDEA捜査官役が、イーストウッドとタッグを組んだ「アメリカン・スナイパー(2014年)」でアカデミー主演男優賞へノミネートされたブラッドリー・クーパーです。



コレットは語る

「ムーンライト(2016年)」や「レディ・バード(2017年)」などを手がけたスタジオ「A24」の製作したホラー作「ヘレディタリー/継承」へ主演したトニ・コレット(写真)が、作品について語りました。本作は、祖母エレンの死をきっかけとして、さまざまな恐怖に見舞われる一家を描いており、エレンの娘アニー役を演じたコレットが、独立プロ作(インディペンデント作)の最高峰を競う「第28回ゴッサム・インディペンデント・フィルム・アワード」で女優賞を受賞しています。また、本作で長編監督デビューを果たしたアリ・アスターは、同アワードのブレイクスルー監督賞へノミネートされました。脚本が送られてきた当時はヘビーな映画が続いており、次はコメディをやりたいと考えていたというコレットですが、エージェントのすすめで脚本を読んだところ、「一気におしまいまで読む面白さで、オリジナルかつ単なるホラー映画ではなく、人を失った時の痛みが美しく表現されていると思ったの。恐怖シーンはとてもピュアな発想から来ていたわ。だから、どうしてもやるしかないと思ったのよ」と出演を決意したそうです。また、「かなり体力がいる仕事だったけど、物語はとてもオリジナルで、だから演じるのがとても楽しかった。ただ、すごく疲れたわ」と笑いながら語っています。撮影を振り返ると、倒錯的にとても満足したと充実感をにじませ、家族を演じたキャストとは、役作りのためボウリングやドライブで距離を縮めたことを明かしつつ、「演技する場合、前もってあまり考えすぎないよう心掛けているの。即興的な演技のできる空間を残しておくのが私は好きで、それがリアルで新鮮な演技を保つ秘訣だと思っている」と演技論を語りました。アメリカでは今年の夏封切られた「ヘレディタリー/継承」、現在日本でも上映中。



Merry Christmas
from Hollywood!

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